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Curtis Fuller "Blues-Ette"
b0160275_22252241.jpgこのアルバムも、秋になると条件反射的に聴きたくなるアルバムです。やはり、気温が低くなってくると、ウォームな低音が聴きたくなるんでしょうか。

アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズが3管編成だったころのトロンボーン奏者、カーティス・フラーの代表作のひとつです。
このアルバムでは、同じくジャズ・メッセンジャーズOBのベニー・ゴルソンとフロントラインを作っています。

とは言うものの、ゴルソンは、フラーと同時期にはジャズ・メッセンジャーズには在籍していませんでした。
ゴルソンは1958年に吹き込まれた名盤、"Moanin'"の頃に在籍していましたが、フラーがJMにやってくるのはすでにゴルソンがJMを去った後、リー・モーガンとウェイン・ショーターがフロントを形成するようになってからです。(しかし、JMって、本当に凄いメンバーばかりでした。^^)

時代は違うとは言うものの、御大アート・ブレイキーに見込まれただけあって、ゴルソンもフラーも、まっくろけのけ、正真正銘のジャズ・スピリットの持ち主です。このアルバムでも、その相性は抜群です。

トロンボーンとテナー・サックスがフロントですから、全編低音の魅力に溢れています。また、この低音管楽器のアンサンブルがとても気持ちよく、これはベニー・ゴルソンのいわゆる「ゴルソン・ハーモニー」のなせる業でしょう。また、ピアノのトミー・フラナガンがとてもいい味を出しています。

1曲目はマイナーブルースの名曲、"Five Spot After Dark"です。フラーとゴルソンのユニゾンによるリフ、シンプルですがかっこいいです。ミディアム・テンポの淡々とした演奏ですが、ジャズの魅力のたっぷりつまった好演です。数年前、TVでなんかのCMに使われていたのを聴いて、「このCMのプロデューサー、趣味が良いなあ・・・」と思ったものです。

2曲目の"Undecided"、トミー・フラナガンの小粋なイントロで始まるスタンダード・ナンバーです。ゴルソンのアレンジ、最低限のことしかやっていないんですが、トロンボーンとテナー・サックスの音のブレンド、とっても気持ちが良いです。
トミ・フラ、フラー、ゴルソンとソロが回りますが、フラーのソロはトロンボーンという楽器を良く知った無駄のない魅力的なものです。
ゴルソンはユーモラスなソロを展開しています。テナーとしてはかなりごしゃごしゃとしたソロを吹いてますが、まあ、相方がトロンボーンなので、このぐらい吹かないとバランスが悪い・・・。あははは。
ドラムスとの4バース・チェンジの2管アンサンブルもシンプルこの上ありませんが、洒落てます。

3曲目はアルバムタイトルになっている"Blues-Ette"、テーマ演奏時のトミ・フラのバッキングが楽しいです。これもゴルソンのアレンジなんでしょう。

4曲目の"Minor Vamp"、ちょっとアップテンポなマイナーなナンバー、スモーキーな雰囲気でかっこいいです。

5曲目の"Love Your Spell Is Everywhere"、このアルバムの中で一番私が好きな演奏です。ミディアム・テンポで民謡風のゴルソン・ハーモニーの優しい名曲です。ゴルソンのソロは、このアルバムの中で最高です。

6曲目は"Twelve-Inch"、ジミー・ギャリソンの2ビート風のイントロで始まるマイナー・ブルース。ギャリソンは後日、超重量級コンボ、コルトレーン・カルテットの一員となりますが、この頃はごく普通のベーシストですね。この曲のベース・ソロもそれほど凄みのあるものではありません。第1曲目の "Five Spot After Dark"同様、マイナー・ブルースの魅力たっぷりの演奏でアルバムを締めくくります。

1959年5月21日録音
Curtis Fuller (tb)
Benny Golson (ts)
Tommy Flanagan (p)
Jimmy Garrison (b)
Al Harewood (d)
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# by bluenob | 2008-10-24 23:08 | Trombone
Paul Chambers "Bass On Top"
b0160275_2153143.jpgいよいよ秋が深まってきました。こういう季節になると、ウォームな音が聴きたくなってきます。例えばベースの音。それも、ウッド・ベースの音をじっくりと聴きたくなってきます。
今日は、ベースの職人、ポール・チェンバースの代表作のひとつ、"Bass On Top"でも聴いてみましょう。

ポール・チェンバースは、その美しいベース・ラインで、4ビートのJAZZベースの頂点を極めた人だと思います。1950年代から1960年代初頭にかけては、最も多くのセッションに参加したベーシストではないでしょうか。
4ビートのウォーキングから管楽器を思わせるメロディックなアドリブ・ライン、どれをとっても水準以上のベーシストで、「とりあえずチェンバースを呼んでおけば良い音楽ができる・・・」と思われていたのかもしれません。

有名なところでは、1950年代後半から1960年代初頭のマイルス・デイヴィス・クインテット/セクステットのレギュラー・ベーシストとして、すべてのアルバムに皆勤賞で参加してます。カインド・オブ・ブルーの"So What"のベース・リフが印象的でした。
また、ジョン・コルトレーンの名作、ジャイアント・ステップスにも参加し、変態コード&馬鹿っ早の表題曲のウォーキングが気持ちよいです。

また、プレスティッジ、ブルーノート、リバーサイドの三大ハードバップレーベルのハウス・ベーシストとも言うべき存在で、これらのレーベルの秀作アルバムには、サイドメンとしてのチェンバースの名前が多く見つかります。
例えば、ウィントン・ケリーの"Kelly Blue"、ソニー・クラークの"Cool Sturttin'"、ジャッキー・マクリーンの"McLean's Scene"、ケニー・ドーハムの"Quiet Kenny"などなど、いくらでも出てきます。^^

そんなに多くのアルバムに参加しているチェンバースなのですが、どうも八方美人的なイメージがあります。
つまり、ソロの革新性ではスコット・ラファロにかなわず、4ビートのウォーキング・ラインの美しさではいとこのダグ・ワトキンズにかなわず、ビートの重さではサム・ジョーンズにかなわない・・・。でも、バランスの良いベーシストです。いわば、「トヨタ的80%満足のベーシスト」なのかもしれません。

この"Bass On Top"は、チェンバースのリーダー・アルバムですが、実に渋いメンバーです。ピアノがハンク・ジョーンズ、ギターにケニー・バレル、ドラムスにアート・テイラー。どのメンバーもハードバップ全盛時代には、多くのセッションに参加した職人中の職人、とも言うべき人ばかりです。さすが職人気質のチェンバースの人選です。

さて、このアルバムはチェンバースのリーダー作ですから、彼のベース・ソロ、「これでもかっ!」というぐらい堪能できます。

第1曲目はジェローム・カーンの名曲、"Yesterdays"です。テーマからしてチェンバースのアルコ・ソロです。ジョージ・ムラーツなどのように、アカデミックなベース奏法を学んだわけではなく、独学なのでスムーズさに欠けるギコギコしたアルコ弾きです。でも、このいかつい音、人によっては大嫌いだ、という人もいますが、私はこれがが彼の持ち味だと思うし、それなりに味もあると思います。

第2曲目もコール・ポーターの名曲、"You'd be so nice to come home to"、このアルバムの良さは、選曲のよさかもしれません。
こちらではピチカート・ソロです。「ベース・ソロばかりで胸がやけるなあ・・・」と思い始めた頃、絶妙のタイミングでケニー・バレルの渋いギター・ソロに代わります。派手さはないですが、ケニー・バレルのギターって、ジャジーな音で大好きです。続くハンク・ジョーンズのピアノ・ソロもシングル・トーンが小気味良いです。

第3曲目はバードの曲で、"Chaisin' The Bird"、ケニー・バレルとのテーマ演奏後、即またピチカートによるソロです。チェンバースのホーン・ライクなソロが堪能できます。バックでのバレルの4ビートのコード・カッティングが気持ちよいです。

第4曲目はスタン・ゲッツの名曲、"Dear Old Stockholm"、これもケニー・バレルの渋いテーマ演奏の後にチェンバースのピチカート・ソロ。まあ、リーダー作だから許されるのでしょうが、ソロ・オーダー、なんとかならんかったのかなあ、少々飽きてきます。^^

第5曲目はバップの定番、マイルス・デイヴィス作曲の"The Thame"、これもテーマの後、いきなりチェンパースのソロです。今回はアルコでギコギコですから、多少は変化がついていますが。^^

最終曲の"Confessin'"、これも最後だからってんで、テーマからピチカートでびんびんやってきます。えーかげんにしてくれー、と思ってるとハンク・ジョーンズの品の良いシングル・トーン・ソロ、ええなあ・・・。ブレークするとまたチェンバースのピチカート・ソロ・・・。さすがに飽きてきますが、内容は全然悪くないです。

夏の間は、この全編ベース・フューチャードというのがくどくて、なかなか聴く気がしないのですが、秋風が吹き、鍋物が恋しくなってくると、「今日は"Bass On Top"でも聴いてみるか・・・」となってきますから、人の気持ちなんてわからんもんです。^^

1957年7月14日録音
KENNY BURRELL (g)
HANK JONES (p)
PAUL CHAMBERS (b)
ART TAYLOR (ds)
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# by bluenob | 2008-10-23 23:05 | Bass
Bill Evans "Explorations"
b0160275_21391161.jpg数日前に"Portrait In Jazz"のエントリーを書いたときに、「ビル・エバンスこそ我が最愛のピアニスト」と書きましたが、そのエバンスの数ある名盤の中でも、私の一番の愛聴盤が、このエクスプロレーションズです。

ビル・エバンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンの3人によるJAZZ史上に燦然と輝くピアノ・トリオの残したアルバムは4枚しかなく、その中で以前ご紹介したポートレート・イン・ジャズとこのエクスプロレーションの2枚がスタジオ録音、残りの2枚はニューヨークの名門ライブハウス、ビレッジ・バンガードでのライブ録音です。ライブにはライブの良さがあるのですが、このトリオの場合、私はスタジオ録音の2枚がなぜか好きです。

このトリオの最初のアルバム、ポートレート・イン・ジャズから1年2ヶ月後に吹き込まれたエクスプロレーションズ、さらに熟成がすすんだ素晴らしいアルバムです。"Explorations"「探求」と名づけられたタイトルからもわかるように、有機的な音楽ユニットとしてのピアノ・トリオが、より深く掘り下げられた作品になっていると思います。

私がこのアルバムを偏愛する理由は、曲の並び方にあります。名曲の名演が、実に気持ちよくならんでいるのです。
1. Israel
2. Haunted Heart
3. Beautiful Love
4. Elsa
5. Nardis
6. How Deep Is the Ocean?
7. I Wish I Knew
8. Sweet and Lovely

1曲目のイスラエル、ジョニー・キャリシ作曲のマイナー・ブルースで、多くのプレイヤーにカバーされていますが、私はこのエバンス・トリオの演奏が最高だと思っています。
YouTubeにも、1965年のロンドン公演における"Israel"がありました。ただ、オリジナルのこのCDの演奏に比べて不自然にテンポが早いし、エバンスのタッチも荒いです。ベースはチャック・イスラエル、ドラムスはラリー・バンカーですので、ラファロ・モチアンに比べると熟成度が足りません。でも、「へそを見ながらピアノを弾くエバンスの勇姿」を見ることができますので、ご興味があれば覗いてみてください。^^

このアルバム、マイナー曲は端正でスインギーな演奏になっており、"Israerl"だけでなく、"Beautiful Love"、"Nardis"、"How Deep Is the Ocean?"も名演です。

また、バラードの"Haunted Heart"、”Elsa"では、耽美的なエバンスのピアノと、テクニック偏重に陥らず音楽性重視のスコット・ラファロのベースの重低音が印象的です。

特にラファロのベース、この当時の録音としては最高の音質だと思います。やわなスピーカーではびびってしまいベース音が再生できません。やるなあ、リバーサイド。^^

ところで、"Nardis"は一般的にはマイルス・デイヴィスの作曲ということになっていますが、このトリオのドラマー、ポール・モチアンによれば、「あれは本当はビルが書いた曲なんだよ。」とのことです。
確かにマイルスの作曲傾向とはかなり異なっています。ポール・モチアンの証言を聴かなくても、「こりゃエバンスの作曲じゃないのかな・・・」と疑いたくなってしまうぐらい、エバンスのにおいのする曲です。
おそらく、"Blue In Green"同様、当時のボスだったマイルスに強奪されてしまった曲なのでしょう。悪いやつだなあ、マイルス。^^

なお、CDではボーナストラックが入っていて、"Beautiful Love"のオルタネイト・トラック、そして"The Boy Next Door"が追加されています。
”Beautiful Love"はこのオルタネイトの方が先に録音されたもので、特に問題はなかったにもかかわらず、最後まで録音がすんだ後、すごくよく出来上がって気持ちが良かったので、「もういっぺんやってみよか!」とやってみたら、テーマを崩してしまったほうがずっと良かったので、Take2をマスター・テイクにしたんだそうです。
また、"The Boy Next Door"も後日、エバンスが好んで取り上げるレパートリーになりましたが、確かに他の曲に比べると少々凡庸な出来で、LPに入らなかった理由がわかります。^^

なお、このアルバムはCDとLPと持っていますが、LPの方は私の宝物です。1976年の1月にビル・エバンスが来日した折に、楽屋まで押しかけて行き、ビルにサインをしてもらったものです。このサイン、私の写真ブログに紹介してあります。まじめなビル・エバンスらしい、端正なサインでした。

1961年2月2日録音
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)
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# by bluenob | 2008-10-10 22:32 | Piano
Keith Jarrett "The Köln Concert"
b0160275_20205264.jpgこのモノクロームのジャケットのアルバムを始めて聴いたのは、高校を卒業して浪人していたときだと思います。
行きつけのJAZZ喫茶でコーヒーを飲んでいたとき、突然、鮮烈なピアノの音が耳に飛び込んできました。それまでかかっていたのは、普通のハード・バップだったと思いますが、最初の4小節で、まわりの空気がそれまでの日常から非日常に変化したようなショックを覚えました。ピアノの音って、こんなに透明感があって力強いものだったんだ・・・。唖然としてしまいました。

早速LP台に乗っていたジャケットを見に行きました。キース・ジャレットの新譜でした。JAZZのアルバムとしては異例な真っ白なジャケットで、ケルン・コンサートと書いてありました。スイング・ジャーナルで広告を見たことはあるのですが、こんな純度の高いアルバムだとは想像もしませんでした。

それまでキース・ジャレットというイメージは、電化マイルスバンドのキーボード・プレイヤーという認識でした。フェンダー・ローズや電気オルガンの演奏者としてはなかなかいけてるなあ、ぐらいにしか思っていなかったのに、このアルバムでイメージが全く変わってしまいました。あるときは優しく、あるときは力強く、フルコンをその限界まで鳴らしています。

実はキースは、エレクトリックは好きでなかったようです。尊敬するマイルスなので、しょうがないのでいやいや弾いていた、というのが真相のようです。いやいや弾いていたわりには、マイルスの評価は高くて、「俺のバンドで最高のピアニストはキースだった・・・」ということらしいのですが。^^

JAZZジャイアントたち、例えばチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどの新譜はリアルで聴いたことはなく、初めて聴いた人たちがどの程度の感動だったのかは想像するしかないのですが、キースのケルン・コンサートはリアルタイムで新譜を聴くことができて本当にラッキーだったと思います。なんの予備情報もないまま、あるがままに感動させてもらいました。

アルバムの頭から最後まで、けれんもなにもないピアノソロです。一切の楽譜も用意せず、ステージに上がり、グランド・ピアノの前に座る・・・。両手をキーボードの上にかざし、おもむろにインスピレーションだけで音を造っていく・・・。インプロビゼーションの極致です。当時は、これはJAZZではないとか、いろいろ言われたようですが、この音を聴いてしまうと、ジャンルわけなどむなしくなってしまいます。

この頃のキースのソロ・コンサート、1曲が20分以上にわたるものも少なくありません。でも、どれを聴いてもひとつとして同じ演奏はなく、ひとつとして緊張感を失ったものもないのです。

キース・ジャレット、ゲーリー・ピーコック、ジャック・デ・ジョネットとのトリオによる"Standards"も素晴らしいと思いますが、衝撃度で言えば、ケルン・コンサートを始めて聴いたときには及びません。また、キース特有のうなり声も、最近のアルバムに比べると控えめなので、聴きやすいかもしれません。^^

YouTubeで、このケルン・コンサートの#1を、最初の10分間だけ聴くことができます。下記のリンクをクリックしてみてください。

Keith Jarrett - The Köln Concert (Part 1) January 24, 1975

1975年1月24日録音
Keith Jarrett (p)
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# by bluenob | 2008-10-09 21:06 | Piano
Miles Davis "Kind Of Blue"
b0160275_208610.jpgキンモクセイが香り始めた秋の夜長に何を聴くか・・・。候補はいっぱいありますが、常に本命候補になるのが、このカインド・オブ・ブルーです。濃紺の闇の中に広がる静謐なJAZZ・・・。涼しくなった夜に聴くには最適のアルバムです。

また、これは歴史的に重要なアルバムでもあります。JAZZの歴史の中で、大きな変化がおきるときには必ず重要な役割を果たしてきたマイルス・デイヴィスが、乾坤一擲はなった名盤中の名盤です。
チャーリー・パーカーが1940年代に始めた複雑なコード分解によるバップ・イディオムのJAZZも、1950年代末になってくると煮詰まってきてしまい、より自由なアドリブ表現を求めたマイルスは、モード奏法に踏み出したのでした。

モード奏法は、複雑なコード進行にとらわれることなく、シンプルなモード(旋法)を使うことで、より大きなアドリブの可能性を切り開きました。モードそのものはグレゴリアン聖歌などの教会音楽にも使用され、その歴史は古代ギリシアまでさかのぼることのできる古い体系の音列です。近代西洋音楽ではほとんど使われなくなってしまいましたが、19世紀末になると、クラシックの作曲家たちも教会旋法の魅力ある音の響きに注目する人も出てきました。例えば、フィンランドの国民的作曲家シベリウスは、その第6交響曲でドリアン旋法を使っています。

マイルス・デイヴィスは、このカインド・オブ・ブルーに先立つ"Milestones"で、モード奏法の実験を行いましたが、このときはまだバンドメンバーでもモード奏法を完全に理解しているわけではなかったようです。事実、レッド・ガーランドやキャノンボール・アダリーあたりはツー・ファイヴ・シーケンスの尻尾の残った「モード奏法まがい」のソロに終始していました。^^
また、アルバムタイトルのマイルストーンズ以外の曲は、すべてハード・バップ・コンセプトのものであり、アルバムとしてのトーナリティにも欠けていました。

しかし、このカインド・オブ・ブルーは、アルバム全体が「モード奏法」で統一された記念すべきアルバムです。このモード奏法の完成のためには、ビル・エバンスの協力が不可欠でした。
当時のマイルス・デイヴィス・セクステットのレギュラー・ピアニストはウィントン・ケリーだったのですが、基本的にバッパーであるケリーのピアノでは「モード奏法」にならず、マイルスは以前在籍していたビル・エバンスを呼び戻したのです。

第一曲目の"So What"、ピアノとベースによるイントロの響きがとても新鮮です。それまでのバップ・イディオムにまみれたJAZZとは全く違う響きです。印象的なポール・チェンバースのベース・リフでテーマが演奏され、そこに管楽器とエバンスがかぶってくると、シンプルなんですが、めちゃくちゃクールでかっこいいんですね。
曲自体はシンプルなAABA、AパートはDドリアン一発、BパートはE♭ドリアン一発というシンプルさです。しかし、このシンプルさは「静謐の美」につながっています。また、AからBに移るとき、またBからAに戻るときの転調感が気持ちよいです。ちょうど見る角度を変えると宝石の輝きが変わるような感じです。

まずマイルスがオープン・トランペットでソロをとります。必要最低限の音しか使わないのですが、これがまた実に渋くてかっこいいんですね。(ボキャ貧ですなあ。^^)
次のソロはコルトレーン、彼もマイルス的にミニマルなアドリブをスタートさせますが、やがて熱く燃えていきます。キャノンボール・アダリーのソロは音数が多くて、まだコード奏法的な匂いが紛々としてますが、マイルスとコルトレーンにインスパイアされたのか、なかなか良いです。圧巻は、ビル・エバンスのソロです。ほとんどシングル・トーンを弾かない、朦朧としたソロです。バップ・イディオムでは絶対演奏できないソロでしょう。

次の曲、フレディ・フリーローダーでは、ピアニストがウィントン・ケリーに代わります。12小節のブルースという伝統的なフォーマットなので、モーダルな雰囲気はあるのですが、よりレイドバックしたブルージーな雰囲気が支配的になります。

3曲目の"Blue In Green"は、ビル・エバンスが提供した曲で、純粋なモード奏法ではありませんが、カインド・オブ・ブルー同様、「静謐の美」に満ちた素晴らしいバラードです。ミュート・トランペットによるマイルスのソロのデリカシーも素晴らしいし、コルトレーンのビターなソロも新鮮です。作曲者ビル・エバンスのソロも、まさしく「緑の中の青」という幽玄な色彩感に満ちた、イマジネイティブなものです。

4曲目の"All Blues"は、モード奏法時代に大流行することになる6/8拍子によるブルースです。シンプルなコードを延々と繰り返すうちに軽い催眠効果をもたらしますが、これが4ビートと違って6/8拍子のなせる妖しい魅力です。コルトレーンが"My Favorite Things"をやった遠因は、この曲辺りにあるのかもしれません。

5曲目の"Flamenco Sketches"も、ビル・エバンスのアイディアに基づいた素晴らしいバラード曲で、"Everybody digs Bill Evans"に収録された"Peace Piece" がその原型です。ここではスパニッシュ・モードを使いながら各人が瞑想的なソロを繰り広げてくれます。コルトレーンのソロは、後の名作”Ballads"に通じるシンプルでメロディアスなものです。キャノンボールは相変わらず音数が多すぎて一人浮いているんですが、まあ悪くはありません。なんと言ってもこれが彼の持ち味ですから・・・。^^エバンスはミニマルな音でのソロに徹するのですが、その美しさ、妖しさは、なんと言ったらいいのか・・・。やがて、マイルスによるミュート・ソロで、静かに幕を引いていきます。

このアルバム、聴いていてだれるということがありません。また飽きるということもありません。今まで何百回となく聴いているはずなんですが、聴くたびに満足感を与えてくれる稀有なアルバムです。

YouTubeに、"So What"の音源がありますので、ご興味がありましたら、下記のリンクをクリックしてみてください。
So What by.Miles Davis

1959年3月2日録音
Miles Davis (tp)
Cannonball Adderley (as)
John Coltrane (ts)
Bill Evans (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (d)
Wynton Kelly (p)
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# by bluenob | 2008-10-08 21:50 | Trumpet