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Wayne Shorter "Juju"
b0160275_21555051.jpg新主流派を代表するテナー・マンのひとり、ウェイン・ショーターのワン・ホーン・アルバムです。

新主流派のテナー吹きの中では、なんと言っても私はジョー・ヘンダーソンが好きなんですが、ジョーヘンを引き立たせていたのは、ウェイン・ショーターの存在ではなかったでしょうか。

伝統的なスタイルを引きずった野生児ジョーヘンと、とらえどころのない黒魔術師ショーター。スタンダードもばりばり吹くジョーヘンと、オリジナルしかやらないショーター。格好なんておかまいなしに真っ赤に燃えるジョーヘンと、青白い炎の中で静かに燃えるスタイリスト・ショーター。比喩が変ですが、ゴジラvsモスラ、中日ドラゴンズvs読売ジャイアンツみたいな、宿命のライバルとしてとらえていました。^^
若い頃は、ジョーヘンを聴いて暑苦しくなると、ショーターを聴いてクール・ダウンする、みたいなことの繰り返しばかりやっていました。

ウェイン・ショーター、Vee-Jayでデビューした頃は、コルトレーンそっくりなトーンとフレージングのハード・バッパーでしたが、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに入った頃から徐々にミステリアスな雰囲気に変わって行き、その後、マイルス・デイヴィスのコンボに参加した頃にはワン・アンド・オンリーなテナー・マンに成長しました。

このアルバムは、ジャズ・メッセンジャーズを離れ、マイルス・コンボに入る直前のショーターを捉えています。
ブルーノートでの初リーダー作"Night Dreamer"を聴くと、フロントの相方リー・モーガンの存在ゆえに、ジャズ・メッセンジャーズ的なハード・バップのエコーが濃厚です。でも、第2作目のこの"Juju"になると、より新主流派的な音に変わってきています。

ワン・ホーンゆえに、ショーター自身がやりたかった音楽がストレートに出てきているというのもありますが、サイドメンの影響もありそうです。マッコイ・タイナー(p)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)は当時のコルトレーン・カルテットのレギュラー・メンバー、そしてレジー・ワークマン(b)もコルトレーンゆかりのベーシストです。

にもかかわらず、このアルバムでのショーターは、コルトレーンの亜流には全くなっていないあたりが、さすがです。
1964年の9月に、コルトレーンは"A Love Supreme"を吹き込み、より宗教的な深みへと進んでいきますが、ショーターにはそういう宗教的な臭みはなく、それまでになかったフレッシュな楽想の演奏を繰り広げています。
マッコイもエルヴィンも、その個性をいかんなく発揮していますが、コルトレーン・コンボでやっている彼らとは異質の音です。ショーターのリーダーとしての影響がよくわかります。

1曲目の"Juju"、黒魔術的なタイトルがついていますが、マイルス・バンド参加以降のショーターに比べると、わかりやすいモーダルな曲です。ここでのショーター、クールに燃えたブロウを披露しており、実にかっこいいです。

2曲目の"Deluge"、コルトレーン的な影響の濃い曲想ですが、ショーターのソロはペンタトニック・スケールを基調としながらも、彼ならでは音の選び方がユニークです。マッコイのソロになると、コルトレーン・カルテットそのまま、って感じですが。^^

"House of Jade"は直訳すれば、「翡翠の館」でしょうか。タイトルの東洋的なイメージではなく、チャーリー・ミンガスを思わせる黒褐色のグラデーションといいますか、不思議な音の響きのバラードです。ショーターのソロも、瞑想的です。

4曲目の"Mahjong"は、「麻雀」ですね。ジョーヘンにも"Jinrikisha"という変なタイトルだけど魅力的なオリジナルがありますが、これも和風のタイトルにもかかわらず、演奏そのものはまじめです。このアルバムで一番コルトレーンを感じさせる演奏ですが、ショーターのソロはよりクールに燃え上がります。

5曲目の"Yes or No"はアップテンポな曲で、アトランティック時代のコルトレーンを思わせます。バリバリと吹きまくるショーター、しかしトレーンとは全く違う傾向のソロです。クールだけど熱い、燃えてるけど冷静。ショーターならではのソロです。

このアルバムの最後は、"Twelve More Bars to Go"、そのタイトルからもわかるように、ブルースの新解釈です。新主流派のブルースって、かっこいいのが多いです。ジョーヘンの"Isotope"とか、チック・コリアの"Matrix"とか。ショーターのこのブルースもモダンな感覚に溢れたブルースに仕上がっています。

このアルバムを8月に録音した後、、9月にはマイルス・デイヴィスのコンボでのデビュー作、"Live In Berlin"を録音します。マイルスがショーターを引っ張った理由は、このアルバム、"Juju"を聴くと本当によくわかります。前任テナーのジョージ・コールマンやサム・リバースと比べて、明らかにショーターの音は「鮮度がいい」のです。

1964年8月3日録音
Wayne Shorter (ts)
McCoy Tyner (p)
Reggie Workman (b)
Elvin Jones (d)
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by bluenob | 2008-10-30 23:26 | Tenor Sax
Hank Jones "'Round Midnight"
b0160275_20273728.jpg秋の夜長には、こんなけれんみのないソロ・ピアノがよく似合います。ピアノの職人、ハンク・ジョーンズが2004年2月に録音したアルバムです。

ハンク・ジョーンズは1918年生まれですから、86歳の時のレコーディングです。しかし年を感じさせない実に瑞々しいピアノソロで、心底驚きました。この人に関しては老化、という言葉は無縁なのかもしれません。今年(2008年)にも来日してますから、90歳を超えて現役ということになります。

ハンク・ジョーンズの演奏歴は古く、チャーリー・パーカーとも一緒に演奏しています。バードと一緒にやったことのある人でまだ存命中なのは、ドラムスのロイ・ヘインズぐらいではないでしょうか。しかも生きているだけではなく、いまだにこんな素晴らしい音楽を演奏しているわけですから、脱帽モノです。

ハンク・ジョーンズ、脇役としての演奏が実に渋くてたまりませんでした。とにかく汚い音を弾かないのです。バードの"Now's The Time"、ミルト・ジャクソンの"Opus De Jazz"、ポール・チェンバースの"Bass On Top"、キャノンボール・アダリーの"Somethin' Else"で、その好演を聞くことができます。どれも主役を上手に引き立てています。

また、自らが主役となっては、グレート・ジャズ・トリオで素晴らしい演奏を聴かせてくれました。マイルス・デイビスのバンドに在籍していたロン・カーターやトニー・ウィリアムスとの組合せ、「こりゃあ異種格闘技だなあ・・・」なんて思ったものですが、ハンク・ジョーンズは若い彼らに負けない若々しい感覚で丁々発止のプレーを聴かせてくれ、大いに驚いたものです。

さて、このアルバム、全編有名スタンダード曲のソロです。ハンク・ジョーンズの端正で上品なピアノを楽しむには絶好の名盤です。ハンク・ジョーンズは1000曲以上のスタンダード・ナンバーを暗譜しているそうです。JAZZのスタンダード曲集で俗称「1001」という譜面がありますが、彼の場合、「生きている1001」ということができそうです。

1曲目の"My Romance"の音が出てきたとき、思わず耳を疑いました。86歳のおじいさんが弾いてるとは思えないフレッシュな音だったからです。この曲は、ビル・エバンスの"Waltz For Debby"での演奏が定番ですが、ハンク・ジョーンズの演奏もビル・エバンスに勝るとも劣らない素晴らしい演奏です。時々ハンクのうなり声がうすく聞こえますが、キース・ジャレットのそれに比べると実にかわいいもので、より音楽的です。^^

"Someday My Prince Will Come"もビル・エバンスのレパートリーですが、ハンク・ジョーンズが弾くと、甘い中にもより枯れた味わいで、これもたまりません。

またバードの愛奏曲だった"Bird Of Paradise"がそのコード進行を使ったことで有名なスタンダード、"All The Things You Are"も素晴らしい出来栄えです。この曲特有のせつなくなるような転調が実に丁寧にメロディックに演奏されています。

セロニアス・モンクの"'Round Midnight"、ソロ・ピアノならではの緩急自在なテンポでしっとりと聴かせてくれます。

"It's A Sin To Tell A Lie"も名演です。甘いコード進行の曲ですが、あえてテンション・ノートを上手に使い、ビター・スイートな演奏になってます。

このアルバムの最後は、デューク・エリントンの名曲、"In A Sentimental Mood"です。メランコリックかつダイナミックなソロが絶品です。

この他にも、"Someone To Watch Over Me", "It's The Talk Of The Town", "Willow Weep For Me", "The Day Of Wine And Roses", "Speak Low", "Tea For Two", "For Yoy"が収録されており、どれをとってもハンク・ジョーンズならではの解釈で、魅力的ななスタンダード演奏になっています。

弟のサッド・ジョーンズ、エルヴィン・ジョーンズはすでに他界してしまいましたが、一番年長なハンク・ジョーンズにはずっと長生きして、素晴らしいアルバムを残していって欲しいものだと思います。

なお、このアルバムは、HMVのウェブサイトで試聴できます。

2006年2月4日&5日録音
Hank Jones (p)
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by bluenob | 2008-10-29 20:27 | Piano
Sonny Clark "Cool Struttin'"
b0160275_20304281.jpg秋が深まってくると、必ず聴きたくなるアルバム、「クール・ストラッティン」です。J
AZZを聴き始めた頃から好きなアルバムで、それこそ溝が擦り切れるまで聴いたアルバムです。
フレーズのひとつひとつまでカラオケで歌えるぐらい聴きましたから、ええ加減聴き飽きててもおかしくないのですが、それでも秋から冬にかけて、ちょっと首筋が寒くなってきたなあ、という季節になると、「今宵はクール・ストラッティンを聴きながら一杯やるか・・・」と思ってしまいます。^^

このアルバムは、お薬のやりすぎで31歳という若さで夭折したピアニスト、ソニー・クラークの代表作です。ブルージーでタッチの重い、「これぞJAZZピアノ!」というピアニストでした。
トミー・フラナガン、レッド・ガーランド、ウィントン・ケリーというこの時代の花形ピアニストたちは、よく「転がるようなシングル・トーンの魅力」と言われることが多いですが、クラークのピアノは、もっとタメの効いた、ダークなトーンが魅力です。数多い「バド・パウエル・スクール」のピアニストの中でも、バドの妖し輝く黒いタッチを最も濃厚に継承したピアニストではないでしょうか。

また、このアルバムは、サイドメンも素晴らしい面子が集まっています。フロントにアート・ファーマー(tp)とジャッキー・マクリーン(as)、そしてベースにポールチェンバース、ドラムスがフィリー・ジョー・ジョーンズです。加えてパウエル直系のソニー・クラークがリーダーですから、どうやったってグルーヴィなアルバムしかできっこありません。^^

また、リード・マイルスがデザインしたジャケットも出色の出来栄えです。タイト・スカートから覗くこましゃくれた足取り、足フェチの人が見たら思わずクラッとなりそうなデザインで、ブルーノートのアルバムらしいジャジーな雰囲気に溢れています。いつか、誰かに「足タレ」になってもらって、こんな写真を撮ってみたいなあ。^^ちなみに、このアルバム写真の足タレ、ソニー・クラークの奥さんだ、という説と、デザイナーのリード・マイルスのアシスタントだ、という説があるようです。

LPで言うと、かつてのA面が大好きでした。2曲ともクラークのオリジナル作品です。スロー・ブルース"Cool Struttin'"、ブルースのエッセンスの詰まった好演です。ソニー・クラークの重く引きずるようなタッチと黒光りする音色、アート・ファーマーのクールで知的なソロ、マクリーンのイモイモしくもブルージーなフレーズと後ろに倒れこむようなレイドバックした感覚、チェンバースの濃厚なアルコ弾きソロ、どれも大好きです。

2曲目の"Blue Minor"は、私がこのアルバムで一番好きな演奏です。アルト・サックスとトランペットのアンサンブルは、テナーとペットのアンサンブルより一段と憂いに満ちたフィーリングになるような気がします。マクリーンの舌足らずなソロが「青春の痛み」という感じで実にいいです。クラークのパウエル・ライクな黒くてドライなソロも素晴らしいです。

かつてのB面は、マイルスの"Sippin' At Bells"です。どってことないハード・バップですが、クラークのソロが実にグルーヴィで良い味を出してます。

4曲目の"Deep Night"、テーマからピアノ・ソロまでは、ピアノ・トリオだけの演奏を聴くことができます。このトリオ・フォーマットで聴くと、バド・パウエルをモダンにしてファンキーにしたクラークの良さがよく出ているように思います。
その後に出てくるアート・ファーマーのソロも大好きです。マイルス・デイヴィスほどクールではなく、ドナルド・バードほど暑苦しくなく、中庸の魅力です。
またマクリーンのソロも、ハスキーなトーンでブルージーに歌いまくっており、ピッチが少々狂っていても気になりません。
フィリー・ジョー・ジョーンズのタイトで黒く締まったソロが終わり、ピアノ・トリオでのテーマが演奏されてアルバムの幕を閉じると、また頭から聴きたくなってしまいます。

このアルバムは、かつてのJAZZ喫茶で一番リクエストが多かった名盤だそうです。でも、そんなに人気があるのは日本だけのようです。夭折したミュージシャンを尊ぶ風土もありますし、このアルバムに流れるファンキーだけどブルーな雰囲気が、日本人の感性をいたく刺激するからかもしれません。

でも名盤かとあらためて聞かれると・・・。うーん、どうなんでしょう。演奏自体はもっと優れたアルバムはいっぱいありますから。
でも、このアルバムは「良い・悪い」を超越したところにあるアルバムではないか、と思います。判断基準は、「好き・嫌い」でいいんじゃないでしょうか。人がなんと言おうと、このスモーキーな雰囲気は大好きなんだもん、って感じです。あはははは。^^

JAZZ喫茶で、「クール・ストラッティン、お願いします。」というリクエストが入ると、「おー、JAZZを効き始めたばかりのトーシロだな、こりゃ・・・」と思うくせに、その一方、「早くかけてくれよ、クール・ストラッティン。」と、心待ちにしている自分もいたりする、そんなアルバムです。^^

1958年1月5日録音
Art Farmer (tp)
Jackie McLean (as)
Sonny Clark (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
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by bluenob | 2008-10-28 21:27 | Piano
Curtis Fuller "Blues-Ette"
b0160275_22252241.jpgこのアルバムも、秋になると条件反射的に聴きたくなるアルバムです。やはり、気温が低くなってくると、ウォームな低音が聴きたくなるんでしょうか。

アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズが3管編成だったころのトロンボーン奏者、カーティス・フラーの代表作のひとつです。
このアルバムでは、同じくジャズ・メッセンジャーズOBのベニー・ゴルソンとフロントラインを作っています。

とは言うものの、ゴルソンは、フラーと同時期にはジャズ・メッセンジャーズには在籍していませんでした。
ゴルソンは1958年に吹き込まれた名盤、"Moanin'"の頃に在籍していましたが、フラーがJMにやってくるのはすでにゴルソンがJMを去った後、リー・モーガンとウェイン・ショーターがフロントを形成するようになってからです。(しかし、JMって、本当に凄いメンバーばかりでした。^^)

時代は違うとは言うものの、御大アート・ブレイキーに見込まれただけあって、ゴルソンもフラーも、まっくろけのけ、正真正銘のジャズ・スピリットの持ち主です。このアルバムでも、その相性は抜群です。

トロンボーンとテナー・サックスがフロントですから、全編低音の魅力に溢れています。また、この低音管楽器のアンサンブルがとても気持ちよく、これはベニー・ゴルソンのいわゆる「ゴルソン・ハーモニー」のなせる業でしょう。また、ピアノのトミー・フラナガンがとてもいい味を出しています。

1曲目はマイナーブルースの名曲、"Five Spot After Dark"です。フラーとゴルソンのユニゾンによるリフ、シンプルですがかっこいいです。ミディアム・テンポの淡々とした演奏ですが、ジャズの魅力のたっぷりつまった好演です。数年前、TVでなんかのCMに使われていたのを聴いて、「このCMのプロデューサー、趣味が良いなあ・・・」と思ったものです。

2曲目の"Undecided"、トミー・フラナガンの小粋なイントロで始まるスタンダード・ナンバーです。ゴルソンのアレンジ、最低限のことしかやっていないんですが、トロンボーンとテナー・サックスの音のブレンド、とっても気持ちが良いです。
トミ・フラ、フラー、ゴルソンとソロが回りますが、フラーのソロはトロンボーンという楽器を良く知った無駄のない魅力的なものです。
ゴルソンはユーモラスなソロを展開しています。テナーとしてはかなりごしゃごしゃとしたソロを吹いてますが、まあ、相方がトロンボーンなので、このぐらい吹かないとバランスが悪い・・・。あははは。
ドラムスとの4バース・チェンジの2管アンサンブルもシンプルこの上ありませんが、洒落てます。

3曲目はアルバムタイトルになっている"Blues-Ette"、テーマ演奏時のトミ・フラのバッキングが楽しいです。これもゴルソンのアレンジなんでしょう。

4曲目の"Minor Vamp"、ちょっとアップテンポなマイナーなナンバー、スモーキーな雰囲気でかっこいいです。

5曲目の"Love Your Spell Is Everywhere"、このアルバムの中で一番私が好きな演奏です。ミディアム・テンポで民謡風のゴルソン・ハーモニーの優しい名曲です。ゴルソンのソロは、このアルバムの中で最高です。

6曲目は"Twelve-Inch"、ジミー・ギャリソンの2ビート風のイントロで始まるマイナー・ブルース。ギャリソンは後日、超重量級コンボ、コルトレーン・カルテットの一員となりますが、この頃はごく普通のベーシストですね。この曲のベース・ソロもそれほど凄みのあるものではありません。第1曲目の "Five Spot After Dark"同様、マイナー・ブルースの魅力たっぷりの演奏でアルバムを締めくくります。

1959年5月21日録音
Curtis Fuller (tb)
Benny Golson (ts)
Tommy Flanagan (p)
Jimmy Garrison (b)
Al Harewood (d)
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by bluenob | 2008-10-24 23:08 | Trombone
Paul Chambers "Bass On Top"
b0160275_2153143.jpgいよいよ秋が深まってきました。こういう季節になると、ウォームな音が聴きたくなってきます。例えばベースの音。それも、ウッド・ベースの音をじっくりと聴きたくなってきます。
今日は、ベースの職人、ポール・チェンバースの代表作のひとつ、"Bass On Top"でも聴いてみましょう。

ポール・チェンバースは、その美しいベース・ラインで、4ビートのJAZZベースの頂点を極めた人だと思います。1950年代から1960年代初頭にかけては、最も多くのセッションに参加したベーシストではないでしょうか。
4ビートのウォーキングから管楽器を思わせるメロディックなアドリブ・ライン、どれをとっても水準以上のベーシストで、「とりあえずチェンバースを呼んでおけば良い音楽ができる・・・」と思われていたのかもしれません。

有名なところでは、1950年代後半から1960年代初頭のマイルス・デイヴィス・クインテット/セクステットのレギュラー・ベーシストとして、すべてのアルバムに皆勤賞で参加してます。カインド・オブ・ブルーの"So What"のベース・リフが印象的でした。
また、ジョン・コルトレーンの名作、ジャイアント・ステップスにも参加し、変態コード&馬鹿っ早の表題曲のウォーキングが気持ちよいです。

また、プレスティッジ、ブルーノート、リバーサイドの三大ハードバップレーベルのハウス・ベーシストとも言うべき存在で、これらのレーベルの秀作アルバムには、サイドメンとしてのチェンバースの名前が多く見つかります。
例えば、ウィントン・ケリーの"Kelly Blue"、ソニー・クラークの"Cool Sturttin'"、ジャッキー・マクリーンの"McLean's Scene"、ケニー・ドーハムの"Quiet Kenny"などなど、いくらでも出てきます。^^

そんなに多くのアルバムに参加しているチェンバースなのですが、どうも八方美人的なイメージがあります。
つまり、ソロの革新性ではスコット・ラファロにかなわず、4ビートのウォーキング・ラインの美しさではいとこのダグ・ワトキンズにかなわず、ビートの重さではサム・ジョーンズにかなわない・・・。でも、バランスの良いベーシストです。いわば、「トヨタ的80%満足のベーシスト」なのかもしれません。

この"Bass On Top"は、チェンバースのリーダー・アルバムですが、実に渋いメンバーです。ピアノがハンク・ジョーンズ、ギターにケニー・バレル、ドラムスにアート・テイラー。どのメンバーもハードバップ全盛時代には、多くのセッションに参加した職人中の職人、とも言うべき人ばかりです。さすが職人気質のチェンバースの人選です。

さて、このアルバムはチェンバースのリーダー作ですから、彼のベース・ソロ、「これでもかっ!」というぐらい堪能できます。

第1曲目はジェローム・カーンの名曲、"Yesterdays"です。テーマからしてチェンバースのアルコ・ソロです。ジョージ・ムラーツなどのように、アカデミックなベース奏法を学んだわけではなく、独学なのでスムーズさに欠けるギコギコしたアルコ弾きです。でも、このいかつい音、人によっては大嫌いだ、という人もいますが、私はこれがが彼の持ち味だと思うし、それなりに味もあると思います。

第2曲目もコール・ポーターの名曲、"You'd be so nice to come home to"、このアルバムの良さは、選曲のよさかもしれません。
こちらではピチカート・ソロです。「ベース・ソロばかりで胸がやけるなあ・・・」と思い始めた頃、絶妙のタイミングでケニー・バレルの渋いギター・ソロに代わります。派手さはないですが、ケニー・バレルのギターって、ジャジーな音で大好きです。続くハンク・ジョーンズのピアノ・ソロもシングル・トーンが小気味良いです。

第3曲目はバードの曲で、"Chaisin' The Bird"、ケニー・バレルとのテーマ演奏後、即またピチカートによるソロです。チェンバースのホーン・ライクなソロが堪能できます。バックでのバレルの4ビートのコード・カッティングが気持ちよいです。

第4曲目はスタン・ゲッツの名曲、"Dear Old Stockholm"、これもケニー・バレルの渋いテーマ演奏の後にチェンバースのピチカート・ソロ。まあ、リーダー作だから許されるのでしょうが、ソロ・オーダー、なんとかならんかったのかなあ、少々飽きてきます。^^

第5曲目はバップの定番、マイルス・デイヴィス作曲の"The Thame"、これもテーマの後、いきなりチェンパースのソロです。今回はアルコでギコギコですから、多少は変化がついていますが。^^

最終曲の"Confessin'"、これも最後だからってんで、テーマからピチカートでびんびんやってきます。えーかげんにしてくれー、と思ってるとハンク・ジョーンズの品の良いシングル・トーン・ソロ、ええなあ・・・。ブレークするとまたチェンバースのピチカート・ソロ・・・。さすがに飽きてきますが、内容は全然悪くないです。

夏の間は、この全編ベース・フューチャードというのがくどくて、なかなか聴く気がしないのですが、秋風が吹き、鍋物が恋しくなってくると、「今日は"Bass On Top"でも聴いてみるか・・・」となってきますから、人の気持ちなんてわからんもんです。^^

1957年7月14日録音
KENNY BURRELL (g)
HANK JONES (p)
PAUL CHAMBERS (b)
ART TAYLOR (ds)
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by bluenob | 2008-10-23 23:05 | Bass
Bill Evans "Explorations"
b0160275_21391161.jpg数日前に"Portrait In Jazz"のエントリーを書いたときに、「ビル・エバンスこそ我が最愛のピアニスト」と書きましたが、そのエバンスの数ある名盤の中でも、私の一番の愛聴盤が、このエクスプロレーションズです。

ビル・エバンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンの3人によるJAZZ史上に燦然と輝くピアノ・トリオの残したアルバムは4枚しかなく、その中で以前ご紹介したポートレート・イン・ジャズとこのエクスプロレーションの2枚がスタジオ録音、残りの2枚はニューヨークの名門ライブハウス、ビレッジ・バンガードでのライブ録音です。ライブにはライブの良さがあるのですが、このトリオの場合、私はスタジオ録音の2枚がなぜか好きです。

このトリオの最初のアルバム、ポートレート・イン・ジャズから1年2ヶ月後に吹き込まれたエクスプロレーションズ、さらに熟成がすすんだ素晴らしいアルバムです。"Explorations"「探求」と名づけられたタイトルからもわかるように、有機的な音楽ユニットとしてのピアノ・トリオが、より深く掘り下げられた作品になっていると思います。

私がこのアルバムを偏愛する理由は、曲の並び方にあります。名曲の名演が、実に気持ちよくならんでいるのです。
1. Israel
2. Haunted Heart
3. Beautiful Love
4. Elsa
5. Nardis
6. How Deep Is the Ocean?
7. I Wish I Knew
8. Sweet and Lovely

1曲目のイスラエル、ジョニー・キャリシ作曲のマイナー・ブルースで、多くのプレイヤーにカバーされていますが、私はこのエバンス・トリオの演奏が最高だと思っています。
YouTubeにも、1965年のロンドン公演における"Israel"がありました。ただ、オリジナルのこのCDの演奏に比べて不自然にテンポが早いし、エバンスのタッチも荒いです。ベースはチャック・イスラエル、ドラムスはラリー・バンカーですので、ラファロ・モチアンに比べると熟成度が足りません。でも、「へそを見ながらピアノを弾くエバンスの勇姿」を見ることができますので、ご興味があれば覗いてみてください。^^

このアルバム、マイナー曲は端正でスインギーな演奏になっており、"Israerl"だけでなく、"Beautiful Love"、"Nardis"、"How Deep Is the Ocean?"も名演です。

また、バラードの"Haunted Heart"、”Elsa"では、耽美的なエバンスのピアノと、テクニック偏重に陥らず音楽性重視のスコット・ラファロのベースの重低音が印象的です。

特にラファロのベース、この当時の録音としては最高の音質だと思います。やわなスピーカーではびびってしまいベース音が再生できません。やるなあ、リバーサイド。^^

ところで、"Nardis"は一般的にはマイルス・デイヴィスの作曲ということになっていますが、このトリオのドラマー、ポール・モチアンによれば、「あれは本当はビルが書いた曲なんだよ。」とのことです。
確かにマイルスの作曲傾向とはかなり異なっています。ポール・モチアンの証言を聴かなくても、「こりゃエバンスの作曲じゃないのかな・・・」と疑いたくなってしまうぐらい、エバンスのにおいのする曲です。
おそらく、"Blue In Green"同様、当時のボスだったマイルスに強奪されてしまった曲なのでしょう。悪いやつだなあ、マイルス。^^

なお、CDではボーナストラックが入っていて、"Beautiful Love"のオルタネイト・トラック、そして"The Boy Next Door"が追加されています。
”Beautiful Love"はこのオルタネイトの方が先に録音されたもので、特に問題はなかったにもかかわらず、最後まで録音がすんだ後、すごくよく出来上がって気持ちが良かったので、「もういっぺんやってみよか!」とやってみたら、テーマを崩してしまったほうがずっと良かったので、Take2をマスター・テイクにしたんだそうです。
また、"The Boy Next Door"も後日、エバンスが好んで取り上げるレパートリーになりましたが、確かに他の曲に比べると少々凡庸な出来で、LPに入らなかった理由がわかります。^^

なお、このアルバムはCDとLPと持っていますが、LPの方は私の宝物です。1976年の1月にビル・エバンスが来日した折に、楽屋まで押しかけて行き、ビルにサインをしてもらったものです。このサイン、私の写真ブログに紹介してあります。まじめなビル・エバンスらしい、端正なサインでした。

1961年2月2日録音
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)
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by bluenob | 2008-10-10 22:32 | Piano
Keith Jarrett "The Köln Concert"
b0160275_20205264.jpgこのモノクロームのジャケットのアルバムを始めて聴いたのは、高校を卒業して浪人していたときだと思います。
行きつけのJAZZ喫茶でコーヒーを飲んでいたとき、突然、鮮烈なピアノの音が耳に飛び込んできました。それまでかかっていたのは、普通のハード・バップだったと思いますが、最初の4小節で、まわりの空気がそれまでの日常から非日常に変化したようなショックを覚えました。ピアノの音って、こんなに透明感があって力強いものだったんだ・・・。唖然としてしまいました。

早速LP台に乗っていたジャケットを見に行きました。キース・ジャレットの新譜でした。JAZZのアルバムとしては異例な真っ白なジャケットで、ケルン・コンサートと書いてありました。スイング・ジャーナルで広告を見たことはあるのですが、こんな純度の高いアルバムだとは想像もしませんでした。

それまでキース・ジャレットというイメージは、電化マイルスバンドのキーボード・プレイヤーという認識でした。フェンダー・ローズや電気オルガンの演奏者としてはなかなかいけてるなあ、ぐらいにしか思っていなかったのに、このアルバムでイメージが全く変わってしまいました。あるときは優しく、あるときは力強く、フルコンをその限界まで鳴らしています。

実はキースは、エレクトリックは好きでなかったようです。尊敬するマイルスなので、しょうがないのでいやいや弾いていた、というのが真相のようです。いやいや弾いていたわりには、マイルスの評価は高くて、「俺のバンドで最高のピアニストはキースだった・・・」ということらしいのですが。^^

JAZZジャイアントたち、例えばチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどの新譜はリアルで聴いたことはなく、初めて聴いた人たちがどの程度の感動だったのかは想像するしかないのですが、キースのケルン・コンサートはリアルタイムで新譜を聴くことができて本当にラッキーだったと思います。なんの予備情報もないまま、あるがままに感動させてもらいました。

アルバムの頭から最後まで、けれんもなにもないピアノソロです。一切の楽譜も用意せず、ステージに上がり、グランド・ピアノの前に座る・・・。両手をキーボードの上にかざし、おもむろにインスピレーションだけで音を造っていく・・・。インプロビゼーションの極致です。当時は、これはJAZZではないとか、いろいろ言われたようですが、この音を聴いてしまうと、ジャンルわけなどむなしくなってしまいます。

この頃のキースのソロ・コンサート、1曲が20分以上にわたるものも少なくありません。でも、どれを聴いてもひとつとして同じ演奏はなく、ひとつとして緊張感を失ったものもないのです。

キース・ジャレット、ゲーリー・ピーコック、ジャック・デ・ジョネットとのトリオによる"Standards"も素晴らしいと思いますが、衝撃度で言えば、ケルン・コンサートを始めて聴いたときには及びません。また、キース特有のうなり声も、最近のアルバムに比べると控えめなので、聴きやすいかもしれません。^^

YouTubeで、このケルン・コンサートの#1を、最初の10分間だけ聴くことができます。下記のリンクをクリックしてみてください。

Keith Jarrett - The Köln Concert (Part 1) January 24, 1975

1975年1月24日録音
Keith Jarrett (p)
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by bluenob | 2008-10-09 21:06 | Piano
Miles Davis "Kind Of Blue"
b0160275_208610.jpgキンモクセイが香り始めた秋の夜長に何を聴くか・・・。候補はいっぱいありますが、常に本命候補になるのが、このカインド・オブ・ブルーです。濃紺の闇の中に広がる静謐なJAZZ・・・。涼しくなった夜に聴くには最適のアルバムです。

また、これは歴史的に重要なアルバムでもあります。JAZZの歴史の中で、大きな変化がおきるときには必ず重要な役割を果たしてきたマイルス・デイヴィスが、乾坤一擲はなった名盤中の名盤です。
チャーリー・パーカーが1940年代に始めた複雑なコード分解によるバップ・イディオムのJAZZも、1950年代末になってくると煮詰まってきてしまい、より自由なアドリブ表現を求めたマイルスは、モード奏法に踏み出したのでした。

モード奏法は、複雑なコード進行にとらわれることなく、シンプルなモード(旋法)を使うことで、より大きなアドリブの可能性を切り開きました。モードそのものはグレゴリアン聖歌などの教会音楽にも使用され、その歴史は古代ギリシアまでさかのぼることのできる古い体系の音列です。近代西洋音楽ではほとんど使われなくなってしまいましたが、19世紀末になると、クラシックの作曲家たちも教会旋法の魅力ある音の響きに注目する人も出てきました。例えば、フィンランドの国民的作曲家シベリウスは、その第6交響曲でドリアン旋法を使っています。

マイルス・デイヴィスは、このカインド・オブ・ブルーに先立つ"Milestones"で、モード奏法の実験を行いましたが、このときはまだバンドメンバーでもモード奏法を完全に理解しているわけではなかったようです。事実、レッド・ガーランドやキャノンボール・アダリーあたりはツー・ファイヴ・シーケンスの尻尾の残った「モード奏法まがい」のソロに終始していました。^^
また、アルバムタイトルのマイルストーンズ以外の曲は、すべてハード・バップ・コンセプトのものであり、アルバムとしてのトーナリティにも欠けていました。

しかし、このカインド・オブ・ブルーは、アルバム全体が「モード奏法」で統一された記念すべきアルバムです。このモード奏法の完成のためには、ビル・エバンスの協力が不可欠でした。
当時のマイルス・デイヴィス・セクステットのレギュラー・ピアニストはウィントン・ケリーだったのですが、基本的にバッパーであるケリーのピアノでは「モード奏法」にならず、マイルスは以前在籍していたビル・エバンスを呼び戻したのです。

第一曲目の"So What"、ピアノとベースによるイントロの響きがとても新鮮です。それまでのバップ・イディオムにまみれたJAZZとは全く違う響きです。印象的なポール・チェンバースのベース・リフでテーマが演奏され、そこに管楽器とエバンスがかぶってくると、シンプルなんですが、めちゃくちゃクールでかっこいいんですね。
曲自体はシンプルなAABA、AパートはDドリアン一発、BパートはE♭ドリアン一発というシンプルさです。しかし、このシンプルさは「静謐の美」につながっています。また、AからBに移るとき、またBからAに戻るときの転調感が気持ちよいです。ちょうど見る角度を変えると宝石の輝きが変わるような感じです。

まずマイルスがオープン・トランペットでソロをとります。必要最低限の音しか使わないのですが、これがまた実に渋くてかっこいいんですね。(ボキャ貧ですなあ。^^)
次のソロはコルトレーン、彼もマイルス的にミニマルなアドリブをスタートさせますが、やがて熱く燃えていきます。キャノンボール・アダリーのソロは音数が多くて、まだコード奏法的な匂いが紛々としてますが、マイルスとコルトレーンにインスパイアされたのか、なかなか良いです。圧巻は、ビル・エバンスのソロです。ほとんどシングル・トーンを弾かない、朦朧としたソロです。バップ・イディオムでは絶対演奏できないソロでしょう。

次の曲、フレディ・フリーローダーでは、ピアニストがウィントン・ケリーに代わります。12小節のブルースという伝統的なフォーマットなので、モーダルな雰囲気はあるのですが、よりレイドバックしたブルージーな雰囲気が支配的になります。

3曲目の"Blue In Green"は、ビル・エバンスが提供した曲で、純粋なモード奏法ではありませんが、カインド・オブ・ブルー同様、「静謐の美」に満ちた素晴らしいバラードです。ミュート・トランペットによるマイルスのソロのデリカシーも素晴らしいし、コルトレーンのビターなソロも新鮮です。作曲者ビル・エバンスのソロも、まさしく「緑の中の青」という幽玄な色彩感に満ちた、イマジネイティブなものです。

4曲目の"All Blues"は、モード奏法時代に大流行することになる6/8拍子によるブルースです。シンプルなコードを延々と繰り返すうちに軽い催眠効果をもたらしますが、これが4ビートと違って6/8拍子のなせる妖しい魅力です。コルトレーンが"My Favorite Things"をやった遠因は、この曲辺りにあるのかもしれません。

5曲目の"Flamenco Sketches"も、ビル・エバンスのアイディアに基づいた素晴らしいバラード曲で、"Everybody digs Bill Evans"に収録された"Peace Piece" がその原型です。ここではスパニッシュ・モードを使いながら各人が瞑想的なソロを繰り広げてくれます。コルトレーンのソロは、後の名作”Ballads"に通じるシンプルでメロディアスなものです。キャノンボールは相変わらず音数が多すぎて一人浮いているんですが、まあ悪くはありません。なんと言ってもこれが彼の持ち味ですから・・・。^^エバンスはミニマルな音でのソロに徹するのですが、その美しさ、妖しさは、なんと言ったらいいのか・・・。やがて、マイルスによるミュート・ソロで、静かに幕を引いていきます。

このアルバム、聴いていてだれるということがありません。また飽きるということもありません。今まで何百回となく聴いているはずなんですが、聴くたびに満足感を与えてくれる稀有なアルバムです。

YouTubeに、"So What"の音源がありますので、ご興味がありましたら、下記のリンクをクリックしてみてください。
So What by.Miles Davis

1959年3月2日録音
Miles Davis (tp)
Cannonball Adderley (as)
John Coltrane (ts)
Bill Evans (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (d)
Wynton Kelly (p)
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by bluenob | 2008-10-08 21:50 | Trumpet
Bill Evans "Portrait In Jazz"
b0160275_19353672.jpg今年もキンモクセイの咲く季節になってきました。この季節になると、エバンスのポートレート・イン・ジャズを聴きたくなります。「枯葉」-"Autumn Leaves"が入っているからなんですが、まあ実際には真夏であれ真冬であれ、季節を問わずよく聴くアルバムでもあります。^^

モダン・ジャズのピアニストの中で、一番好きなピアニストは誰か?と聞かれたら、間髪をおかず「ビル・エバンス!」と答える私ですが、このアルバムは私が一番最初に買ったビル・エバンスのアルバムです。高校生の頃ですから、もう35年も前の話になります。当時はLPですから、針をレコードに下ろした瞬間、研ぎ澄まされたピアノの音色にノックアウトされてしまいました。

エバンスの最高傑作は何か?と聞かれたら、これは間髪をおかずに答えるのはとても難しいです。なぜなら、駄作をほとんど出さなかったピアニストだからです。でも強いてあげるとするなら、リバーサイドで吹き込まれた4部作でしょうか。

1959年12月 "Portrait In Jazz"
1961年2月 "Explorations"
1961年6月 "Waltz For Debby"および"Sunday At The Village Vanguard"

これらの4枚は、ビル・エバンスのピアノ、スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスというJピアノ・トリオで録音されました。
1961年6月の2枚は、名門ライブスポット、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音で、JAZZらしい一発勝負という点ではよりスリルがあるのですが、スタジオ録音の"Portrait In Jazz"と"Explorations"には、より端正な魅力を感じます。

この4部作の中で一番最初に録音されたのがこのアルバム、ポートレート・イン・ジャズですが、すでに素晴らしい完成度です。
それまでのJAZZのピアノ・トリオは、主役はなんと言ってもピアノで、ベースとドラムスは脇役に甘んじるという図式だったのですが、このポートレート・イン・ジャズで展開されている音楽は、ピアノ・ベース・ドラムスが対等な立場で演奏しています。いわゆるインタープレイ、というものです。

特に圧倒的なのが"Autumn Leaves"で、ベースのスコット・ラファロのマスター・ピースとも言うべき演奏になっています。
ラファロはテーマからしていきなり意表をつく2拍三連でビートを刻み始めます。またテーマの後のソロ・オーダー、普通はピアニストが先発することが多いと思いますが、いきなり緊張感溢れるラファロのソロになります。エバンスとの対位法的なアプローチも痛快で、お互いに火花を散らすような挑発的なフレーズでいどみかけます。この演奏でラファロはジャズ・ベースの可能性を今までになく大きく広げてしまったと思います。
また、ラファロはコンベンショナルな4ビートのバッキングをやらせてもすごいです。ベース・ランニングの音の選び方の趣味のよさは抜群ですし、そもそもベースの音自体が太くて深くてよく伸びる、実に気持ちの良い音なのです。
もちろん、エバンスのピアノも、文句のつけようがありません。モーリス・ラヴェルやクロード・ドビュッシーなどの印象派のピアノ曲を思わせる微妙なハーモニー、メリハリの効いたピアノ・タッチと抜群のペダルコントロール、コンビネーション・ディミニッシュ・スケールで駆け上がる早いパッセージ、あらゆるテクニックを駆使してピアノから魅力的な音を搾り出しています。この新鮮な響きは、バップ・イディオムでしか演奏できない数多のピアニストを一気に時代遅れにしてしまいました。
この"Autumn Leaves"、JAZZの大スタンダード・ナンバーですが、その決定打とも言うべき演奏が、このアルバムにおける演奏ではないでしょうか。

その他の曲も素晴らしい出来栄えです。印象派的な響きのテーマ演奏で始まる"Witchcraft"、粒立ちの良いシングルトーンが気持ちの良い"When I Fall In Love"、明るくてスインギーな"Peri's Scope"、ポール・モチアンのブラシとスティックの変化のつけ方が面白い"What Is This Thing Called Love"、朧なハーモニーの美しいバラード"Spring Is Here"、甘く上品なワルツ”Someday My Prince Will Come"・・・。どの曲も、JAZZらしい緊張感に満ちた演奏です。

このアルバムの最後を飾るのは、マイルス・デイヴィスのカインド・オブ・ブルーでも演奏された素晴らしいバラード、"Blue In Green"です。
この瞑想的なムードに溢れたモーダルなバラード、作曲者はマイルス・デイヴィスとなっていますが、良くてマイルスとエバンスの共同作品、本当はエバンス単独の作品ではないでしょうか。
カインド・オブ・ブルーでの演奏も逸品中の逸品ですが、このトリオによる演奏も最上の出来栄えです。演奏が終わったあとも、しばらくは目を閉じて、その余韻に浸っていたくなるほどです。

なお、YouTubeに、このアルバムの"Come Rain Or Come Shine"および"Autumun Leaves"がアップされていましたので、下記にリンクを貼っておきます。
Bill Evans Trio - Come Rain or Come Shine / Autumn Leaves


1959年12月28日録音
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)
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by bluenob | 2008-10-07 21:00 | Piano
John Coltrane "Giant Steps"
b0160275_20585248.jpgJAZZのテナー・サックスと言えば、ソニー・ロリンズと共に双璧をなすのが、ジョン・コルトレーンです。コルトレーンもロリンズ同様、どのアルバムも素晴らしいのですが、季節によって聴きたくなるアルバムが違います。

暑い夏には、インパルスの黒くて重いコルトレーンが聴きたくなるのですが、秋になるとアトランティックに吹き込まれたアルバムが聴きたくなってきます。もう少し寒くなってくると、ブルーノートやプレスティッジに残されたアルバムが聴きたくなります。不思議な季節感です。^^

さて、アトランティック時代のコルトレーンの中でも、コルトレーンの凄みを110%伝えてくれるアルバム、ジャイアント・ステップスをご紹介したいと思います。

当時、コルトレーンはマイルス・デイヴィス・セクステットの一員で、すでにモード時代の幕開けを告げる"Kind Of Blue"を吹き込んだ後でした。このアルバムは、その後に吹き込まれたものですが、モード奏法でばりばりやっているわけではなく、むしろコード奏法を究極まで極めたという印象が強いアルバムです

中でも圧巻は、アルバム・タイトルにもなった"Giant Steps"です。通称「コルトレーン・チェンジズ」と呼ばれる代理和音進行の曲で、1コーラス16小節中に長3度という珍しい転調で、B、E♭、Gのキーを10回も行ったり来たりします。
コード奏法ですから調性感はしっかりあるのですが、B,E♭,Gのいずれもがトニックに聞こえるという、浮遊感漂う不思議な曲です。

これだけ転調すると、その演奏の難しさは並大抵ではありません。しかも、♩=240を超える馬鹿っ早の演奏です。譜面にしたものを演奏するのも容易ならざる曲で、これでアドリブをするとなると想像を絶します。
事実、この曲は斬新過ぎて、当時のサイドメン泣かせの曲だったようです。4月にシダー・ウォルトンとやったセッションはお蔵入りになってしまっています。

また、このアルバムのほとんどを占める5月のセッションでも、名人トミー・フラナガンがこの曲ではヘロヘロになってます。始めはシングルトーンでなんとかアドリブしているのですが、後半はとてもついて行けなくなり、ブロック・コード・ソロに終始しています。オルタネイト・テイクではピアノ・ソロすらありません。^^

しかしコルトレーンは、この難曲を見事に吹ききっています。この変態コードを忠実になぞって、ダイアトニック・スケールの八分音符をばりばりとばら撒いていくソロは、シーツ・オブ・サウンズの典型です。凄みがあるのはもちろん、爽快ですらあります。

YouTubeに、「目で追う John Coltrane/Giant Steps」があります。

興味があったら覗いて見てください。楽器をやったことのある人なら、思わずのけぞってしまう過激な世界が広がっています。^^

"Cousin Mary"は一転してモーダルなブルースです。マイルス・バンドで経験したモード奏法に基づく斬新なフレージングで、伝統的なブルースとは一味もふた味も違うモダンなブルースになっています。

"Countdown"は超アップテンポでアート・テイラーとのデュオで始まります。ジャイアント・ステップス同様、コルトレーン・チェンジズの新鮮な和声進行の曲で、それに基づくコルトレーンのソロは破壊力満点です。

また、バラードの"Naima"だけは、ピアノがウィントン・ケリー、ドラムスがジミー・コッブに代わっています。この曲は瞑想的でモーダルな雰囲気の演奏で、コルトレーンが生涯を通じて愛奏したバラードです。ケリーのピアノも、いつもの「玉を転がすようなシングル・トーン」のケリーではなく、ビル・エバンスを髣髴とさせるブロック・コード・ソロに終始しています。

"Mr. P.C."は、マイルス・コンボ時代からの盟友でもあり、このアルバムでも貢献しているベースのポール・チェンバースに捧げたマイナー・ブルースです。これもアップテンポで、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンズを堪能できます。シンプルですが魅力的なリフで、カバーしているミュージシャンもたくさんいます。実際、私も学生時代、Cのマイナーブルースというと、リフはこればかりでした。^^

ジャイアント・ステップスというアルバムタイトルが暗示するように、このアルバムはその革新性で、JAZZの地平を大きく広げた大傑作に違いありません。いつ聴いても、その新鮮さに脱帽してしまいます。

1959年4月~12月録音
John Coltrane (ts)
Tommy Flanagan (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (d)
Wynton Kelly (p)
Jimmy Cobb (d)
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by bluenob | 2008-10-06 22:18 | Tenor Sax