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Eric Dolphy "Outward Bound"
b0160275_2214635.jpg元祖マルチ・リード奏者、エリック・ドルフィーの初リーダー作です。
初めてドルフィーを聴いたのは、"Last Date"だったと思いますが、カルチャー・ショックどころではない衝撃を受けました。

ドルフィーのサウンドはとてつもなく前衛的な響きなのに、冷たさはいっさい感じず、ひたすらエモーショナルに迫ってきます。オーネット・コールマンの前衛ぶりは、「ああ無邪気だなあ、こういうのもありかなあ・・・。」ぐらいの受け止め方だったんですが、ドルフィーを聴いたときは、「こっ、これはっ、すごい、すごすきるっ、果たして現実なんだろうか?」ぐらいの衝撃を受けました。

よく「馬のいななき」と言われるドルフィー独特の音のジャンプですが、アブストラクトな美しさに満ちています。抽象画の世界と同じで、「理解する」ものではなく、あるがままに「感じる」ものだと思います。ドルフィーが嫌いだという人も多いのですが、「理解しよう」としすぎるか、生理的に受け付けないか、どちらかでしょう。^^

また、楽器を完璧にコントロールするドルフィーのテクニックに驚きました。アルト・サックスとフルートは運指が近いですから、割合と簡単に持ち替えはできると思うのですが、バス・クラリネットは運指がかなり違いますし、楽器の鳴らせ方もまったく違います。にもかかわらず、どの楽器を吹いてもドルフィーらしさ」は一貫しており、しかも楽器ごとに見せる表情が微妙に違うのが面白いです。

この初リーダー作、Outward Bound"では、まだやや「伝統寄り」のところにある演奏ですが、単に聴きやすいだけの作品にはなっていません。

バスクラで吹かれる"Green Dolphin Street"、おそらくこの曲の演奏の中で、一・二を争う素晴らしい演奏だと思います。フレディー・ハバードのミュートによるテーマを聴いていると、ごく普通の「緑海豚通」に聴こえるんですが、ドルフィーのバスクラが出てくると、もうそこは非日常の世界になってしまいます。

"Miss Toni"でも、テーマ部分は普通のハード・バップなんですが、ドルフィーのバスクラが出てくると、世界が変わります。そしてハバードのソロでまた現実に戻ります。^^

また、"G.W"と"Les"のアルト・サックスでのアヴァンギャルドな響き、これもすごいです。テナー・サックスに比べてアルト・サックスの音色は甘すぎて、モーダルな曲や前衛っぽい曲に合わせるのが難しいのですが、ドルフィーのアルトは甘さを排除した硬質なリリシズムに溢れており、One And Onlyです。コルトレーンそっくりに吹く人はたくさんいますが、ドルフィーそっくりに吹ける人はいません。

"245"の酔っ払ったような雰囲気は後年の代表作、"Out To Lunch"の雰囲気に似てるんですが、こちらはよく聴くとトラディショナルなブルース・フォーマットです。ブルージーでありながら、ドルフィーのソロはきんきんにとんがってます。
ハバードのソロは完璧にブルースそのものです。ハバード、"Out To Lunch”ではもっと鋭いソロを吹いてましたが、この頃はまだ発展途上だったということでしょうか。^^

また、"Glad To Be Unhappy"のフルートで見せるロマンチックでありながらアブストラクトな音、これもこの人だけのサウンドで、イミテイターを聴いたことがありません。

なお、ドラムスはロイ・ヘインズです。このドラマー懐の深さにはいつも脱帽してしまいます。若い頃はレスター・ヤングやチャーリー・パーカーと演奏していたのに、ドルフィーやコルトレーン、チック・コリアやパット・メセニーと演奏しても決して古臭くありません。2008年現在、まだ存命中で、80歳を超えても演奏し続けているそうです。いやはや、丈夫で長持ちだわ。^^

初リーダー作には、そのミュージシャンのすべてが現れるといいますが、この"Outward Bound"、ドルフィーにしては聴きやすい作品ですが、十分にらしさが味わえるアルバムになっていると思います。

1960年4月1日録音
Eric Dolphy (as, bcl, fl)
Freddie Hubbard (tp)
Jackie Byard (p)
George Tucker (b)
Roy Haynes (ds)
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by bluenob | 2008-07-31 23:06 | Alto Sax
Dexter Gordon "GO"
b0160275_23182381.jpgBe-Bop勃興期から活躍したテナー・サックスの巨人、デクスター・ゴードンの代表作です。
デクスター・ゴードンは、そのJAZZ史上における存在感も巨人ですが、実際に身長も195cmあって、"Long Tall Dexter"というアルバムがあるぐらいです。

デックスは1940年にプロ・デビューしました。1945年からはバド・パウエル、マックス・ローチ、アート・ブレイキーなどの一流プレイヤーと共演しました。レスター・ヤング流のスムーズなフレージングと、チャーリー・パーカー流のビ・バップの革新的なスタイル、そして「これぞテナー・サックス!」という野太い音が魅力のテナー・マンでした。しかし、1950年代後半は、「お薬」のやりすぎで起訴されてしまい、ほとんど刑務所で過ごすことになってしまいました。

普通の人なら、ここで人生おしまいなんですが、デックスのえらいところは、そこから再起し、音楽家としてさらなる高みに上り詰めたところにあります。
刑務所を出所した後、ブルーノートと契約したデックスは、快作を連発します。キャリアから言えばずっと後輩のソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンのスタイルを謙虚に勉強し、それを自分のスタイルに取り込んでしまい、「これぞテナー・サックス!」というスタイルにさらに磨きをかけたのです。いくつかののレコーディングをブルー・ノートに残した後、デックスはヨーロッパに移住してしまいます。

この"GO"は、その渡欧直前に吹き込まれたアルバムで、ブルー・ノートのデックスの中では最高の出来だと思います。この2日後に同じメンバーで、"A Swingin' Affair"を吹き込んでいますが、"GO"ほどのできばえではありません。

このアルバムでは、デックスの豪快なテナー・サウンドを心行くまで楽しめます。ヴィブラートが少なく、中身の一杯詰まったハード・ボイルドな音で、タンギングのメリハリをしっかりとつけ、タメの効いた後ノリでゴリゴリ吹きます。デックスの自作曲、"Cheese Cake”やスタンダードの"Love For Sale"などのマイナー・チューンにはその魅力が一杯詰まっています。

また"I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry"や"Where Are You?"というバラードで見せる素晴らしい歌心、これはもうたまりません。
タフなんですがとても優しいバラードです。レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウのせりふ、「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」("If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.")を地で行ってる感じで、めちゃくちゃにかっこいいです。

また"Second Balcony Jump"や"Three O'Clock In The Morning"で見せる、いろんな曲を引用しながらのくつろいだソロ、これはまさしく「デックス節」の典型です。中毒性が高く、聴き始めると「もう一回繰り返して聴いてみよう。^^」とカッパ・エビセン状態になってしまいます。^^

またリズム陣も手堅くデックスを盛り立てています。ソニー・クラーク、ブッチ・ウォーレン、ビリー・ヒギンズは、この時代のブルーノートのハウス・リズム・セクションだったようでいろんなアルバムに登場しています。

渡欧後のデックスも、カフェ・モンマルトルのライブなど素晴らしいものを残していますが、それでも「デックスの最高の一枚」となると、やっぱりこの"GO"を選んでしまいます。

1962年8月27日録音
Dexter Gordon (ts)
Sonny Clark (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
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by bluenob | 2008-07-31 00:22 | Tenor Sax
Art Blakey "Moanin'"
b0160275_23204040.jpgドラムスの巨人、アート・ブレイキーの代表作であり、昭和30年代中ごろの日本にファンキー・ジャズ・ブームを巻き起こした名盤です。アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズが1961年に初来日したころ、その人気はものすごいものだったそうです。ある批評家が、「蕎麦屋の出前でさえ、口笛でモーニンを吹いていた・・・」と書いておりました。

元来がへそ曲がりだったので、JAZZを聴きはじめた高校生の頃は、あえて聴きませんでした。スイング・ジャーナルなどで、「ファンキー・ジャズ・ブームの仕掛け人云々」の記述を見たのがよくなかったようです。
生意気盛りの年頃ですから、「ふん、そんなポピュラーなジャズなんて聴かないもん!」と、無視していたのですね。^^
そう言いながらチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーを聴いていたんですから、何を言ってるんだか、って感じです。^^;

高校を卒業して浪人中に、JAZZ喫茶に入り浸るようになりました。
あるとき、行きつけのお店に入ると、無茶苦茶にかっこいい曲が流れていました。思わずレコジャケを見に行ったら、このブレイキーの精悍な表情が目に入ったのです。
「これがモーニンか・・・。」ジャケットのデザインは雑誌などで知ってましたが、音を聴いたのは初めてでした。その曲は、ゴルソン・ハーモニーの響きが美しい"Are You Real"でした。しばらくジャケットを手にして聞き惚れていました。
曲は"Along Came Betty"となり、クールでスモーキーなテーマが流れてきます。「ジャズ・メッセンジャーズ、めっちゃんこかっこえーがや・・・。」いやー、コペルニクス的転回です。^^;無知と偏見は恐ろしい。^^;

このモーニン、今となってはハード・バップの名盤として愛聴しております。
タイトル曲の"Moanin'"のアーシーなフィーリング、そして私の耳を捉えた"Are You Real"と"Along Came Betty",そして有名な"Blues March", "Come Rain Or Come Shine"、どれも恐ろしくブルージーでノリが良いです。"The Drum Thunder Suit"はちょっとこけおどしっぽいですが。^^;
いずれにせよ、モダン・ジャズらしいアルバムを一枚あげよ、と言われたら、必ず上位に来るアルバムだと思います。

ところで、アート・ブレイキーは元々はピアニストだったそうです。
ある夜、クラブのボスがピアニストを連れてきて弾かせたら、ブレイキーよりも優れた演奏をしたため、アートに「ピアノはクビだ。今日からタイコでも叩いてな!」と拳銃をちらつかせながら脅したため、やむなくドラマーになった、という逸話があります。本当かどうかは知りませんが。^^

しかし、ピアノから始めたキャリアがあればこそ、音楽をより大きな視野でとらえることができるようになったのではないかと思ったりします。
ブレイキーは、その耳の確かさで、実に多くの若手有望ミュージシャンをスカウトしてきました。
ジャズメッセンジャーズで腕を磨いたあと、一流ミュージシャンになったプレイヤーは、数え切れません。

有名どころだと、Clifford Brown (tp), Lee Morgan (tp), Freddie Hubbard (tp), Chuck Mangione (tp), Wynton Marsalis (tp), Branford Marsalis (ts,as), Curtis Fuller (tb), Hank Mobley (ts), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Cedar Walton (p), Keith Jarrett (p), Doug Watkins (b), Reggie Workman (b)...

いやはや、すごいとしか言い様がありません。特にトランペッターを聞き分ける耳はものすごかったんだな、と思います。歴代スターが並んでますから。^^
この"Moanin'"でも、まだ二十歳そこそこだったLee Morganの溌剌としたトランペットを堪能できます。

1958年10月30日録音
Lee Morgan (tp)
Benny Golson (ts)
Bobby Timmons (p)
Jymie Merritt (b)
Art Blakey (ds)
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by bluenob | 2008-07-30 00:20 | Drums
Wes Montgomery "Smokin' at the Half Note"
b0160275_22493079.jpg天才JAZZギタリスト、ウェス・モンゴメリーのグルーヴィなライブ盤です。このアルバム、ピアノのウィントン・ケリーと共同名義になっているんですが、圧倒的にウェスの演奏がものすごくて、自分の中ではウェスのリーダー・アルバムという感じです。

このアルバムの圧巻は第1曲目の"No Blues"です。
ウェスといえば「オクターブ奏法」というのが対句のように出てきますが、「これでもかっ!」、というぐらいオクターブ奏法でがんがん暴れてます。
途中、ウェスのソロがあまりに凄いので、ウィントン・ケリーがバッキングを遠慮している箇所があります。いや、遠慮するというより、「こいつ、今日はどこまでやるんだ?」って感じで聞き惚れていたのかもしれません。仲間でもそう思うぐらい、この夜のウェスは神がかっていました。

あまりにウェスが凄いので、その影に隠れてしまいますが、ウィントン・ケリーだっていつものように、ソロもバッキングもばっちりグルーヴィーです。ポール・チェンバースのベース、ジミー・コッブのドラムスもよくフロントを盛り立てています。
考えてみれば、この曲はマイルス・デイヴィスの曲で、ケリー、チェンバース、コッブはマイルスのところのリズム・セクションでしたから、散々っぱらこの曲はやったんだと思います。

ちなみにこのリズム・セクション、フロントを盛り立てるという点では常に素晴らしく、他のアルバムでも脇に回って実に良い演奏を聴かせてくれます。
たとえば、テナー・サックスのジョー・ヘンダーソンとやった1968年のバルチモアでのライブです。("Straight, No Chaser", Verve)
ここでもジョーヘンがスタンダード・ナンバーでやりたい放題に暴れてくれるんですが、それをバックで煽り立てているのが、このケリー、チェンバース、コッブのリズム隊です。さすがマイルスが選んだリズム隊だけあって、フロントを盛り立てる術を実によく知っています。

"No Blues"のほかにも、"Unit Seven"や"Four On Six"もライブならではのドライブ感に溢れたスインギーな良い演奏です。また、"If You Could See Me Now"や"What's New"といったバラードもしっとりした良い演奏です。ピックを使わないスモーキーな味わいのウェスのギター・サウンドをたっぷりと味わうことが出来ます。

とにかくこの夜の4人のドライブ感はものすごいものがありました。1965年の6月24日の夜、ニュー・ヨークのハーフ・ノートに居たかったなあ。あ、9歳のガキじゃなんもわからんか。^^;

1965年6月24日録音
Wynton Kelly (p)
Wes Montgomery (g)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (d)
At "Half Note", NYC
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by bluenob | 2008-07-28 23:27 | Guitar
Ann Burton "Blue Burton"
b0160275_030509.jpgどちらかというとインストゥルメンタルなJAZZばかり聴いているNobですが、女性のJAZZヴォーカルで一番好きなのが、このアン・バートンです。このアルバムは、アン・バートンが34歳のときに吹き込んだデビュー・アルバムです。

アン・バートンはオランダに生まれ、ヨーロッパで活躍したヴォーカリストです。声量があるわけでなく、抜群のドライブ感があるわけでもなく、スキャットが素晴らしいわけでもなく、実に淡々とメロディーをストレートに歌うヴォーカリストです。でも、とてもデリケートな感情表現が素晴らしく、聞き飽きることがありません。

アン・バートンは、歌を選ぶときにメロディーではなく歌詞で選ぶのだそうです。当然歌うときも歌詞を大切にして歌いますし、オランダ人の英語ですから、日本人には聴き取りやすい。^^;
私は、JAZZのスタンダードは歌詞まで覚えたくなるたちなので、アン・バートンのように歌詞を丁寧に歌ってくれる人は大好きです。

また、彼女はカテゴリーにもこだわらないシンガーで、JAZZだけでなくポップスも彼女流のJAZZにして歌ってしまいます。このデビュー・アルバムにも、キャロル・キング"Go Away Little Boy"や、ボビー・ヘブの"Sunny"などのポピュラーが入っています。

どの曲も、彼女独特のハスキーでメローな声で歌われており大好きですが、特に好きなのは"The Good Life"です。
フランスのジャズ・ギタリスト、サッシャ・ディステルの曲で、トニー・ベネットが大ヒットさせました。日本人でも笠井紀美子さんがカバーしていましたが、メロディーも良いし、歌詞もちょっと説教臭いですが、胸にひびきます。アン・バートンは、オリジナルの歌詞を少し変えて下記のように歌っています。

Yes, the good life,
Full of fun, seems to be the ideal,
Yes, the good life,
Makes you hide all the sadness you feel,
You won't really fall in love
'Cause you can't take the chance,
So be honest with yourself,
Don't try to fake romance.

Hmmm, the good life,
To be free and explore the unknown,
Like the heartaches
When you know you must face them alone,
Please remember I still want you
And in case you wonder why,
Well, just wake up,
And kiss the good life bye bye.

私の下手な訳だと、こんな感じでしょうか。

==
そう、確かにいい人生ね。
楽しいことがいっぱいあって理想的だと思うわ。
ほんと、いい人生だと思う。
たくさん悲しいことがあるのに隠してくれるもの。
でも、本気で恋に落ちることはしないのね。
チャンスが無いから、ってすぐに言い訳して。
だけどもっと自分に素直になってみたら。
ロマンチックな気持ちをごまかしちゃだめよ。

うん、確かにいい人生ね。
胸を痛める未知の世界に立ち入らなくても済むし。
でもそんな世界に一人で向かわなければいけなくなったら、
思い出して欲しいの、私にはまだあなたが必要だってことを。
もし不思議に思ったら、さあ、目を覚ましてよ。
今の「いい人生」にキスしてバイバイしてね。

==

1967年録音
Ann Burton (vo)
Louis van Dyke (p)
Jacques Schols (b)
John Engles (ds)
Piet Noordjik (as)
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by bluenob | 2008-07-28 01:33 | Vocal
Bobby Hutcherson "Happenings"
b0160275_1742213.jpg暑い夏の日に聴くと、すーっと涼しくなるのがこのアルバムです。新主流派のヴァイブラフォン奏者、ボビー・ハッチャーソンの代表作です。

ヴァイブという楽器は、その音色自体がそもそもクールなんですが、ハッチャーソンのモーダルなプレイはさらにクールです。ヴァイブ奏者でも、ミルト・ジャクソンなんかはブルージーでホットなイメージがありますが、ハッチャーソンはコルトレーンをヴァイブに置き換えたような感じで、透明な緊張感に溢れたプレイを展開してくれます。

このアルバムの曲目はほとんどがハッチャーソンのオリジナルですが、唯一の例外がピアノのハービー・ハンコックの作品、「処女航海」"Maiden Voyage"です。ハンコック自身もフレディー・ハバードとジョージ・コールマンを加えたクインテット編成で吹き込んでおり、新主流派の名盤のひとつとなっていますが、このハプニングスにおけるバージョンは管楽器がない分、より透明感の高い名演となっています。

ハッチャーソンのオリジナルの中では、"Bouquet"や、"When You Are Near"などのスローな曲がヴァイブという楽器のよさを活かしているような気がします。
また、"Heat Start"のようにまるでコルトレーンのインプレッションそのもののようなモーダルな曲もかっこいいです。

最後の"The Omen"は、かなりフリーに振った演奏です。1966年という録音時期は、フリー・ジャズが勃興してきた時代であり、前向きなミュージシャンは自由な表現のために前衛的・実験的な作品をたくさん発表していました。ここでは、Eric Dolphyの"Out To Lunch"でも聴かれた、ハッチャーソンのとんがったサウンドが聴けます。また、この曲ではマリンバも演奏しており、フリーなんですがアコースティックな響きで耳障りではありません。

夏の暑い盛りに、「クールでかっこいいJAZZが聴きたいな・・・。」と思ったとき、このハッチャーソンのハプニングスはとてもお勧めの一枚です。

1966年2月8日録音
Bobby Hutcherson (vib, marimba)
Herbie Hancock (p)
Bob Cranshaw (b)
Joe Chambers (ds)
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by bluenob | 2008-07-27 19:14 | Others
Joe Henderson "Tetragon"
b0160275_2247551.jpg1960年代に活躍したテナー・サックス奏者、ジョー・ヘンダーソンがマイルストーンに残した傑作アルバムです。

ジョー・ヘンダーソンは、軍隊で2年間を過ごした後、ニューヨークに出て本格的にJAZZを始めました。デビューした時代が時代ですから、ジョーヘンのスタイルは、いわゆる「新主流派」の典型的なサウンドです。基本的にコルトレーン・ライクなフレージングが目立ちますが、ジョーヘンは懐の深いテナー・サックス奏者で、ただのトレーン・イミテイターではありません。

レスター・ヤング的なビ・バップ・テナーを出発点として、R&Bやラテンの風味も加味され、さらに白人テナーの巨人、スタン・ゲッツの影響もまであります。それらがあった上でコルトレーンの影響を受けた重層的なスタイルですから、そのソロは一筋縄ではいかず、聴き応えがあります。

同時代のテナー・サックスの大物にはウェイン・ショーターがいますが、ショーターとジョーヘンを比較すると、ショーターの方がコルトレーン・ライクで、取り上げる曲もオリジナル中心です。
ジョーヘンはオリジナルもやりますが、スタンダード・ナンバーも積極的に取り上げます。このジョーヘンのスタンダード、彼なりの個性的なアドリブが新鮮で大好きです。^^

ショーターとジョーヘン、どちらも個性的で、60年代を代表する素晴らしいテナー・マンだと思いますが、強いて言うと「黒魔術のショーター」と「野生児ジョーヘン」という感じでしょうか。^^
こう言うと、ジョーヘンがパワーだけを頼みにするテナーマンみたいに聴こえるかもしれませんが、そんなことはありません。当時のJAZZ界きっての知性派だったと思います。ただ、表現がスマートというよりは野性的、ということですね。^^

このアルバムはブルーノートを後にして、マイルストーンに移籍したあとのレコーディングです。
録音メンバーは、1967年9月に吹き込まれたほうが、Kenny Barron (p), Louis Hayes (ds), Ron Carter (b), Joe Henderson (ts)、そして1968年5月に吹き込まれたほうは、ピアノがDon Friedman、ドラムスがJack De Johnetteに変わります。後者のメンバーのほうが聴き応えがありますが、その差はわずかです。

このアルバムの一番の聴き所は、ドン・フリードマンとジャック・デ・ジョネットが加わった1曲目、Invitationです。
この曲は1952年の映画"Invitation"の主題曲でしたが、どいういうわけか、60年代以降のJAZZミュージシャンに好まれた曲です。転調が美しいモーダルな楽想だからでしょうか。
ジョン・コルトレーンやビル・エバンス、フィル・ウッズやジャコ・パストリアスも取り上げています。
それらの中で、私が一番かっこいいと思うのが、このアルバムにおけるInvitationです。

ドン・フリードマンのビル・エバンスをより硬質にした感じのイントロから、サブ・トーン気味のジョーヘンが入ってきて、そこにロン・カーターのアンティシペーション気味の伸びのあるベースが絡んでくる・・・。鳥肌が立つほどかっこいいです。^^
ジョーヘンのソロも、ドン・フリードマンのソロも、それぞれ新しい感覚に溢れており、魅力たっぷりです。特にテーマに戻る前のジョーヘンのアドリブ、コルトレーン・スクールのクリシェはほとんどなく、この人らしい独創的なすばらしいものです。
この1曲のためにこのアルバムを買っても損はしません。^^

このアルバムにはもう1曲スタンダード・ナンバーの"I've Got You Under My Skin"が入っており、こちらのジョーヘンも素晴らしくかっこいいです。

また、他のオリジナル曲では、ジョーヘンのよりアヴァンギャルドな、しかし人間臭いアドリブが聴けます。


1967年9月27日録音 (Tetragon, First Trip, I've Got You Under My Skin)
Joe Henderson (ts)
Kenny Barron (p)
Ron Carter (b)
Louis Hayes (ds)

1968年5月16日録音 (Invitation, R. J., The Bead Game, Waltz For Zweetie)
Joe Henderson (ts)
Don Friedman (p)
Ron Carter (b)
Jack De Johnette (ds)
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by bluenob | 2008-07-26 23:45 | Tenor Sax
Blue Mitchell "Blue's Moods"
b0160275_20282999.jpgトランペッター、ブルー・ミッチェルの代表作です。

Richard Allen (Blue) Mitchellは、フロリダのマイアミ出身で、高校時代からトランペットの演奏を始め、そこのころにこの"Blue"というニックネームが付いたそうです。
同じフロリダ出身のアルト・サックス奏者、ジュリアン・キャノンボール・アダリーに見出され、当時キャノンボールが在籍していたリバーサイド・レーベルでデビューしました。
キャノンボールもそうですが、フロリダ生まれのJAZZプレーヤーって、基本的に根アカな人が多いような気がします。キャノンボールもブルー・ミッチェルも、その根アカが時々ブルーな表情を帯びるときがあって、そこがたまらなく魅力的なところでもあります。

これはブルー・ミッチェルリバーサイドでの第5作目のアルバムで、ワン・ホーンでスタンダードなJAZZを吹きまくっています。
学生時代にJAZZバンドをやっているとき、とてもよく聴いたアルバムで、特に第1曲目の"I'll Close My Eyes"が大好きでした。ウィントン・ケリーの弾むようなピアノのイントロから、哀愁を帯びた美しいブルー・ミッチェルのトランペットが聞こえてくると、それだけで幸せな気分になります。

ところで、JAZZのアドリブの練習は、たいていFのブルースから始まり、それがある程度こなせるようになると、「歌もの」と言われる曲を練習し始めます。

この曲は、「歌もの」の中でも特にアドリブのしやすいコード進行を持っているため、初心者のときによく練習しました。有名なスタンダード・ナンバー、"There will never be another you"もほとんど同じコード進行で、"I'll Close My Eyes"が演奏できると、同時に"There will never be another you"もアドリブできるようになります。^^

このブルー・ミッチェルのアドリブも、歌えるぐらいコピーしました。ただ、トランペットで吹いてかっこいいフレーズと、サックスで吹いてかっこいいフレーズは違うので、直接使うことはありませんでしたが。^^それこそ耳にたこができるほど聴いたはずなのに、ブルー・ミッチェルのフレーズ、いまだに飽きることがありません。

ブルー・ミッチェルのトランペットの魅力は、「中庸の魅力」だと思います。驚くようなテクニックやハイノートをヒットすることはほとんどなく、中音域を使った美しいメロディー・ラインで淡々とアドリブを繰り広げるのですが、そのシンプルなところが実に味わい深いトランペッターだと思います。

このアルバムの吹き込まれた1960年というと、マイルス・デイヴィスが"Kind Of Blue"を吹き込んでJAZZのイディオムを大きく変えてしまった直後なんですが、そんなことは一切関係なく、ブルー・ミッチェルは、マイ・ペースで美しいメロディーで歌っています。
"I'll Close My Eyes"の良さは別格としても、他の曲も聴き所が多いです。しかし、この人の魅力は「歌もの」にあり、"When I Fall In Love"や"I Wish I Knew"は素晴らしい出来です。

また、サイドを固めるウィントン・ケリーのピアノ、サム・ジョーンズのベースも、趣味の良い黒いフィーリングでブルー・ミッチェルを盛り立てています。こんなリズム陣をバックにワン・ホーンで吹いたブルー・ミッチェル、さぞかし気持ちが良かったに違いありません。^^

1960年8月24日~25日録音
Richard "Blue" Mitchell (tp)
Winton Kelly (p)
Sam Jones (b)
Roy Brooks (ds)
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by bluenob | 2008-07-26 21:17 | Trumpet
Phil Woods "Woodlore"
b0160275_2215584.jpg白人アルト・サックスの巨人、フィル・ウッズの若き日の名演です。

フィル・ウッズはマサチューセッツ州スプリングフィールドの出身で、1948年にニューヨークに出てジュリアード音楽院、そしてクール派の巨匠レニー・トリスターノの元でジャズを学びました。もちろん、当時のアルト・サックスの神様、チャーリー・”バード”・パーカーからも強い刺激を受けました。

1955年にチャーリー・パーカーが亡くなった後は、その葬式や借金の清算などで未亡人のチャン・パーカーの世話をしているうちに恋仲になってしまい、1958年に結婚してしまいました。また、チャンが継母として世話をしていたバードの遺児、キム・パーカーとベアード・パーカーもそのまま譲り受け、新たな継父となりました。後年、キム・パーカーはジャズ・シンガーとしてデビューしたそうですが、残念ながら私はまだ聴いたことがありません。継父のウッズはさぞかしそのデビューを喜んだことでしょう。

フィル・ウッズのアルト・サウンドは個性的です。明るくてつややか、メリハリの効いたフレージングで歌いまくります。アルト・サックスという楽器をフルに鳴らすテクニックは、古今東西、トップ・クラスだと思います。アルト・サックスを吹いている人なら、「フィル・ウッズみたいに吹いてみたい!」と、一度や二度は必ず思ったことがあるに違いありません。私もアルト・サックスを吹いていたときは常にあこがれていました。^^

ウッズのアルト・サウンドは、白人にしてはとても黒いフィーリングなのですが、バード直系のソニー・スティットや若い頃のジャッキー・マクリーンなどに比べると、バード・ライクな度合いは少ないように思います。実際、「私はバードをコピーしたことは無いんです。」とウッズは言ってるそうです。
また、レニー・トリスターノの元で学んだことも影響しているのかもしれません。あまりに明るくてつややかなサウンドなのでピンと来ませんが、よく聴くとトリスターノ派特有のホリゾンタル・フレーズ、リー・コニッツ的なフレージングも顔を出します。^^

このアルバムはウッズのワン・ホーン・アルバムです。ウッズの明るく伸びのあるつややかなサウンドを心行くまで楽しむことが出来ます。

"Falling in Love All Over Again"はウッズらしい甘くて暖かいバラードです。この人のバラードは陰りが少なくて、孤独感とか寂寥感は感じません。でも健康的な魅力に溢れています。

"Be My Love"はこのアルバムで私が一番好きなチューンです。アップ・テンポのスインギーな演奏ですが、上記のバラード演奏では感じないせつなさややるせなさを、この曲には感じてしまうから不思議です。4 Bars Changeの歌いっぷりはこの人ならではの輝きに満ちています。フィル・ウッズの最高の演奏をあげよ、と言われたら、私はこれを推すかな。^^

"On a Slow Boat to China"はソニー・ロリンズの名演で有名ですが、フィル・ウッズも負けていません。素晴らしい歌心で浪々と歌い上げ、「アルト・サックスはこうでなくっちゃ!」という好演です。

1955年11月25日録音
Phil Woods(as)
John Williams(p)
Teddy Kotick(b)
Nick Stabulas(ds)
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by bluenob | 2008-07-25 22:54 | Alto Sax
Ray Bryant "Ray Bryant Trio"
b0160275_2321822.jpgRay Bryantの代表作です。実にどうってことのないピアノ・トリオの演奏ですが、何回聴いても飽きない、良い味わいのアルバムです。

レイ・ブライアントは、地味で端正なピアニストだと思います。
バド・パウエルのように狂気じみた迫力もないし、ビル・エバンスのようなしたたるようなリリシズムでもないし、マル・ウォルドロンの暗い情念の噴出もないし、レッド・ガーランドのようなチャーミングなピアニストでもない。ましてやハービー・ハンコック、マッコイ・タイナー、キース・ジャレットのようなモダンなセンスは持ち合わせていません。
でも、スタンダード・ナンバーを弾かせたら、「これぞモダン・ジャズのピアノ!」という素敵な演奏をします。

1960年代にはゴスペル系・ソウル系の音に走ってクバノ・チャントなどの大ヒットを飛ばし、以来アーシーなピアニスト、というレッテルを貼られてしまったようです。実際、レイ・ブライアントのアルバムをiTunesで取り込むと分類はJazzではなくR&Bになってしまいます。オルガンのジミー・スミスも同じです。^^;一般的にはR&Bのイメージなのでしょうか。

しかし、このプレスティッジのアルバムでは本来のレイ・ブライアントを聴くことが出来ます。
俗かもしれませんが、冒頭の"Golden Earrings"が大好きです。日本人受けするマイナー・チューンですが、ビル・エバンスとはまったく違う黒いリリシズムを感じる演奏です。

1988年にこの曲をタイトルにしたアルバムがエマーシーから出ました。そこに収録されているゴールデン・イアリングスを聴くと、イントロはソロ・ピアノ風に始まるのですが、イン・テンポになってからしばらくは、このプレスティッジ版のソロとほとんど同じで驚きました。

当然、「こりゃプロのJAZZミュージシャンにあるまじき行為、こんなもんパチモンだー!」、と憤慨しました。でも何度か聴くうちに、「これもいいんじゃないか?ブライアントらしい端正なピアノだよ。許せるんじゃないか?」と思うようになってしまいました。
ちょうど、学生時代に好きだった女の子に会ったら厚化粧で幻滅したけど、話してみるとやっぱり昔の彼女の魅力はそのままで、またくどきたくなった、てな感じですね。^^;このエマーシー版、他の収録曲のできばえも良いです。

さて、このプレスティッジ版、ゴールデン・イアリングスの魅力ばかりが取り上げられてしまいがちですが、他の曲も名演です。特に"Angel Eyes"と"The Thrill Is Gone"。抑制された音で淡々と演奏してますが、黒く輝くブライアントのスタンダード演奏の魅力がたっぷりつまっています。また、Clifford Brownの名曲、"Daahoud"も端正なできばえです。

JAZZの超名盤というわけではないですが、飽きの来ないJAZZアルバムをあげよ、と言われたら真っ先に名前が挙がるのがこのアルバムです。

1957年4月5日録音
Ray Bryant (p)
Ike Isaacs (b)
Specs Wright (ds)
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by bluenob | 2008-07-24 00:00 | Piano