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カテゴリ:Trumpet( 3 )
Miles Davis "Kind Of Blue"
b0160275_208610.jpgキンモクセイが香り始めた秋の夜長に何を聴くか・・・。候補はいっぱいありますが、常に本命候補になるのが、このカインド・オブ・ブルーです。濃紺の闇の中に広がる静謐なJAZZ・・・。涼しくなった夜に聴くには最適のアルバムです。

また、これは歴史的に重要なアルバムでもあります。JAZZの歴史の中で、大きな変化がおきるときには必ず重要な役割を果たしてきたマイルス・デイヴィスが、乾坤一擲はなった名盤中の名盤です。
チャーリー・パーカーが1940年代に始めた複雑なコード分解によるバップ・イディオムのJAZZも、1950年代末になってくると煮詰まってきてしまい、より自由なアドリブ表現を求めたマイルスは、モード奏法に踏み出したのでした。

モード奏法は、複雑なコード進行にとらわれることなく、シンプルなモード(旋法)を使うことで、より大きなアドリブの可能性を切り開きました。モードそのものはグレゴリアン聖歌などの教会音楽にも使用され、その歴史は古代ギリシアまでさかのぼることのできる古い体系の音列です。近代西洋音楽ではほとんど使われなくなってしまいましたが、19世紀末になると、クラシックの作曲家たちも教会旋法の魅力ある音の響きに注目する人も出てきました。例えば、フィンランドの国民的作曲家シベリウスは、その第6交響曲でドリアン旋法を使っています。

マイルス・デイヴィスは、このカインド・オブ・ブルーに先立つ"Milestones"で、モード奏法の実験を行いましたが、このときはまだバンドメンバーでもモード奏法を完全に理解しているわけではなかったようです。事実、レッド・ガーランドやキャノンボール・アダリーあたりはツー・ファイヴ・シーケンスの尻尾の残った「モード奏法まがい」のソロに終始していました。^^
また、アルバムタイトルのマイルストーンズ以外の曲は、すべてハード・バップ・コンセプトのものであり、アルバムとしてのトーナリティにも欠けていました。

しかし、このカインド・オブ・ブルーは、アルバム全体が「モード奏法」で統一された記念すべきアルバムです。このモード奏法の完成のためには、ビル・エバンスの協力が不可欠でした。
当時のマイルス・デイヴィス・セクステットのレギュラー・ピアニストはウィントン・ケリーだったのですが、基本的にバッパーであるケリーのピアノでは「モード奏法」にならず、マイルスは以前在籍していたビル・エバンスを呼び戻したのです。

第一曲目の"So What"、ピアノとベースによるイントロの響きがとても新鮮です。それまでのバップ・イディオムにまみれたJAZZとは全く違う響きです。印象的なポール・チェンバースのベース・リフでテーマが演奏され、そこに管楽器とエバンスがかぶってくると、シンプルなんですが、めちゃくちゃクールでかっこいいんですね。
曲自体はシンプルなAABA、AパートはDドリアン一発、BパートはE♭ドリアン一発というシンプルさです。しかし、このシンプルさは「静謐の美」につながっています。また、AからBに移るとき、またBからAに戻るときの転調感が気持ちよいです。ちょうど見る角度を変えると宝石の輝きが変わるような感じです。

まずマイルスがオープン・トランペットでソロをとります。必要最低限の音しか使わないのですが、これがまた実に渋くてかっこいいんですね。(ボキャ貧ですなあ。^^)
次のソロはコルトレーン、彼もマイルス的にミニマルなアドリブをスタートさせますが、やがて熱く燃えていきます。キャノンボール・アダリーのソロは音数が多くて、まだコード奏法的な匂いが紛々としてますが、マイルスとコルトレーンにインスパイアされたのか、なかなか良いです。圧巻は、ビル・エバンスのソロです。ほとんどシングル・トーンを弾かない、朦朧としたソロです。バップ・イディオムでは絶対演奏できないソロでしょう。

次の曲、フレディ・フリーローダーでは、ピアニストがウィントン・ケリーに代わります。12小節のブルースという伝統的なフォーマットなので、モーダルな雰囲気はあるのですが、よりレイドバックしたブルージーな雰囲気が支配的になります。

3曲目の"Blue In Green"は、ビル・エバンスが提供した曲で、純粋なモード奏法ではありませんが、カインド・オブ・ブルー同様、「静謐の美」に満ちた素晴らしいバラードです。ミュート・トランペットによるマイルスのソロのデリカシーも素晴らしいし、コルトレーンのビターなソロも新鮮です。作曲者ビル・エバンスのソロも、まさしく「緑の中の青」という幽玄な色彩感に満ちた、イマジネイティブなものです。

4曲目の"All Blues"は、モード奏法時代に大流行することになる6/8拍子によるブルースです。シンプルなコードを延々と繰り返すうちに軽い催眠効果をもたらしますが、これが4ビートと違って6/8拍子のなせる妖しい魅力です。コルトレーンが"My Favorite Things"をやった遠因は、この曲辺りにあるのかもしれません。

5曲目の"Flamenco Sketches"も、ビル・エバンスのアイディアに基づいた素晴らしいバラード曲で、"Everybody digs Bill Evans"に収録された"Peace Piece" がその原型です。ここではスパニッシュ・モードを使いながら各人が瞑想的なソロを繰り広げてくれます。コルトレーンのソロは、後の名作”Ballads"に通じるシンプルでメロディアスなものです。キャノンボールは相変わらず音数が多すぎて一人浮いているんですが、まあ悪くはありません。なんと言ってもこれが彼の持ち味ですから・・・。^^エバンスはミニマルな音でのソロに徹するのですが、その美しさ、妖しさは、なんと言ったらいいのか・・・。やがて、マイルスによるミュート・ソロで、静かに幕を引いていきます。

このアルバム、聴いていてだれるということがありません。また飽きるということもありません。今まで何百回となく聴いているはずなんですが、聴くたびに満足感を与えてくれる稀有なアルバムです。

YouTubeに、"So What"の音源がありますので、ご興味がありましたら、下記のリンクをクリックしてみてください。
So What by.Miles Davis

1959年3月2日録音
Miles Davis (tp)
Cannonball Adderley (as)
John Coltrane (ts)
Bill Evans (p)
Paul Chambers (b)
Jimmy Cobb (d)
Wynton Kelly (p)
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by bluenob | 2008-10-08 21:50 | Trumpet
Blue Mitchell "Blue's Moods"
b0160275_20282999.jpgトランペッター、ブルー・ミッチェルの代表作です。

Richard Allen (Blue) Mitchellは、フロリダのマイアミ出身で、高校時代からトランペットの演奏を始め、そこのころにこの"Blue"というニックネームが付いたそうです。
同じフロリダ出身のアルト・サックス奏者、ジュリアン・キャノンボール・アダリーに見出され、当時キャノンボールが在籍していたリバーサイド・レーベルでデビューしました。
キャノンボールもそうですが、フロリダ生まれのJAZZプレーヤーって、基本的に根アカな人が多いような気がします。キャノンボールもブルー・ミッチェルも、その根アカが時々ブルーな表情を帯びるときがあって、そこがたまらなく魅力的なところでもあります。

これはブルー・ミッチェルリバーサイドでの第5作目のアルバムで、ワン・ホーンでスタンダードなJAZZを吹きまくっています。
学生時代にJAZZバンドをやっているとき、とてもよく聴いたアルバムで、特に第1曲目の"I'll Close My Eyes"が大好きでした。ウィントン・ケリーの弾むようなピアノのイントロから、哀愁を帯びた美しいブルー・ミッチェルのトランペットが聞こえてくると、それだけで幸せな気分になります。

ところで、JAZZのアドリブの練習は、たいていFのブルースから始まり、それがある程度こなせるようになると、「歌もの」と言われる曲を練習し始めます。

この曲は、「歌もの」の中でも特にアドリブのしやすいコード進行を持っているため、初心者のときによく練習しました。有名なスタンダード・ナンバー、"There will never be another you"もほとんど同じコード進行で、"I'll Close My Eyes"が演奏できると、同時に"There will never be another you"もアドリブできるようになります。^^

このブルー・ミッチェルのアドリブも、歌えるぐらいコピーしました。ただ、トランペットで吹いてかっこいいフレーズと、サックスで吹いてかっこいいフレーズは違うので、直接使うことはありませんでしたが。^^それこそ耳にたこができるほど聴いたはずなのに、ブルー・ミッチェルのフレーズ、いまだに飽きることがありません。

ブルー・ミッチェルのトランペットの魅力は、「中庸の魅力」だと思います。驚くようなテクニックやハイノートをヒットすることはほとんどなく、中音域を使った美しいメロディー・ラインで淡々とアドリブを繰り広げるのですが、そのシンプルなところが実に味わい深いトランペッターだと思います。

このアルバムの吹き込まれた1960年というと、マイルス・デイヴィスが"Kind Of Blue"を吹き込んでJAZZのイディオムを大きく変えてしまった直後なんですが、そんなことは一切関係なく、ブルー・ミッチェルは、マイ・ペースで美しいメロディーで歌っています。
"I'll Close My Eyes"の良さは別格としても、他の曲も聴き所が多いです。しかし、この人の魅力は「歌もの」にあり、"When I Fall In Love"や"I Wish I Knew"は素晴らしい出来です。

また、サイドを固めるウィントン・ケリーのピアノ、サム・ジョーンズのベースも、趣味の良い黒いフィーリングでブルー・ミッチェルを盛り立てています。こんなリズム陣をバックにワン・ホーンで吹いたブルー・ミッチェル、さぞかし気持ちが良かったに違いありません。^^

1960年8月24日~25日録音
Richard "Blue" Mitchell (tp)
Winton Kelly (p)
Sam Jones (b)
Roy Brooks (ds)
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by bluenob | 2008-07-26 21:17 | Trumpet
Miles Davis "Workin'"
b0160275_22175384.jpgモダン・ジャズ・トランペットの巨匠であり、モダン・ジャズの歴史の転換点では必ず重要な影響をおよぼした巨人、マイルス・デイヴィスの作品です。いわゆる「プレスティッジ・マラソン・セッション4部作」の一枚で、四部作の中では三番目にリリースされたアルバムです。

マイルスがプレスティッジを去ってコロンビアに移籍する際、プレスティッジとの契約上、4枚のアルバムを製作する必要がありました。
マイルスは、この4枚分の25曲を、1956年の5月11日と10月26日のたった二日間で録音してしまいました。メンバーは第1次マイルス・デイヴィス・クインテットの黄金メンバー、ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズです。

普通、こういう短期間で作ったアルバムというのは「粗製濫造」、「味噌もクソも一緒くた」というネガティブな言葉がついて回るのですが、さすがは天才マイルス、どのアルバムも素晴らしい演奏です。しかもほとんどの曲がワン・テイク録音されたというのが驚きです。いかに当時のマイルス・デイヴィス・クインテットの演奏が卓越していたか、よくわかります。

また、この4枚のアルバム、"Cookin'"、"Relaxin'"、"Workin'"、"Steamin'"、それぞれジャケット・デザインの傾向がまったく違うのも面白いです。
"Cookin'"が一番アーティスティック、次に"Relaxin'"が面白いかな。"Steamin'"は煙草に火をつけるマイルスの写真で、これはこれでかっこいいです。ところが、この"Workin'"は実にしょうもないジャケット・デザインです。ロードローラーが道路工事をしているところを背景に、煙草を一服しているマイルスが写っています。まあ、味があるといえばあるのかもしれませんが。^^;

ジャケット・デザインはさておき、演奏は素晴らしいです。
特にバラードの"It Never Entered My Mind"と"In Your Own Sweet Way"で繰り広げられるマイルスのミュート・プレイは、「卵の殻の上を歩く男」と形容されたマイルスの真骨頂です。特に "It Never Entered My Mind"のイントロ、レッド・ガーランドのイントロからマイルスのミュートが入ってくるあたり、何度聴いてもぞくぞくしてしまいます。
また、その後ライブでなんべんも取り上げられる"Four"も、オープンでバリバリ吹いており、ハード・バップの醍醐味を味わえます。

また5月の録音では、コルトレーンのプレイはまだキレも悪く迷いの多い感じなのですが、10月の録音(このアルバムではHalf Nelson)になると画期的によくなります。コルトレーンの成長を知るためにも、このプレスティッジのマラソン・セッション四部作はとても貴重だと思います。

この"Workin'"、四部作の中では一番地味なアルバムかもしれませんが、暖かくて心に残るアルバムに仕上がっていると思います。

1956年5月11日、10月26日録音
Miles Davis (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
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by bluenob | 2008-07-21 23:11 | Trumpet