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カテゴリ:Piano( 11 )
Mccoy Tyner "The Real Mccoy"
b0160275_20263368.jpg史上最強の瞑想宗教系&体育会系JAZZコンボ、ジョン・コルトレーン・カルテットのピアニスト、マッコイ・タイナーの代表的リーダー作です。

1960年代中期にコルトレーン・カルテットを支えたマッコイですが、トレーンのフリー・ジャズへの傾斜が高まるに連れてついていけなくなり、1965年11月録音の"Mediation"を最後にトレーンと袂を分かつことになってしまいました。まあアセンションなどで聴かれるマッコイ、確かに嫌々やってる、って感じがしないでもありませんでしたから。

その翌年である1966年は、スタンリー・タレンタインやドナルド・バードと言った、よりアーシーでファンキー系のミュージシャンと付き合いが多かったようです。トレーンの"Assencion"などのフリージャズで神経が参っていた反動なのかもしれません。まあ、私の憶測です。^^

1967年になって、マッコイはブルーノートと契約しました。ファンキー系ミュージシャンたちとのセッションでリハビリを完了した(^^;)マッコイは、コルトレーン・カルテットを通じて得たものの総決算として、このアルバムを録音することになりました。

「これこそ、俺のやりたい音楽だ、本当の俺"The Real Mccoy"を聴いてくれ!」という気合で作られたこのアルバム、素晴らしい出来栄えです。
ちなみに、"He is The Real Mccoy"というと「あいつはホンモノだぜ!」って意味になります。研究社の新英和中辞典をひくと、こんな感じです。「[the real 〜 で] 《口語》 (高品質の)本物,逸品; (亜流でない)本物の人,正真正銘の人.」
ブルーノートも、マッコイを売り出すために、なかなか洒落たタイトルを考えたもんだと思います。

このアルバム、同じくコルトレーン・カルテットを退いたエルヴィン・ジョーンズがドラムです。ベースは当時マイルス・コンボのベーシストだったロン・カーター、そしてテナー・サックスは破壊力十分のジョー・ヘンダーソンです。凄いメンバーです。

これにマッコイが加わると、「コルトレーン・カルテットがフリーにいかなかったらどうなってたか?」というパラレル・ワールド的な音楽になってきます。^^
すなわち、フリーではない、ストレート・アヘッドなジャズの最高進化系の音が出てくるのです。
1968年になると、JAZZは電化されていきますが、この1967年という年は、電化される前の最高のJAZZがたくさん録音された年だと思います。マイルス・デイヴィスの"Nefertiti"もこの年の録音です。

第1曲目の"Passion Dance"、ジョーヘンとマッコイのユニゾンで奏される力強いテーマがそもそもかっこいいです。続くマッコイのソロも素晴らしい。強力な左手による低弦パンチ、右手のアウト・スケールするシングル・トーン、それこそ「道端に落ちていてもわかるぐらい明白な」、マッコイの音です。
またジョーヘンのソロも、コルトレーンを基本にしてオーバー・トーンや変え指による音色調整も加え、強力にドライブします。
また、ロン・カーターのベース・ラインも、エルヴィンのシンバル・レガートも、強力にフロントをプッシュします。
曲全体を通じて、「フリーじゃなくたってクリエイティブなJAZZはできるんだぜ!」というすがすがしくなるぐらい旗色鮮明な主張が伝わってきます。

2曲目の "Contemplation"、スロー・テンポで瞑想的な雰囲気の曲ですが、テーマ後のジョーヘンのアドリブも熱いこと熱いこと。^^マッコイも音数は多いですが、決して軽薄にならない迫力満点のソロです。また、バックのエルヴィンのドラムス、何度聴いてもすごいわ、って感じです。

"Four by Five"は、ジョーヘンの作りそうな感じのリフで始まるアップテンポのナンバーです。ジョーヘンのフラジオを交えたソロ、この時代から現代に至るまで、定番となったテナー・ソロだと思います。マッコイの強力な左手がここでも冴え渡っています。地味ですが、ロン・カーターの4ビート・ランニングもモダンです。

4曲目の"Search for Peace"は、コルトレーン・スタイルによるバラードです。とは言うものの、ジョーヘンの資質がトレーンべったりではないので、よりアーシーな雰囲気感じさせる音のバラードになっています。

5曲めの"Blues on the Corner"、このリフもジョーヘンの"Isotope"を思わせるユーモラスでかっこいいブルースになっています。マッコイのソロも、ジョーヘンのソロも、モーダル・ブルースの定番的表現です。

このリアル・マッコイで演奏されているJAZZ、通称「体育会系JAZZ」です。昨今の「お洒落な」JAZZブームでファンになった方々とっては刺激が強すぎるかもしれませんが、私はこの汗をかいて疾走するJAZZ、いまだに大好きです。

1967年4月21日録音
Joe Henderson (ts)
McCoy Tyner (p)
Ron Carter (b)
Elvin Jones (d)
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by bluenob | 2008-11-01 21:40 | Piano
Hank Jones "'Round Midnight"
b0160275_20273728.jpg秋の夜長には、こんなけれんみのないソロ・ピアノがよく似合います。ピアノの職人、ハンク・ジョーンズが2004年2月に録音したアルバムです。

ハンク・ジョーンズは1918年生まれですから、86歳の時のレコーディングです。しかし年を感じさせない実に瑞々しいピアノソロで、心底驚きました。この人に関しては老化、という言葉は無縁なのかもしれません。今年(2008年)にも来日してますから、90歳を超えて現役ということになります。

ハンク・ジョーンズの演奏歴は古く、チャーリー・パーカーとも一緒に演奏しています。バードと一緒にやったことのある人でまだ存命中なのは、ドラムスのロイ・ヘインズぐらいではないでしょうか。しかも生きているだけではなく、いまだにこんな素晴らしい音楽を演奏しているわけですから、脱帽モノです。

ハンク・ジョーンズ、脇役としての演奏が実に渋くてたまりませんでした。とにかく汚い音を弾かないのです。バードの"Now's The Time"、ミルト・ジャクソンの"Opus De Jazz"、ポール・チェンバースの"Bass On Top"、キャノンボール・アダリーの"Somethin' Else"で、その好演を聞くことができます。どれも主役を上手に引き立てています。

また、自らが主役となっては、グレート・ジャズ・トリオで素晴らしい演奏を聴かせてくれました。マイルス・デイビスのバンドに在籍していたロン・カーターやトニー・ウィリアムスとの組合せ、「こりゃあ異種格闘技だなあ・・・」なんて思ったものですが、ハンク・ジョーンズは若い彼らに負けない若々しい感覚で丁々発止のプレーを聴かせてくれ、大いに驚いたものです。

さて、このアルバム、全編有名スタンダード曲のソロです。ハンク・ジョーンズの端正で上品なピアノを楽しむには絶好の名盤です。ハンク・ジョーンズは1000曲以上のスタンダード・ナンバーを暗譜しているそうです。JAZZのスタンダード曲集で俗称「1001」という譜面がありますが、彼の場合、「生きている1001」ということができそうです。

1曲目の"My Romance"の音が出てきたとき、思わず耳を疑いました。86歳のおじいさんが弾いてるとは思えないフレッシュな音だったからです。この曲は、ビル・エバンスの"Waltz For Debby"での演奏が定番ですが、ハンク・ジョーンズの演奏もビル・エバンスに勝るとも劣らない素晴らしい演奏です。時々ハンクのうなり声がうすく聞こえますが、キース・ジャレットのそれに比べると実にかわいいもので、より音楽的です。^^

"Someday My Prince Will Come"もビル・エバンスのレパートリーですが、ハンク・ジョーンズが弾くと、甘い中にもより枯れた味わいで、これもたまりません。

またバードの愛奏曲だった"Bird Of Paradise"がそのコード進行を使ったことで有名なスタンダード、"All The Things You Are"も素晴らしい出来栄えです。この曲特有のせつなくなるような転調が実に丁寧にメロディックに演奏されています。

セロニアス・モンクの"'Round Midnight"、ソロ・ピアノならではの緩急自在なテンポでしっとりと聴かせてくれます。

"It's A Sin To Tell A Lie"も名演です。甘いコード進行の曲ですが、あえてテンション・ノートを上手に使い、ビター・スイートな演奏になってます。

このアルバムの最後は、デューク・エリントンの名曲、"In A Sentimental Mood"です。メランコリックかつダイナミックなソロが絶品です。

この他にも、"Someone To Watch Over Me", "It's The Talk Of The Town", "Willow Weep For Me", "The Day Of Wine And Roses", "Speak Low", "Tea For Two", "For Yoy"が収録されており、どれをとってもハンク・ジョーンズならではの解釈で、魅力的ななスタンダード演奏になっています。

弟のサッド・ジョーンズ、エルヴィン・ジョーンズはすでに他界してしまいましたが、一番年長なハンク・ジョーンズにはずっと長生きして、素晴らしいアルバムを残していって欲しいものだと思います。

なお、このアルバムは、HMVのウェブサイトで試聴できます。

2006年2月4日&5日録音
Hank Jones (p)
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by bluenob | 2008-10-29 20:27 | Piano
Sonny Clark "Cool Struttin'"
b0160275_20304281.jpg秋が深まってくると、必ず聴きたくなるアルバム、「クール・ストラッティン」です。J
AZZを聴き始めた頃から好きなアルバムで、それこそ溝が擦り切れるまで聴いたアルバムです。
フレーズのひとつひとつまでカラオケで歌えるぐらい聴きましたから、ええ加減聴き飽きててもおかしくないのですが、それでも秋から冬にかけて、ちょっと首筋が寒くなってきたなあ、という季節になると、「今宵はクール・ストラッティンを聴きながら一杯やるか・・・」と思ってしまいます。^^

このアルバムは、お薬のやりすぎで31歳という若さで夭折したピアニスト、ソニー・クラークの代表作です。ブルージーでタッチの重い、「これぞJAZZピアノ!」というピアニストでした。
トミー・フラナガン、レッド・ガーランド、ウィントン・ケリーというこの時代の花形ピアニストたちは、よく「転がるようなシングル・トーンの魅力」と言われることが多いですが、クラークのピアノは、もっとタメの効いた、ダークなトーンが魅力です。数多い「バド・パウエル・スクール」のピアニストの中でも、バドの妖し輝く黒いタッチを最も濃厚に継承したピアニストではないでしょうか。

また、このアルバムは、サイドメンも素晴らしい面子が集まっています。フロントにアート・ファーマー(tp)とジャッキー・マクリーン(as)、そしてベースにポールチェンバース、ドラムスがフィリー・ジョー・ジョーンズです。加えてパウエル直系のソニー・クラークがリーダーですから、どうやったってグルーヴィなアルバムしかできっこありません。^^

また、リード・マイルスがデザインしたジャケットも出色の出来栄えです。タイト・スカートから覗くこましゃくれた足取り、足フェチの人が見たら思わずクラッとなりそうなデザインで、ブルーノートのアルバムらしいジャジーな雰囲気に溢れています。いつか、誰かに「足タレ」になってもらって、こんな写真を撮ってみたいなあ。^^ちなみに、このアルバム写真の足タレ、ソニー・クラークの奥さんだ、という説と、デザイナーのリード・マイルスのアシスタントだ、という説があるようです。

LPで言うと、かつてのA面が大好きでした。2曲ともクラークのオリジナル作品です。スロー・ブルース"Cool Struttin'"、ブルースのエッセンスの詰まった好演です。ソニー・クラークの重く引きずるようなタッチと黒光りする音色、アート・ファーマーのクールで知的なソロ、マクリーンのイモイモしくもブルージーなフレーズと後ろに倒れこむようなレイドバックした感覚、チェンバースの濃厚なアルコ弾きソロ、どれも大好きです。

2曲目の"Blue Minor"は、私がこのアルバムで一番好きな演奏です。アルト・サックスとトランペットのアンサンブルは、テナーとペットのアンサンブルより一段と憂いに満ちたフィーリングになるような気がします。マクリーンの舌足らずなソロが「青春の痛み」という感じで実にいいです。クラークのパウエル・ライクな黒くてドライなソロも素晴らしいです。

かつてのB面は、マイルスの"Sippin' At Bells"です。どってことないハード・バップですが、クラークのソロが実にグルーヴィで良い味を出してます。

4曲目の"Deep Night"、テーマからピアノ・ソロまでは、ピアノ・トリオだけの演奏を聴くことができます。このトリオ・フォーマットで聴くと、バド・パウエルをモダンにしてファンキーにしたクラークの良さがよく出ているように思います。
その後に出てくるアート・ファーマーのソロも大好きです。マイルス・デイヴィスほどクールではなく、ドナルド・バードほど暑苦しくなく、中庸の魅力です。
またマクリーンのソロも、ハスキーなトーンでブルージーに歌いまくっており、ピッチが少々狂っていても気になりません。
フィリー・ジョー・ジョーンズのタイトで黒く締まったソロが終わり、ピアノ・トリオでのテーマが演奏されてアルバムの幕を閉じると、また頭から聴きたくなってしまいます。

このアルバムは、かつてのJAZZ喫茶で一番リクエストが多かった名盤だそうです。でも、そんなに人気があるのは日本だけのようです。夭折したミュージシャンを尊ぶ風土もありますし、このアルバムに流れるファンキーだけどブルーな雰囲気が、日本人の感性をいたく刺激するからかもしれません。

でも名盤かとあらためて聞かれると・・・。うーん、どうなんでしょう。演奏自体はもっと優れたアルバムはいっぱいありますから。
でも、このアルバムは「良い・悪い」を超越したところにあるアルバムではないか、と思います。判断基準は、「好き・嫌い」でいいんじゃないでしょうか。人がなんと言おうと、このスモーキーな雰囲気は大好きなんだもん、って感じです。あはははは。^^

JAZZ喫茶で、「クール・ストラッティン、お願いします。」というリクエストが入ると、「おー、JAZZを効き始めたばかりのトーシロだな、こりゃ・・・」と思うくせに、その一方、「早くかけてくれよ、クール・ストラッティン。」と、心待ちにしている自分もいたりする、そんなアルバムです。^^

1958年1月5日録音
Art Farmer (tp)
Jackie McLean (as)
Sonny Clark (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
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by bluenob | 2008-10-28 21:27 | Piano
Bill Evans "Explorations"
b0160275_21391161.jpg数日前に"Portrait In Jazz"のエントリーを書いたときに、「ビル・エバンスこそ我が最愛のピアニスト」と書きましたが、そのエバンスの数ある名盤の中でも、私の一番の愛聴盤が、このエクスプロレーションズです。

ビル・エバンス、スコット・ラファロ、ポール・モチアンの3人によるJAZZ史上に燦然と輝くピアノ・トリオの残したアルバムは4枚しかなく、その中で以前ご紹介したポートレート・イン・ジャズとこのエクスプロレーションの2枚がスタジオ録音、残りの2枚はニューヨークの名門ライブハウス、ビレッジ・バンガードでのライブ録音です。ライブにはライブの良さがあるのですが、このトリオの場合、私はスタジオ録音の2枚がなぜか好きです。

このトリオの最初のアルバム、ポートレート・イン・ジャズから1年2ヶ月後に吹き込まれたエクスプロレーションズ、さらに熟成がすすんだ素晴らしいアルバムです。"Explorations"「探求」と名づけられたタイトルからもわかるように、有機的な音楽ユニットとしてのピアノ・トリオが、より深く掘り下げられた作品になっていると思います。

私がこのアルバムを偏愛する理由は、曲の並び方にあります。名曲の名演が、実に気持ちよくならんでいるのです。
1. Israel
2. Haunted Heart
3. Beautiful Love
4. Elsa
5. Nardis
6. How Deep Is the Ocean?
7. I Wish I Knew
8. Sweet and Lovely

1曲目のイスラエル、ジョニー・キャリシ作曲のマイナー・ブルースで、多くのプレイヤーにカバーされていますが、私はこのエバンス・トリオの演奏が最高だと思っています。
YouTubeにも、1965年のロンドン公演における"Israel"がありました。ただ、オリジナルのこのCDの演奏に比べて不自然にテンポが早いし、エバンスのタッチも荒いです。ベースはチャック・イスラエル、ドラムスはラリー・バンカーですので、ラファロ・モチアンに比べると熟成度が足りません。でも、「へそを見ながらピアノを弾くエバンスの勇姿」を見ることができますので、ご興味があれば覗いてみてください。^^

このアルバム、マイナー曲は端正でスインギーな演奏になっており、"Israerl"だけでなく、"Beautiful Love"、"Nardis"、"How Deep Is the Ocean?"も名演です。

また、バラードの"Haunted Heart"、”Elsa"では、耽美的なエバンスのピアノと、テクニック偏重に陥らず音楽性重視のスコット・ラファロのベースの重低音が印象的です。

特にラファロのベース、この当時の録音としては最高の音質だと思います。やわなスピーカーではびびってしまいベース音が再生できません。やるなあ、リバーサイド。^^

ところで、"Nardis"は一般的にはマイルス・デイヴィスの作曲ということになっていますが、このトリオのドラマー、ポール・モチアンによれば、「あれは本当はビルが書いた曲なんだよ。」とのことです。
確かにマイルスの作曲傾向とはかなり異なっています。ポール・モチアンの証言を聴かなくても、「こりゃエバンスの作曲じゃないのかな・・・」と疑いたくなってしまうぐらい、エバンスのにおいのする曲です。
おそらく、"Blue In Green"同様、当時のボスだったマイルスに強奪されてしまった曲なのでしょう。悪いやつだなあ、マイルス。^^

なお、CDではボーナストラックが入っていて、"Beautiful Love"のオルタネイト・トラック、そして"The Boy Next Door"が追加されています。
”Beautiful Love"はこのオルタネイトの方が先に録音されたもので、特に問題はなかったにもかかわらず、最後まで録音がすんだ後、すごくよく出来上がって気持ちが良かったので、「もういっぺんやってみよか!」とやってみたら、テーマを崩してしまったほうがずっと良かったので、Take2をマスター・テイクにしたんだそうです。
また、"The Boy Next Door"も後日、エバンスが好んで取り上げるレパートリーになりましたが、確かに他の曲に比べると少々凡庸な出来で、LPに入らなかった理由がわかります。^^

なお、このアルバムはCDとLPと持っていますが、LPの方は私の宝物です。1976年の1月にビル・エバンスが来日した折に、楽屋まで押しかけて行き、ビルにサインをしてもらったものです。このサイン、私の写真ブログに紹介してあります。まじめなビル・エバンスらしい、端正なサインでした。

1961年2月2日録音
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)
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by bluenob | 2008-10-10 22:32 | Piano
Keith Jarrett "The Köln Concert"
b0160275_20205264.jpgこのモノクロームのジャケットのアルバムを始めて聴いたのは、高校を卒業して浪人していたときだと思います。
行きつけのJAZZ喫茶でコーヒーを飲んでいたとき、突然、鮮烈なピアノの音が耳に飛び込んできました。それまでかかっていたのは、普通のハード・バップだったと思いますが、最初の4小節で、まわりの空気がそれまでの日常から非日常に変化したようなショックを覚えました。ピアノの音って、こんなに透明感があって力強いものだったんだ・・・。唖然としてしまいました。

早速LP台に乗っていたジャケットを見に行きました。キース・ジャレットの新譜でした。JAZZのアルバムとしては異例な真っ白なジャケットで、ケルン・コンサートと書いてありました。スイング・ジャーナルで広告を見たことはあるのですが、こんな純度の高いアルバムだとは想像もしませんでした。

それまでキース・ジャレットというイメージは、電化マイルスバンドのキーボード・プレイヤーという認識でした。フェンダー・ローズや電気オルガンの演奏者としてはなかなかいけてるなあ、ぐらいにしか思っていなかったのに、このアルバムでイメージが全く変わってしまいました。あるときは優しく、あるときは力強く、フルコンをその限界まで鳴らしています。

実はキースは、エレクトリックは好きでなかったようです。尊敬するマイルスなので、しょうがないのでいやいや弾いていた、というのが真相のようです。いやいや弾いていたわりには、マイルスの評価は高くて、「俺のバンドで最高のピアニストはキースだった・・・」ということらしいのですが。^^

JAZZジャイアントたち、例えばチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどの新譜はリアルで聴いたことはなく、初めて聴いた人たちがどの程度の感動だったのかは想像するしかないのですが、キースのケルン・コンサートはリアルタイムで新譜を聴くことができて本当にラッキーだったと思います。なんの予備情報もないまま、あるがままに感動させてもらいました。

アルバムの頭から最後まで、けれんもなにもないピアノソロです。一切の楽譜も用意せず、ステージに上がり、グランド・ピアノの前に座る・・・。両手をキーボードの上にかざし、おもむろにインスピレーションだけで音を造っていく・・・。インプロビゼーションの極致です。当時は、これはJAZZではないとか、いろいろ言われたようですが、この音を聴いてしまうと、ジャンルわけなどむなしくなってしまいます。

この頃のキースのソロ・コンサート、1曲が20分以上にわたるものも少なくありません。でも、どれを聴いてもひとつとして同じ演奏はなく、ひとつとして緊張感を失ったものもないのです。

キース・ジャレット、ゲーリー・ピーコック、ジャック・デ・ジョネットとのトリオによる"Standards"も素晴らしいと思いますが、衝撃度で言えば、ケルン・コンサートを始めて聴いたときには及びません。また、キース特有のうなり声も、最近のアルバムに比べると控えめなので、聴きやすいかもしれません。^^

YouTubeで、このケルン・コンサートの#1を、最初の10分間だけ聴くことができます。下記のリンクをクリックしてみてください。

Keith Jarrett - The Köln Concert (Part 1) January 24, 1975

1975年1月24日録音
Keith Jarrett (p)
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by bluenob | 2008-10-09 21:06 | Piano
Bill Evans "Portrait In Jazz"
b0160275_19353672.jpg今年もキンモクセイの咲く季節になってきました。この季節になると、エバンスのポートレート・イン・ジャズを聴きたくなります。「枯葉」-"Autumn Leaves"が入っているからなんですが、まあ実際には真夏であれ真冬であれ、季節を問わずよく聴くアルバムでもあります。^^

モダン・ジャズのピアニストの中で、一番好きなピアニストは誰か?と聞かれたら、間髪をおかず「ビル・エバンス!」と答える私ですが、このアルバムは私が一番最初に買ったビル・エバンスのアルバムです。高校生の頃ですから、もう35年も前の話になります。当時はLPですから、針をレコードに下ろした瞬間、研ぎ澄まされたピアノの音色にノックアウトされてしまいました。

エバンスの最高傑作は何か?と聞かれたら、これは間髪をおかずに答えるのはとても難しいです。なぜなら、駄作をほとんど出さなかったピアニストだからです。でも強いてあげるとするなら、リバーサイドで吹き込まれた4部作でしょうか。

1959年12月 "Portrait In Jazz"
1961年2月 "Explorations"
1961年6月 "Waltz For Debby"および"Sunday At The Village Vanguard"

これらの4枚は、ビル・エバンスのピアノ、スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスというJピアノ・トリオで録音されました。
1961年6月の2枚は、名門ライブスポット、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音で、JAZZらしい一発勝負という点ではよりスリルがあるのですが、スタジオ録音の"Portrait In Jazz"と"Explorations"には、より端正な魅力を感じます。

この4部作の中で一番最初に録音されたのがこのアルバム、ポートレート・イン・ジャズですが、すでに素晴らしい完成度です。
それまでのJAZZのピアノ・トリオは、主役はなんと言ってもピアノで、ベースとドラムスは脇役に甘んじるという図式だったのですが、このポートレート・イン・ジャズで展開されている音楽は、ピアノ・ベース・ドラムスが対等な立場で演奏しています。いわゆるインタープレイ、というものです。

特に圧倒的なのが"Autumn Leaves"で、ベースのスコット・ラファロのマスター・ピースとも言うべき演奏になっています。
ラファロはテーマからしていきなり意表をつく2拍三連でビートを刻み始めます。またテーマの後のソロ・オーダー、普通はピアニストが先発することが多いと思いますが、いきなり緊張感溢れるラファロのソロになります。エバンスとの対位法的なアプローチも痛快で、お互いに火花を散らすような挑発的なフレーズでいどみかけます。この演奏でラファロはジャズ・ベースの可能性を今までになく大きく広げてしまったと思います。
また、ラファロはコンベンショナルな4ビートのバッキングをやらせてもすごいです。ベース・ランニングの音の選び方の趣味のよさは抜群ですし、そもそもベースの音自体が太くて深くてよく伸びる、実に気持ちの良い音なのです。
もちろん、エバンスのピアノも、文句のつけようがありません。モーリス・ラヴェルやクロード・ドビュッシーなどの印象派のピアノ曲を思わせる微妙なハーモニー、メリハリの効いたピアノ・タッチと抜群のペダルコントロール、コンビネーション・ディミニッシュ・スケールで駆け上がる早いパッセージ、あらゆるテクニックを駆使してピアノから魅力的な音を搾り出しています。この新鮮な響きは、バップ・イディオムでしか演奏できない数多のピアニストを一気に時代遅れにしてしまいました。
この"Autumn Leaves"、JAZZの大スタンダード・ナンバーですが、その決定打とも言うべき演奏が、このアルバムにおける演奏ではないでしょうか。

その他の曲も素晴らしい出来栄えです。印象派的な響きのテーマ演奏で始まる"Witchcraft"、粒立ちの良いシングルトーンが気持ちの良い"When I Fall In Love"、明るくてスインギーな"Peri's Scope"、ポール・モチアンのブラシとスティックの変化のつけ方が面白い"What Is This Thing Called Love"、朧なハーモニーの美しいバラード"Spring Is Here"、甘く上品なワルツ”Someday My Prince Will Come"・・・。どの曲も、JAZZらしい緊張感に満ちた演奏です。

このアルバムの最後を飾るのは、マイルス・デイヴィスのカインド・オブ・ブルーでも演奏された素晴らしいバラード、"Blue In Green"です。
この瞑想的なムードに溢れたモーダルなバラード、作曲者はマイルス・デイヴィスとなっていますが、良くてマイルスとエバンスの共同作品、本当はエバンス単独の作品ではないでしょうか。
カインド・オブ・ブルーでの演奏も逸品中の逸品ですが、このトリオによる演奏も最上の出来栄えです。演奏が終わったあとも、しばらくは目を閉じて、その余韻に浸っていたくなるほどです。

なお、YouTubeに、このアルバムの"Come Rain Or Come Shine"および"Autumun Leaves"がアップされていましたので、下記にリンクを貼っておきます。
Bill Evans Trio - Come Rain or Come Shine / Autumn Leaves


1959年12月28日録音
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)
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by bluenob | 2008-10-07 21:00 | Piano
George Wallington "The New York Scene"
b0160275_2192348.jpg白人バップ・ピアニスト、ジョージ・ウォーリントンがプレスティッジに残した名盤です。
このアルバム、私がお金を出して買った始めてのジャズ・アルバムでした。

中学生の頃は、レッド・ゼップリン、クリーム、ヤードバーズといったブリティッシュ・ハード・ロックばかり聴いていました。しかし、高校生になって吹奏楽部に入部して、アルト・サックスを吹き始めて、とたんにJAZZに目覚めてしまいました。

私が高校1年生だった1972年に、JAZZ廉価版シリーズというのが各レコード会社から発売されました。そのきっかけになったのが、ビクターから復刻したプレスティッジの1,100円シリーズです。

当時、新譜アルバムは2,200円ぐらいでしたから、このシリーズは半額です。この値段ですと、とぼしい高校生の小遣いでもなんとかなります。このシリーズ、全部で50枚ぐらいリリースされており、スイング・ジャーナルの評論を検討して何枚も購入し、それらはいまだに私の愛聴盤になっています。

いずれにせよ、最初に買った1枚は、このThe New York Sceneでした。おそらく編成を見て、アルト・サックスが入ったクインテットだったから興味を持ったのでしょう。A面もB面もそれこそ擦り切れるぐらいよく聴きました。しかし、このアルバムが気に入ったから、JAZZにのめりこんでいったわけで、この最初の1枚が気に入らなかったら、今頃JAZZは聞いてなかったかもしれません。^^;

このアルバムのリーダーは、ジョージ・ウォーリントンです。ウォーリントンは、1943年から1953年にかけて、Dizzy GillespieやCharlie Parkerなどと演奏をしていた長いキャリアを持つ白人バップ・ピアニストです。彼はバップ・チューンの名曲、"Lemon Drop"や "Godchild"の作曲者でもあります。
これという強い個性はないのですが、破綻のない端正なピアノを弾きます。残念ながら1960年に家業を継ぐために音楽から足を洗ってしまいました。(その後1980年代に復活しました。)

ウォーリントンがリーダーとなった最初のクインテットは、トランペットがドナルド・バード、アルト・サックスがジャッキー・マクリーン、ベースがポール・チェンバース、ドラムスがアート・テイラーと、どの一人をとっても、とっても「こゆーい」人ばかりでした。"Live At The Bohemia"でそのサウンドが聴けます。出てくる音は痛快なハード・バップです。

このアルバムでは、ウォーリントンの2番目のクインテットの演奏が聴けます。ドナルド・バードはそのままですが、アルト・サックスはフィル・ウッズに変わっています。また、ベースがテディ・コティック、ドラムスがニック・スタビュラスと、最初のクインテットに比べると知名度の低いメンバー構成になっています。しかし、出てくる音は負けていません。

第1曲目の"In Salah"、高校生の私がレコードに針を落とした瞬間、気に入ってしまったマイナーのかっこいいバップ・ナンバーです。
テーマの後にフィル・ウッズのソロが出てきますが、これが溌剌としていてかっこいい。^^この当時、フィル・ウッズの艶やかなアルトの音色におおいにあこがれたものです。バードもメロディアスなトランペット・ソロで続きます。次にリーダーのウォーリントンのソロになりますが、リーダーとは思えないほど控えめなソロです。^^まあ、フロントのバードとウッズの活きがが良すぎる感じなんですが。^^

ウォーリントンのピアノの良さが出るのは、3曲目の"Graduation Day"です。この演奏はバードとウッズ抜き、トリオです。ここでは控えめなウォーリントンのピアノが深い情感をたたえて淡々とソロを展開しています。

"Indian Summer"はバードとウッズのフロントによるテーマ演奏が洒落たアレンジになっており、快適なハード・バップ演奏になっています。こういう曲想だとフィル・ウッズは実に壺にはまったソロをとってくれます。前任者のマクリーンほど陰影は濃くなく、ちょっと明る過ぎる気もしないでもないですが、楽器を鳴らすテクニックははるかに上です。歌心は両者伯仲かな。^^

控えめながら懐の深いリーダーの下に活きの良い若手をフロントに配したこのアルバム、今考えると、最初に買うJAZZの1枚としてはおそろしく地味なアルバムだったと思いますが、何度聴いても味わい深いスルメ的なよさを持ったアルバムだと思います。

1957年3月1日録音
George Wallington (p)
Donald Byrd (tp)
Phil Woods (as)
Teddy Kotick (b)
Nick Stabulas (ds)
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by bluenob | 2008-08-13 21:55 | Piano
Red Garland "All Kinds Of Weather"
b0160275_20391664.jpgハード・バップ時代の売れっ子ピアニスト、レッド・ガーランドの渋いアルバムです。

レッド・ガーランドは1950年代のマイルス・デヴィス第1期クインテットのピアニストで、マイルスのミュート・トランペットを引き立てるブロック・コードとチャーミングなシングル・トーンで、絶妙のコンビネーションを発揮しました。

セッション・ピアニストとして引っ張りだこだったレッド・ガーランドですが、最初からピアニストだったわけではなく、ライト級のボクサーだったんだそうです。
そう言えば、テナー・サックスのハンク・モブリーも元ボクサーでしたが、この二人の元ボクサーの出す音は、とても渋くて癒し系だと思います。^^格闘技出身なのに、攻撃的な音は一切出てきません。^^

このアルバムは、"All Kind Of Weather"というタイトル通り、天候や季節に関する曲ばかり集めた面白い構成のアルバムになっています。

1曲目の"Rain"は、レッド・ガーランド特有のブロック・コードで快調にテーマが演奏され、ご機嫌なシングル・ノートのソロにつながっていきます。「玉を転がすようなピアノ・ソロ」とよく形容されるガーランド節が冴え渡っています。左手のコンピングもお約束どおりのワン・パターンですが、これも気持ちが良いノリです。また、ポール・チェンバースのウォーキング・ベースも、何も凝ったことはやっていないにもかかわらず、とてもご機嫌です。

2曲目の"Summertime"は一転してスローなテンポのバラード風になります。ブルージーな雰囲気がたまりません。

"Stormy Weather"は曲名とは似合わない落ち着いた雰囲気の名曲です。これもスローでブルージーな演奏です。

"Spring Will Be a Little Late This Year"、「今年は春が来るのが遅くなりそう・・・」なんて思わせぶりなタイトルの曲ですが、ガーランドのブロック・コードが冴えるミディアム・テンポの好演です。アート・テイラーのブラッシュ・ワークも小気味よくスイングしています。

"Winter Wonderland"、これもガーランドのブロック・コードが快調なスインギーな演奏です。こういう演奏をさして「カクテル・ピアノ」とか言われますが、「カクテル・ピアノのどこが悪い!」と言いたくなるぐらい、ご機嫌な演奏です。

このアルバムを締めくくるナンバー、"'Tis Autumn"はしっとりした大人の音です。チェンバースもテイラーも肩の力が抜けて、ゆるーいスイング感が横溢しています。しかし、どこから見ても、これは正統派モダン・ジャズの音なんですね。

このアルバム、レッド・ガーランドらしさが横溢したアルバムです。「何を弾いても一緒」とか「金太郎飴」とか言われるレッド・ガーランドですが、特にピアノ・トリオというフォーマットで聴くと本当にワン・パターンだと思います。^^
でも、「難しいことは考えずにスイングする。以上。なんか文句あるか。」、って言われたら、「文句ないない!」と答えてしまいます。^^だって、これが彼の持ち味なんですから。

肩肘張らずにJAZZピアノを楽しもうと思ったら、レッド・ガーランドのピアノを聴くのが一番です。
このアルバム、一日の終わりに好きなお酒を片手に聴くにはもってこいです。^^

1958年11月27日録音
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (d)
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by bluenob | 2008-08-06 21:09 | Piano
Don Friedman "Waltz For Debby"
b0160275_20143325.jpg白人ピアニスト、ドン・フリードマンの2002年の作品です。
この人の形容詞は、「知的でリリシズムあふれる演奏スタイル」です。こう言うと、ビル・エバンスを連想しますが、事実、1960年代は、「ビル・エバンスの好敵手」と言われており、当時の代表作、"Circle Waltz"などを聴くと、確かにビル・エバンスそっくりです。^^

このアルバムは、ベースにジョージ・ムラーツ、ドラムスにルイス・ナッシュを迎えて2002年に吹き込まれたアルバムですが、まるでリバーサイドのビル・エバンス・トリオを髣髴とさせる素晴らしいアルバムに仕上がっています。

夏の暑い夜に、クールなジャズ・ピアノが聴きたいなあと思ったとき、このアルバムに手を伸ばすことが多いです。
このアルバムに聴かれるドン・フリードマンのピアノは、ビル・エバンスに似ていますが、もっと硬質でスインギーです。キース・ジャレットのスタンダード演奏も良いですが、あのキースのうなり声が邪魔だ、という人にはぜひお勧めのアルバムです。^^

1曲目の"35 W. 4th St."は、ドン・フリードマンが講師を務めるNY大学の住所が題名になっているそうです。数人の生徒が急に欠席し、思いがけずできた空き時間にピアノに向かっていたらできた曲だそうですが、このアルバムのオープニングにふさわしい硬質なリリシズムに溢れた名曲に仕上がっています。

3曲目はビル・エバンスの名曲、"Waltz for Debby"です。Village Vanguardでの有名なライブ・バージョンが一番耽美的で、ひたぶるに美しいです。"New Jazz Conceptions"での初演はまだ消化しきっていない感じでした。アルト・サックスのキャノンボール・アダリーとやっているのはちょっと甘すぎるかな。^^
フリードマンのワルツ・フォー・デビーは、一番甘さ控えめですが、フリードマンらしい端正な演奏になっており、大好きです。なお、この曲は日産ティアナのCMソングにも今使われており、TVを見ていて思わず「おっ!」と思ってしまいました。^^

チック・コリアの"Bud Powell"は、エバンスの"Portrait In Jazz"の"Periscope"を思わせるスインギーな演奏です。

"You Must Believe in Spring"、これも晩年のエバンスの名演で知られる名曲です。フリードマンの硬質なリリシズムがいかんなく発揮された素晴らしいバラードになっています。

"Shadow of Your Smile"、いきなりムラーツとのインタープレイで始まります。エバンス=ラファロのコラボレーションを思わせる演奏です。原曲のメロディーがほとんど出てきませんが、コード進行はあきらかに「いそしぎ」ですね。

アルバムの最後はスタンダードの"Old Folks"、フリードマンのピアノ・ソロです。この曲はJAZZミュージシャンのお気に入りのバラードで、いくつもの名演がありますが、ここでのフリードマンの演奏もそこはかとない哀感の漂う名演になっています。


2002年5月28日録音
Don Friedman (p)
George Mraz (b)
Lewis Nash (ds)
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by bluenob | 2008-08-03 21:13 | Piano
Ray Bryant "Ray Bryant Trio"
b0160275_2321822.jpgRay Bryantの代表作です。実にどうってことのないピアノ・トリオの演奏ですが、何回聴いても飽きない、良い味わいのアルバムです。

レイ・ブライアントは、地味で端正なピアニストだと思います。
バド・パウエルのように狂気じみた迫力もないし、ビル・エバンスのようなしたたるようなリリシズムでもないし、マル・ウォルドロンの暗い情念の噴出もないし、レッド・ガーランドのようなチャーミングなピアニストでもない。ましてやハービー・ハンコック、マッコイ・タイナー、キース・ジャレットのようなモダンなセンスは持ち合わせていません。
でも、スタンダード・ナンバーを弾かせたら、「これぞモダン・ジャズのピアノ!」という素敵な演奏をします。

1960年代にはゴスペル系・ソウル系の音に走ってクバノ・チャントなどの大ヒットを飛ばし、以来アーシーなピアニスト、というレッテルを貼られてしまったようです。実際、レイ・ブライアントのアルバムをiTunesで取り込むと分類はJazzではなくR&Bになってしまいます。オルガンのジミー・スミスも同じです。^^;一般的にはR&Bのイメージなのでしょうか。

しかし、このプレスティッジのアルバムでは本来のレイ・ブライアントを聴くことが出来ます。
俗かもしれませんが、冒頭の"Golden Earrings"が大好きです。日本人受けするマイナー・チューンですが、ビル・エバンスとはまったく違う黒いリリシズムを感じる演奏です。

1988年にこの曲をタイトルにしたアルバムがエマーシーから出ました。そこに収録されているゴールデン・イアリングスを聴くと、イントロはソロ・ピアノ風に始まるのですが、イン・テンポになってからしばらくは、このプレスティッジ版のソロとほとんど同じで驚きました。

当然、「こりゃプロのJAZZミュージシャンにあるまじき行為、こんなもんパチモンだー!」、と憤慨しました。でも何度か聴くうちに、「これもいいんじゃないか?ブライアントらしい端正なピアノだよ。許せるんじゃないか?」と思うようになってしまいました。
ちょうど、学生時代に好きだった女の子に会ったら厚化粧で幻滅したけど、話してみるとやっぱり昔の彼女の魅力はそのままで、またくどきたくなった、てな感じですね。^^;このエマーシー版、他の収録曲のできばえも良いです。

さて、このプレスティッジ版、ゴールデン・イアリングスの魅力ばかりが取り上げられてしまいがちですが、他の曲も名演です。特に"Angel Eyes"と"The Thrill Is Gone"。抑制された音で淡々と演奏してますが、黒く輝くブライアントのスタンダード演奏の魅力がたっぷりつまっています。また、Clifford Brownの名曲、"Daahoud"も端正なできばえです。

JAZZの超名盤というわけではないですが、飽きの来ないJAZZアルバムをあげよ、と言われたら真っ先に名前が挙がるのがこのアルバムです。

1957年4月5日録音
Ray Bryant (p)
Ike Isaacs (b)
Specs Wright (ds)
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by bluenob | 2008-07-24 00:00 | Piano