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カテゴリ:Alto Sax( 3 )
Eric Dolphy "Outward Bound"
b0160275_2214635.jpg元祖マルチ・リード奏者、エリック・ドルフィーの初リーダー作です。
初めてドルフィーを聴いたのは、"Last Date"だったと思いますが、カルチャー・ショックどころではない衝撃を受けました。

ドルフィーのサウンドはとてつもなく前衛的な響きなのに、冷たさはいっさい感じず、ひたすらエモーショナルに迫ってきます。オーネット・コールマンの前衛ぶりは、「ああ無邪気だなあ、こういうのもありかなあ・・・。」ぐらいの受け止め方だったんですが、ドルフィーを聴いたときは、「こっ、これはっ、すごい、すごすきるっ、果たして現実なんだろうか?」ぐらいの衝撃を受けました。

よく「馬のいななき」と言われるドルフィー独特の音のジャンプですが、アブストラクトな美しさに満ちています。抽象画の世界と同じで、「理解する」ものではなく、あるがままに「感じる」ものだと思います。ドルフィーが嫌いだという人も多いのですが、「理解しよう」としすぎるか、生理的に受け付けないか、どちらかでしょう。^^

また、楽器を完璧にコントロールするドルフィーのテクニックに驚きました。アルト・サックスとフルートは運指が近いですから、割合と簡単に持ち替えはできると思うのですが、バス・クラリネットは運指がかなり違いますし、楽器の鳴らせ方もまったく違います。にもかかわらず、どの楽器を吹いてもドルフィーらしさ」は一貫しており、しかも楽器ごとに見せる表情が微妙に違うのが面白いです。

この初リーダー作、Outward Bound"では、まだやや「伝統寄り」のところにある演奏ですが、単に聴きやすいだけの作品にはなっていません。

バスクラで吹かれる"Green Dolphin Street"、おそらくこの曲の演奏の中で、一・二を争う素晴らしい演奏だと思います。フレディー・ハバードのミュートによるテーマを聴いていると、ごく普通の「緑海豚通」に聴こえるんですが、ドルフィーのバスクラが出てくると、もうそこは非日常の世界になってしまいます。

"Miss Toni"でも、テーマ部分は普通のハード・バップなんですが、ドルフィーのバスクラが出てくると、世界が変わります。そしてハバードのソロでまた現実に戻ります。^^

また、"G.W"と"Les"のアルト・サックスでのアヴァンギャルドな響き、これもすごいです。テナー・サックスに比べてアルト・サックスの音色は甘すぎて、モーダルな曲や前衛っぽい曲に合わせるのが難しいのですが、ドルフィーのアルトは甘さを排除した硬質なリリシズムに溢れており、One And Onlyです。コルトレーンそっくりに吹く人はたくさんいますが、ドルフィーそっくりに吹ける人はいません。

"245"の酔っ払ったような雰囲気は後年の代表作、"Out To Lunch"の雰囲気に似てるんですが、こちらはよく聴くとトラディショナルなブルース・フォーマットです。ブルージーでありながら、ドルフィーのソロはきんきんにとんがってます。
ハバードのソロは完璧にブルースそのものです。ハバード、"Out To Lunch”ではもっと鋭いソロを吹いてましたが、この頃はまだ発展途上だったということでしょうか。^^

また、"Glad To Be Unhappy"のフルートで見せるロマンチックでありながらアブストラクトな音、これもこの人だけのサウンドで、イミテイターを聴いたことがありません。

なお、ドラムスはロイ・ヘインズです。このドラマー懐の深さにはいつも脱帽してしまいます。若い頃はレスター・ヤングやチャーリー・パーカーと演奏していたのに、ドルフィーやコルトレーン、チック・コリアやパット・メセニーと演奏しても決して古臭くありません。2008年現在、まだ存命中で、80歳を超えても演奏し続けているそうです。いやはや、丈夫で長持ちだわ。^^

初リーダー作には、そのミュージシャンのすべてが現れるといいますが、この"Outward Bound"、ドルフィーにしては聴きやすい作品ですが、十分にらしさが味わえるアルバムになっていると思います。

1960年4月1日録音
Eric Dolphy (as, bcl, fl)
Freddie Hubbard (tp)
Jackie Byard (p)
George Tucker (b)
Roy Haynes (ds)
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by bluenob | 2008-07-31 23:06 | Alto Sax
Phil Woods "Woodlore"
b0160275_2215584.jpg白人アルト・サックスの巨人、フィル・ウッズの若き日の名演です。

フィル・ウッズはマサチューセッツ州スプリングフィールドの出身で、1948年にニューヨークに出てジュリアード音楽院、そしてクール派の巨匠レニー・トリスターノの元でジャズを学びました。もちろん、当時のアルト・サックスの神様、チャーリー・”バード”・パーカーからも強い刺激を受けました。

1955年にチャーリー・パーカーが亡くなった後は、その葬式や借金の清算などで未亡人のチャン・パーカーの世話をしているうちに恋仲になってしまい、1958年に結婚してしまいました。また、チャンが継母として世話をしていたバードの遺児、キム・パーカーとベアード・パーカーもそのまま譲り受け、新たな継父となりました。後年、キム・パーカーはジャズ・シンガーとしてデビューしたそうですが、残念ながら私はまだ聴いたことがありません。継父のウッズはさぞかしそのデビューを喜んだことでしょう。

フィル・ウッズのアルト・サウンドは個性的です。明るくてつややか、メリハリの効いたフレージングで歌いまくります。アルト・サックスという楽器をフルに鳴らすテクニックは、古今東西、トップ・クラスだと思います。アルト・サックスを吹いている人なら、「フィル・ウッズみたいに吹いてみたい!」と、一度や二度は必ず思ったことがあるに違いありません。私もアルト・サックスを吹いていたときは常にあこがれていました。^^

ウッズのアルト・サウンドは、白人にしてはとても黒いフィーリングなのですが、バード直系のソニー・スティットや若い頃のジャッキー・マクリーンなどに比べると、バード・ライクな度合いは少ないように思います。実際、「私はバードをコピーしたことは無いんです。」とウッズは言ってるそうです。
また、レニー・トリスターノの元で学んだことも影響しているのかもしれません。あまりに明るくてつややかなサウンドなのでピンと来ませんが、よく聴くとトリスターノ派特有のホリゾンタル・フレーズ、リー・コニッツ的なフレージングも顔を出します。^^

このアルバムはウッズのワン・ホーン・アルバムです。ウッズの明るく伸びのあるつややかなサウンドを心行くまで楽しむことが出来ます。

"Falling in Love All Over Again"はウッズらしい甘くて暖かいバラードです。この人のバラードは陰りが少なくて、孤独感とか寂寥感は感じません。でも健康的な魅力に溢れています。

"Be My Love"はこのアルバムで私が一番好きなチューンです。アップ・テンポのスインギーな演奏ですが、上記のバラード演奏では感じないせつなさややるせなさを、この曲には感じてしまうから不思議です。4 Bars Changeの歌いっぷりはこの人ならではの輝きに満ちています。フィル・ウッズの最高の演奏をあげよ、と言われたら、私はこれを推すかな。^^

"On a Slow Boat to China"はソニー・ロリンズの名演で有名ですが、フィル・ウッズも負けていません。素晴らしい歌心で浪々と歌い上げ、「アルト・サックスはこうでなくっちゃ!」という好演です。

1955年11月25日録音
Phil Woods(as)
John Williams(p)
Teddy Kotick(b)
Nick Stabulas(ds)
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by bluenob | 2008-07-25 22:54 | Alto Sax
Jackie McLean "Jackie McLean Quintet"
b0160275_20383744.jpgアルト・サックスのハード・バッパー、Jackie McLeanの初リーダー作品です。
通称「猫のマクリーン」とか「猫リーン」と呼ばれるアルバムで、ジャケットに猫というかふくろうというか、とてもグルーヴィな動物が描かれています。内容もとてもグルーヴィです。^^

アルト・サックスの神様、チャーリー・パーカーにあこがれてアルト・サックスを始めたジャッキー・マクリーン、早熟の天才で、1951年、19歳の時に、Miles Davisの"Dig"への参加でレコーディング・デビューを果たしました。(一説によれば、16歳のときにバリトン・サックスで初吹き込みをした、という記述もあるようです。)
チャーリー・パーカーもマクリーンをことのほか可愛がっていたようで、この"Dig"の録音の時には、スタジオまで付き添ってきていたらしいです。このデビュー版でのマクリーン、突き刺さるように鋭いトーンのアドリブを展開しており、チャーリー・パーカーの秘蔵っ子ぶりがよくわかります。

1955年3月12日にチャーリー・パーカーが亡くなりました。マクリーンはその直前にパーカーにアルト・サックスを貸したらしいのですが、なんたることかパーカーはそのアルトを質入してしまいました。頭に来たマクリーンは口もきかずにパーカーと別れたのですが、そのすぐ後に「パーカーが死んだ」というニュースが伝えられ、マクリーンは号泣したそうです。

このアルバムはそれから半年ちょっとたったときの録音です。初リーダー・アルバムですが、完成度の高い素晴らしいアルバムです。
最終曲の"Lover Man"はチャーリー・パーカーの名演で有名ですが、ここでのジャッキー・マクリーン、切々と恩師をなくした悲しみを歌い上げています。後年のLeft Aloneでのバラード演奏に比べると、もろにパーカーの影響丸出しでもっと音数が多いのですが、ブルージーな雰囲気と歌心の素晴らしさは天性のものがあります。
またピアノもLeft Alone同様マル・ウォルドロンで、マクリーンのパーカーに対する気持ちを汲んで素晴らしいバッキングぶりです。この二人のバラード演奏における相性は素晴らしいと思います。この1曲のために、このアルバムを買っても損はしません。

また、アップテンポの"It's You Or No One"や"The Way You Look Tonight"では、トランペットのDonald Byrdとともに、「これぞハード・バップ!」という切れの良いみずみずしいプレイを披露しています。
"Blue Doll"はマクリーン作曲のスロー・ブルースで、ソニー・クラークの名盤、"Cool Struttin'"における演奏の原点はここにあり、という好演です。ちなみにDollというのはマクリーンの奥さん、Dollyのことだそうです。
マクリーン、家族思いだったようで、奥さんだけでなくお嬢さんにも"Little Melonae"を書いています。これは当時としては結構新鮮な響きの曲だと思います。

ジャッキー・マクリーン、演奏技術では決して一流とは言えないかも知れません。リードコントロールが下手クソでミス・トーンも多いし、音程を外すのはしょっちゅうです。でも、ちょっと舌足らずで甘くてハスキーな音色、そしてと憂いを含んだ歌いっぷりは、まさしくOne And Onlyです。

「音程は外しても、リスナーの期待は外さないのがマクリーン」ということを言った方がいました。まさしく言いえて妙な表現だと思います。^^この初リーダー・アルバム、そんなジャッキー・マクリーンの魅力がいっぱい詰まった一枚だと思います。

1955年10月21日録音
Jackie McLean (as)
Donald Byrd (tp)
Mal Waldron (p)
Doug Watkins (b)
Ronald Tucker (ds)
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by bluenob | 2008-07-21 21:54 | Alto Sax