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カテゴリ:Tenor Sax( 9 )
Wayne Shorter "Juju"
b0160275_21555051.jpg新主流派を代表するテナー・マンのひとり、ウェイン・ショーターのワン・ホーン・アルバムです。

新主流派のテナー吹きの中では、なんと言っても私はジョー・ヘンダーソンが好きなんですが、ジョーヘンを引き立たせていたのは、ウェイン・ショーターの存在ではなかったでしょうか。

伝統的なスタイルを引きずった野生児ジョーヘンと、とらえどころのない黒魔術師ショーター。スタンダードもばりばり吹くジョーヘンと、オリジナルしかやらないショーター。格好なんておかまいなしに真っ赤に燃えるジョーヘンと、青白い炎の中で静かに燃えるスタイリスト・ショーター。比喩が変ですが、ゴジラvsモスラ、中日ドラゴンズvs読売ジャイアンツみたいな、宿命のライバルとしてとらえていました。^^
若い頃は、ジョーヘンを聴いて暑苦しくなると、ショーターを聴いてクール・ダウンする、みたいなことの繰り返しばかりやっていました。

ウェイン・ショーター、Vee-Jayでデビューした頃は、コルトレーンそっくりなトーンとフレージングのハード・バッパーでしたが、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに入った頃から徐々にミステリアスな雰囲気に変わって行き、その後、マイルス・デイヴィスのコンボに参加した頃にはワン・アンド・オンリーなテナー・マンに成長しました。

このアルバムは、ジャズ・メッセンジャーズを離れ、マイルス・コンボに入る直前のショーターを捉えています。
ブルーノートでの初リーダー作"Night Dreamer"を聴くと、フロントの相方リー・モーガンの存在ゆえに、ジャズ・メッセンジャーズ的なハード・バップのエコーが濃厚です。でも、第2作目のこの"Juju"になると、より新主流派的な音に変わってきています。

ワン・ホーンゆえに、ショーター自身がやりたかった音楽がストレートに出てきているというのもありますが、サイドメンの影響もありそうです。マッコイ・タイナー(p)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)は当時のコルトレーン・カルテットのレギュラー・メンバー、そしてレジー・ワークマン(b)もコルトレーンゆかりのベーシストです。

にもかかわらず、このアルバムでのショーターは、コルトレーンの亜流には全くなっていないあたりが、さすがです。
1964年の9月に、コルトレーンは"A Love Supreme"を吹き込み、より宗教的な深みへと進んでいきますが、ショーターにはそういう宗教的な臭みはなく、それまでになかったフレッシュな楽想の演奏を繰り広げています。
マッコイもエルヴィンも、その個性をいかんなく発揮していますが、コルトレーン・コンボでやっている彼らとは異質の音です。ショーターのリーダーとしての影響がよくわかります。

1曲目の"Juju"、黒魔術的なタイトルがついていますが、マイルス・バンド参加以降のショーターに比べると、わかりやすいモーダルな曲です。ここでのショーター、クールに燃えたブロウを披露しており、実にかっこいいです。

2曲目の"Deluge"、コルトレーン的な影響の濃い曲想ですが、ショーターのソロはペンタトニック・スケールを基調としながらも、彼ならでは音の選び方がユニークです。マッコイのソロになると、コルトレーン・カルテットそのまま、って感じですが。^^

"House of Jade"は直訳すれば、「翡翠の館」でしょうか。タイトルの東洋的なイメージではなく、チャーリー・ミンガスを思わせる黒褐色のグラデーションといいますか、不思議な音の響きのバラードです。ショーターのソロも、瞑想的です。

4曲目の"Mahjong"は、「麻雀」ですね。ジョーヘンにも"Jinrikisha"という変なタイトルだけど魅力的なオリジナルがありますが、これも和風のタイトルにもかかわらず、演奏そのものはまじめです。このアルバムで一番コルトレーンを感じさせる演奏ですが、ショーターのソロはよりクールに燃え上がります。

5曲目の"Yes or No"はアップテンポな曲で、アトランティック時代のコルトレーンを思わせます。バリバリと吹きまくるショーター、しかしトレーンとは全く違う傾向のソロです。クールだけど熱い、燃えてるけど冷静。ショーターならではのソロです。

このアルバムの最後は、"Twelve More Bars to Go"、そのタイトルからもわかるように、ブルースの新解釈です。新主流派のブルースって、かっこいいのが多いです。ジョーヘンの"Isotope"とか、チック・コリアの"Matrix"とか。ショーターのこのブルースもモダンな感覚に溢れたブルースに仕上がっています。

このアルバムを8月に録音した後、、9月にはマイルス・デイヴィスのコンボでのデビュー作、"Live In Berlin"を録音します。マイルスがショーターを引っ張った理由は、このアルバム、"Juju"を聴くと本当によくわかります。前任テナーのジョージ・コールマンやサム・リバースと比べて、明らかにショーターの音は「鮮度がいい」のです。

1964年8月3日録音
Wayne Shorter (ts)
McCoy Tyner (p)
Reggie Workman (b)
Elvin Jones (d)
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by bluenob | 2008-10-30 23:26 | Tenor Sax
John Coltrane "Giant Steps"
b0160275_20585248.jpgJAZZのテナー・サックスと言えば、ソニー・ロリンズと共に双璧をなすのが、ジョン・コルトレーンです。コルトレーンもロリンズ同様、どのアルバムも素晴らしいのですが、季節によって聴きたくなるアルバムが違います。

暑い夏には、インパルスの黒くて重いコルトレーンが聴きたくなるのですが、秋になるとアトランティックに吹き込まれたアルバムが聴きたくなってきます。もう少し寒くなってくると、ブルーノートやプレスティッジに残されたアルバムが聴きたくなります。不思議な季節感です。^^

さて、アトランティック時代のコルトレーンの中でも、コルトレーンの凄みを110%伝えてくれるアルバム、ジャイアント・ステップスをご紹介したいと思います。

当時、コルトレーンはマイルス・デイヴィス・セクステットの一員で、すでにモード時代の幕開けを告げる"Kind Of Blue"を吹き込んだ後でした。このアルバムは、その後に吹き込まれたものですが、モード奏法でばりばりやっているわけではなく、むしろコード奏法を究極まで極めたという印象が強いアルバムです

中でも圧巻は、アルバム・タイトルにもなった"Giant Steps"です。通称「コルトレーン・チェンジズ」と呼ばれる代理和音進行の曲で、1コーラス16小節中に長3度という珍しい転調で、B、E♭、Gのキーを10回も行ったり来たりします。
コード奏法ですから調性感はしっかりあるのですが、B,E♭,Gのいずれもがトニックに聞こえるという、浮遊感漂う不思議な曲です。

これだけ転調すると、その演奏の難しさは並大抵ではありません。しかも、♩=240を超える馬鹿っ早の演奏です。譜面にしたものを演奏するのも容易ならざる曲で、これでアドリブをするとなると想像を絶します。
事実、この曲は斬新過ぎて、当時のサイドメン泣かせの曲だったようです。4月にシダー・ウォルトンとやったセッションはお蔵入りになってしまっています。

また、このアルバムのほとんどを占める5月のセッションでも、名人トミー・フラナガンがこの曲ではヘロヘロになってます。始めはシングルトーンでなんとかアドリブしているのですが、後半はとてもついて行けなくなり、ブロック・コード・ソロに終始しています。オルタネイト・テイクではピアノ・ソロすらありません。^^

しかしコルトレーンは、この難曲を見事に吹ききっています。この変態コードを忠実になぞって、ダイアトニック・スケールの八分音符をばりばりとばら撒いていくソロは、シーツ・オブ・サウンズの典型です。凄みがあるのはもちろん、爽快ですらあります。

YouTubeに、「目で追う John Coltrane/Giant Steps」があります。

興味があったら覗いて見てください。楽器をやったことのある人なら、思わずのけぞってしまう過激な世界が広がっています。^^

"Cousin Mary"は一転してモーダルなブルースです。マイルス・バンドで経験したモード奏法に基づく斬新なフレージングで、伝統的なブルースとは一味もふた味も違うモダンなブルースになっています。

"Countdown"は超アップテンポでアート・テイラーとのデュオで始まります。ジャイアント・ステップス同様、コルトレーン・チェンジズの新鮮な和声進行の曲で、それに基づくコルトレーンのソロは破壊力満点です。

また、バラードの"Naima"だけは、ピアノがウィントン・ケリー、ドラムスがジミー・コッブに代わっています。この曲は瞑想的でモーダルな雰囲気の演奏で、コルトレーンが生涯を通じて愛奏したバラードです。ケリーのピアノも、いつもの「玉を転がすようなシングル・トーン」のケリーではなく、ビル・エバンスを髣髴とさせるブロック・コード・ソロに終始しています。

"Mr. P.C."は、マイルス・コンボ時代からの盟友でもあり、このアルバムでも貢献しているベースのポール・チェンバースに捧げたマイナー・ブルースです。これもアップテンポで、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンズを堪能できます。シンプルですが魅力的なリフで、カバーしているミュージシャンもたくさんいます。実際、私も学生時代、Cのマイナーブルースというと、リフはこればかりでした。^^

ジャイアント・ステップスというアルバムタイトルが暗示するように、このアルバムはその革新性で、JAZZの地平を大きく広げた大傑作に違いありません。いつ聴いても、その新鮮さに脱帽してしまいます。

1959年4月~12月録音
John Coltrane (ts)
Tommy Flanagan (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (d)
Wynton Kelly (p)
Jimmy Cobb (d)
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by bluenob | 2008-10-06 22:18 | Tenor Sax
Sonny Rollins "Newk's Time"
b0160275_2311315.jpgJAZZテナーサックスの巨人、ソニー・ロリンズがブルー・ノートに残したアルバムの中で、一番好きなアルバムです。

ロリンズの名盤は数限りなくありますが、世評としては、プレスティッジに残した"Saxophone Colossus"、コンテンポラリーに残した"Way Out West"、そしてブルー・ノートに残した"A Night At The Village Vanguard"が代表的なものだと思います。
この3枚、どれもスケールの大きなアドリブ、ユーモアとペーソスをたたえた歌心、確かにロリンズらしい名演だと思います。
しかし、ロリンズのアドリブの「凄み」を聴く上では、この"Newk's Time"も超一級の出来栄えのアルバムだと思います。

同じテナーサックス奏者でも、ジョン・コルトレーンなら「凄み・迫力」というイメージのアルバムがたくさんありますが、ロリンズの場合は「音楽性全体の魅力」が先にたってしまい、「凄み」を心底味わった、というアルバムはあまりないような気がします。
しかし、この"Newk's Time"はロリンズにしては珍しく、黒々とした「凄み」が前面に出たアルバムになっています。
ある意味、演奏者好みのアルバムかもしれず、テナー・サックスを吹いている人には、このアルバムが大好き、という人が多い気がします。

1曲目の"Tune Up"からして迫力があります。
挑発するようなフィリー・ジョーのドラムに乗せて、軽快なロリンズのアドリブが冴え渡ります。このアルバムが「ロリンズの凄み」を引き出している理由のひとつは、リズム・セクションの違いがあるような気がします。
サキ・コロのリズム隊はトミー・フラナガンとマックス・ローチ、黒人ではありますが、二人とも知性派だし、情熱がほとばしるというタイプではないと思います。
ウェイ・アウト・ウェストも同様で、シェリー・マンとレイ・ブラウン、やっぱりウェストコースとならではの明るさ、軽さが身上のリズムです。
しかし、このアルバムは、ドラムにフィリー・ジョー・ジョーンズ、ピアノにウィントン・ケリーと、より「黒くて熱い」ミュージシャンが参加しており、彼らがロリンズのアドリブ魂に火をつけているのではないでしょうか。

2曲目の"Asiatic Raes"は、トランペットのケニー・ドーハムのオリジナル、"Lotus Blossom"の別名曲です。オリエンタルな味わいの曲ですが、ロリンズのテナー・サウンドの熱いこと熱いこと。テナー・サックス、かくあるべしという、素晴らしい音色です。

3曲目の"Wonderful! Wonderful!"はロリンズ好みの、懐かしいようなメロディーの曲です。ここでもロリンズのアドリブは緩急取り混ぜ自由自在、よどみなく歌いまくっています。

4曲目の"Surrey With the Fringe on Top"はまさしく圧巻です。ロリンズのアドリブの凄みを嫌というほど味わうことができます。この1曲のためにこのアルバムを買っても後悔しません。
この時代では珍しい、テナー・サックスとドラムスのデュオですが、ロリンズもフィリー・ジョーも挑戦的な音を連ね、剣豪同士の真剣勝負に似た緊張感が漂っています。
このアルバムを吹き込んだ2ヵ月後に、ロリンズはピアノ・レス・トリオでの"A Night At The Village Vanguard"が吹き込んでいますが、ここでの編成はさらにシンプルなだけに、ロリンズの凄みが際立ちます。

5曲目のブルース、"Blues for Philly Joe"、テーマを繰り返し引用しながらのロリンズ節です。ブルースという基本的なフォーマットにもかかわらず、ロリンズらしい個性がばっちり出ています。また、ダグ・ワトキンスのベース・ソロもグルーヴィで、そこから4バース・チェンジに入っていくあたりの流れもファンキーで楽しいです。

最終曲は"Namely You"、心地よいミディアム・テンポの名演です。ロリンズの豪快な音色、余裕すら感じさせる歌い方がたまりません。「男は黙ってソニー・ロリンズ」って感じです。ウィントン・ケリーのピアノ・ソロも、よく言われる「玉を転がすような」という形容がぴったりの小粋なスイング感に溢れています。

ロリンズのアルバムとしては、不当に評価が低いように思いますが、私はこのアルバムのロリンズを愛してやみません。

1957年9月22日録音
Sonny Rollins (ts)
Wynton Kelly (p)
Doug Watkins (b)
Philly Joe Jones (ds)
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by bluenob | 2008-10-05 21:24 | Tenor Sax
Hank Mobley "Soul Station"
b0160275_23383061.jpg前回、元ボクサーのレッド・ガーランドのエントリーを書いたので、今日は「元ボクサー」つながりで、ハンク・モブリーのアルバムについて書きたくなりました。^^この人も格闘技出身なのに、攻撃的な音は一切出さない人です。

ハンク・モブリー、はっきり言って、一流の「二流テナー・サックス奏者」です。以上。

って、それじゃああんまりです。本当は最近、お気に入りのテナー・サックス奏者なので、まじめに書きましょう。^^

ハンク・モブリー、日本語ではなぜか「ハンク・モブレー」と表記されることが多いようですが、正しい発音は、「モブレー」ではなく「モブリー」ですね。英語の地名や人名の"ley"は「リー」に近く発音されます。高級車のBentleyも「ベントレー」ではなく、「ベントリー」です。

ジャズ・メッセンジャーズの"At The Cafe Bohemia, Vol. 1"の冒頭で、アート・ブレイキー御大がメンバー紹介をやっています。
これを聴くと、"On the tenor saxophone, we have a new star on modern jazz horizon, Hank Mobley!"と紹介しており、あえてカタカナで書くと、「モーブリー」に近い感じです。^^

さて、このハンク・モブリー、昔は好きではありませんでした。コルトレーンやデックス、スティーブ・グロスマンなどの太くて硬い音が好きだったので、モブリーの音やフレージングは、「なんじゃ、こりゃ。ふにゃふにゃもごもごしているな。モーイ(芋)だでかんわ。」と、切り捨ててしまったのでした。いやはや、若さと「馬鹿さ」はほとんど同義語です、私の場合。^^

しかし私の好みも年齢と共に奥が深くなりました。40才を越えたあたりから、モブリーのしなやかなベルベット・トーンとメロディアスなフレージングが大好きになってしまいました。^^
コルトレーンに代表される体育会系JAZZ、今でも大好きですが、昔と違ってストレスの多い生活になってきたせいか、モブリーのような「癒し系」のサウンドもお気に入りになってきました。

モブリーのテナー・サウンドは、同時代のコルトレーンやデックスに比べてまろやか、スタン・ゲッツよりもウォームです。アド・リブのメロディー・ラインは常に安定しており、リラックスして聴くにはもってこいの人です。作曲もたくさんやってますが、毒にも薬にもならないハード・バップばかりです。^^

かと言って音楽性がお粗末なわけではなく、それが証拠に、一時期マイルス・デヴィスのコンボにも在籍していました。マイルスの"Someday My Prince Will Come"でその音が聴けます。イマジネイティブなソロをとるコルトレーンと対比すると、モブリーのソロはメロディアスですがクリシェだらけです。若い頃はこれがなんともイモイモしく聴こえたものですが、今はこれはこれで気持ちが良いです。^^

このアルバム、"Soul Station"は、ハンク・モブリーのワン・ホーン・カルテットのアルバムで、モブリーの魅力が凝縮されています。

リズム隊は、ピアノにウィントン・ケリー、ベースがポール・チェンバース。マイルス・バンド時代の同僚ですね。ドラムスはかつての親分、アート・ブレイキーです。
この面子で変な音が出てくるはずがありません。^^よく知った仲間との和気藹々とした雰囲気の中で、レイドバックしたご機嫌なハード・バップが演奏されています。

1曲目の"Remember"、モブリーの魅力が一番発揮されるミディアム・テンポのナンバーです。モブリー特有のメロディアスなアド・リブが淡々と展開されており、難しいことはなーんにもやっていませんが、楽しいJAZZになっています。

アルバム・タイトルにもなっている"Soul Station"もミディアム・スローでブルージーなナンバーで、ここのモブリーのさりげないソロ、すごくかっこいいです。このぐらい肩の力を抜いて吹けたら気持ちが良いだろうなー、って感じです。

アルバムを締めくくる"If I Should Lose You"、このアルバムで一番好きな曲です。 モブリーはつくづく歌モノがうまいな、と思います。淡々と展開される哀感漂う枯れたアド・リブがたまりません。ケリーのソロもご機嫌です。

刺激的な音に疲れてしまったとき、でも上質なJAZZを聴きたいなと思ったとき、このアルバムはなかなか良い選択肢の一つだと思います。

1960年2月7日録音
Hank Mobley (ts)
Wynton Kelly (p)
Paul Chambers (b)
Art Blakey (ds)
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by bluenob | 2008-08-07 23:40 | Tenor Sax
Stan Getz "Getz/Gilberto"
b0160275_22101843.jpg今日の名古屋の最高気温は37.8度、こんな暑い夜にはボサ・ノバが聴きたくなります。^^

これは、白人テナー・サックス奏者の巨人、スタン・ゲッツがボサ・ノバの創始者ジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンと組んで発表したアルバムです。このアルバムは、音楽界に"Bossa Nova"というジャンルを確立させた画期的なアルバムでもあります。

スタン・ゲッツは、レスター・ヤング系のテナー・マンで、1940年代後半にはクール・ジャズを代表するテナー・サックスとして人気を集めました。しかし、この時代のジャズ・ミュージシャンにありがちな「お薬」への依存が断ち切れず、1954年には「お薬代稼ぎ」のためにコンビニ強盗を起こして逮捕されてしまいました。服役を終えた後は、アメリカを脱出し、スウェーデンに移住してしまいました。

また、ジョアン・ジルベルトは、このアルバムにも参加しているアントニオ・カルロス・ジョビンと共に、1950年代末からボサ・ノバのパイオニアとしてブラジルで活躍していました。ちなみに世界最初のボサ・ノバ・レコードは、1958年に吹き込まれた"Chega de Saudade"だそうです。いまだにボサ・ノバのスタンダードで、英語でも"No More Blues"、日本語では「想いあふれて」としてカバーされています。

このアルバムはスウェーデンから帰国したスタン・ゲッツとジョアン・ジルベルト、アントニオ・カルロス・ジョビンとのコラボレーションによって作られました。今聞いてみると、その後のボサ・ノバ・スタンダードが綺羅星のごとくならんだアルバムとなっています。
今の枯れたジョアンの歌声も大好きですが、若い頃のジョアンの声も艶があって素敵です。

ゲッツのテナーも、ボサ・ノバのクールな雰囲気にぴったりです。この人のソロ、昔は「まるで書いたのを演奏するみたいなアドリブで嫌い!」だったのですが、今は「書いたみたいにスムーズにアドリブするゲッツは凄い!」に評価が変わってきました。^^;

どの曲も、ボサ・ノバらしい快適な音楽で、1963年のグラミー賞4部門を独占する大ヒットとなったのも、むべなるかなという感じです。

また、このアルバムにはジョアン・ジルベルトの当時の奥さん、アストラッド・ジルベルトのボーカルが聴けます。ヘタウマの世界ですが、これでアストラッドはボサ・ノバ・シンガーの座を確立してしまったのでした。

私も若い頃、ブラジル音楽を聴きまくっていた時代がありました。サンバからサンバ・カンサゥン、ショーロなど、JAZZの4ビートよりも新鮮に感じていました。仲間とブラジル音楽バンドも作っていました。ナラ・レオンの名曲をリーパクして、"Vento De Maio"という名前のバンドで、いっちょまえにバツカーダなんかもやったりしてました。

私はこのバンドでテナー・サックスとフルートを担当してましたが、ゲッツのようには吹かず、ベルグ・ラーセンのマウス・ピースで、ガトー・バルビエリのようにゴリゴリ吹いていました。今考えると、野蛮だったなあ。^^;

今でも夏になると、ボサ・ノバやサンバを好んで聴いていますが、このアルバムはその中でもスタンダードです。当時はあまり好きでなかったスタン・ゲッツも、気持ちよく聴ける年になってきました。

1963年3月18日~19日録音
Stan Getz (ts)
Antonio Carlos Jobim (p)
Joao Gilberto (g, vo)
Tommy Williams (b)
Milton Banana (d)
Astrud Gilberto (vo)
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by bluenob | 2008-08-05 23:09 | Tenor Sax
Dexter Gordon "GO"
b0160275_23182381.jpgBe-Bop勃興期から活躍したテナー・サックスの巨人、デクスター・ゴードンの代表作です。
デクスター・ゴードンは、そのJAZZ史上における存在感も巨人ですが、実際に身長も195cmあって、"Long Tall Dexter"というアルバムがあるぐらいです。

デックスは1940年にプロ・デビューしました。1945年からはバド・パウエル、マックス・ローチ、アート・ブレイキーなどの一流プレイヤーと共演しました。レスター・ヤング流のスムーズなフレージングと、チャーリー・パーカー流のビ・バップの革新的なスタイル、そして「これぞテナー・サックス!」という野太い音が魅力のテナー・マンでした。しかし、1950年代後半は、「お薬」のやりすぎで起訴されてしまい、ほとんど刑務所で過ごすことになってしまいました。

普通の人なら、ここで人生おしまいなんですが、デックスのえらいところは、そこから再起し、音楽家としてさらなる高みに上り詰めたところにあります。
刑務所を出所した後、ブルーノートと契約したデックスは、快作を連発します。キャリアから言えばずっと後輩のソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンのスタイルを謙虚に勉強し、それを自分のスタイルに取り込んでしまい、「これぞテナー・サックス!」というスタイルにさらに磨きをかけたのです。いくつかののレコーディングをブルー・ノートに残した後、デックスはヨーロッパに移住してしまいます。

この"GO"は、その渡欧直前に吹き込まれたアルバムで、ブルー・ノートのデックスの中では最高の出来だと思います。この2日後に同じメンバーで、"A Swingin' Affair"を吹き込んでいますが、"GO"ほどのできばえではありません。

このアルバムでは、デックスの豪快なテナー・サウンドを心行くまで楽しめます。ヴィブラートが少なく、中身の一杯詰まったハード・ボイルドな音で、タンギングのメリハリをしっかりとつけ、タメの効いた後ノリでゴリゴリ吹きます。デックスの自作曲、"Cheese Cake”やスタンダードの"Love For Sale"などのマイナー・チューンにはその魅力が一杯詰まっています。

また"I Guess I'll Hang My Tears Out To Dry"や"Where Are You?"というバラードで見せる素晴らしい歌心、これはもうたまりません。
タフなんですがとても優しいバラードです。レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウのせりふ、「タフでなければ生きて行けない。優しくなれなければ生きている資格がない」("If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.")を地で行ってる感じで、めちゃくちゃにかっこいいです。

また"Second Balcony Jump"や"Three O'Clock In The Morning"で見せる、いろんな曲を引用しながらのくつろいだソロ、これはまさしく「デックス節」の典型です。中毒性が高く、聴き始めると「もう一回繰り返して聴いてみよう。^^」とカッパ・エビセン状態になってしまいます。^^

またリズム陣も手堅くデックスを盛り立てています。ソニー・クラーク、ブッチ・ウォーレン、ビリー・ヒギンズは、この時代のブルーノートのハウス・リズム・セクションだったようでいろんなアルバムに登場しています。

渡欧後のデックスも、カフェ・モンマルトルのライブなど素晴らしいものを残していますが、それでも「デックスの最高の一枚」となると、やっぱりこの"GO"を選んでしまいます。

1962年8月27日録音
Dexter Gordon (ts)
Sonny Clark (p)
Butch Warren (b)
Billy Higgins (ds)
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by bluenob | 2008-07-31 00:22 | Tenor Sax
Joe Henderson "Tetragon"
b0160275_2247551.jpg1960年代に活躍したテナー・サックス奏者、ジョー・ヘンダーソンがマイルストーンに残した傑作アルバムです。

ジョー・ヘンダーソンは、軍隊で2年間を過ごした後、ニューヨークに出て本格的にJAZZを始めました。デビューした時代が時代ですから、ジョーヘンのスタイルは、いわゆる「新主流派」の典型的なサウンドです。基本的にコルトレーン・ライクなフレージングが目立ちますが、ジョーヘンは懐の深いテナー・サックス奏者で、ただのトレーン・イミテイターではありません。

レスター・ヤング的なビ・バップ・テナーを出発点として、R&Bやラテンの風味も加味され、さらに白人テナーの巨人、スタン・ゲッツの影響もまであります。それらがあった上でコルトレーンの影響を受けた重層的なスタイルですから、そのソロは一筋縄ではいかず、聴き応えがあります。

同時代のテナー・サックスの大物にはウェイン・ショーターがいますが、ショーターとジョーヘンを比較すると、ショーターの方がコルトレーン・ライクで、取り上げる曲もオリジナル中心です。
ジョーヘンはオリジナルもやりますが、スタンダード・ナンバーも積極的に取り上げます。このジョーヘンのスタンダード、彼なりの個性的なアドリブが新鮮で大好きです。^^

ショーターとジョーヘン、どちらも個性的で、60年代を代表する素晴らしいテナー・マンだと思いますが、強いて言うと「黒魔術のショーター」と「野生児ジョーヘン」という感じでしょうか。^^
こう言うと、ジョーヘンがパワーだけを頼みにするテナーマンみたいに聴こえるかもしれませんが、そんなことはありません。当時のJAZZ界きっての知性派だったと思います。ただ、表現がスマートというよりは野性的、ということですね。^^

このアルバムはブルーノートを後にして、マイルストーンに移籍したあとのレコーディングです。
録音メンバーは、1967年9月に吹き込まれたほうが、Kenny Barron (p), Louis Hayes (ds), Ron Carter (b), Joe Henderson (ts)、そして1968年5月に吹き込まれたほうは、ピアノがDon Friedman、ドラムスがJack De Johnetteに変わります。後者のメンバーのほうが聴き応えがありますが、その差はわずかです。

このアルバムの一番の聴き所は、ドン・フリードマンとジャック・デ・ジョネットが加わった1曲目、Invitationです。
この曲は1952年の映画"Invitation"の主題曲でしたが、どいういうわけか、60年代以降のJAZZミュージシャンに好まれた曲です。転調が美しいモーダルな楽想だからでしょうか。
ジョン・コルトレーンやビル・エバンス、フィル・ウッズやジャコ・パストリアスも取り上げています。
それらの中で、私が一番かっこいいと思うのが、このアルバムにおけるInvitationです。

ドン・フリードマンのビル・エバンスをより硬質にした感じのイントロから、サブ・トーン気味のジョーヘンが入ってきて、そこにロン・カーターのアンティシペーション気味の伸びのあるベースが絡んでくる・・・。鳥肌が立つほどかっこいいです。^^
ジョーヘンのソロも、ドン・フリードマンのソロも、それぞれ新しい感覚に溢れており、魅力たっぷりです。特にテーマに戻る前のジョーヘンのアドリブ、コルトレーン・スクールのクリシェはほとんどなく、この人らしい独創的なすばらしいものです。
この1曲のためにこのアルバムを買っても損はしません。^^

このアルバムにはもう1曲スタンダード・ナンバーの"I've Got You Under My Skin"が入っており、こちらのジョーヘンも素晴らしくかっこいいです。

また、他のオリジナル曲では、ジョーヘンのよりアヴァンギャルドな、しかし人間臭いアドリブが聴けます。


1967年9月27日録音 (Tetragon, First Trip, I've Got You Under My Skin)
Joe Henderson (ts)
Kenny Barron (p)
Ron Carter (b)
Louis Hayes (ds)

1968年5月16日録音 (Invitation, R. J., The Bead Game, Waltz For Zweetie)
Joe Henderson (ts)
Don Friedman (p)
Ron Carter (b)
Jack De Johnette (ds)
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by bluenob | 2008-07-26 23:45 | Tenor Sax
Sonny Rollins "Plus Four"
b0160275_21261484.jpgソニー・ロリンズが一番油の乗っていた1956年の作品です。

この年のロリンズはものすごいです。リーダー作だけでも、この"Sonny Rollins Plus Four"を3月22日に録音し、コルトレーンとのテナー・バトル"Tenor Madness"を5月24日に録音、そしてJAZZ史上最大の名盤のひとつ"Saxophone Colossus"を6月22日に録音、さらにチャーリー・パーカーへのメモリアル"Rollins Plays For Bird"が10月5日、アール・コールマンのボーカルの入った"Tour de Force"が12月7日という按配です。
さらにこの年の前半は、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットのメンバーとしても数々の名盤をものにしており、いかにこの1956年という年がロリンズにとって充実していたかがわかります。
ちなみに、この年は私が生まれた年でもあります。われながら良い年にうまれたもんだと思います。^^;

さて、この"Sonny Rollins Plus Four"ですが、この年に吹き込まれたロリンズのアルバムの中で、私が一番好きなアルバムです。
もちろんサキソフォン・コロッサスの素晴らしさは言うまでも無いのですが、プラス・フォー全体に流れるペーソスに満ちたフィーリングがたまらなくいとおしいのです。

このアルバムは、クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットのメンバーで吹込んだもので、レーベルがプレスティッジですので、リーダーはロリンズ名義のものになっています。

第1曲目の"Valse Hot"、聴くたびにいつも「JAZZを聴いていて良かった!」という気分にさせられる名演です。
4ビートのJAZZではなく、ミディアムテンポのワルツなんですが、遠い昔に聴いたような懐かしさを覚えるロリンズの名曲です。美しくもセンチメンタルなコード進行に基づいてソロが展開されますが、ロリンズもブラウニーも素晴らしい歌いっぷりです。
さらに、リッチー・パウエルのソロ、これがもう、涙ぐましく素晴らしいです。お兄さんのバド・パウエルに比べたら指も動かなければアイデアも凡庸なんですが、ブルージーなフィーリングと素晴らしい歌心に感動してしまいます。
"Count Your Blessings"も短い曲ですが、ロリンズの浪々と歌うテナーのバックでリッチー・パウエルの弾くピアノが実に良い味を出しています。

他の曲でも、ロリンズの暖かくも豪快なテナーとブラウニーの歌心たっぷりのトランペット、マックス・ローチのキレの良いドラムスををたっぷりと味わうことができます。

なお、この録音の約3ヵ月後の6月26日、クリフォード・ブラウン、そしてリッチー・パウエルは交通事故で帰らぬ人となってしまいます。ロリンズにとっては大ショックだったに違いないでしょう。6月22日にサキ・コロが吹き込まれていますが、もし録音が1週間遅れていたら、あの天下の名盤は生まれていなかったのではないでしょうか。

このアルバムがペーソスにあふれているように聴こえるのは、この悲劇が私の頭にあるからも知れません。

1956年3月22日録音
Sonny Rollins (ts)
Clifford Brown (tp)
Richie Powell (p)
George Morrow (b)
Max Roach (ds)
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by bluenob | 2008-07-22 22:48 | Tenor Sax
John Coltrane "Crescent"
b0160275_2054447.jpg41年前の今日、モダン・ジャズ・ジャイアントの一人、John Coltraneが亡くなりました。
1950年代後半にマイルス・デイヴィス・クインテットのテナー・サックスに抜擢されて以来、1967年7月17日に亡くなるまで、未踏のJAZZの地平をを切り開いてきた開拓者でした。1960年代以降今日に至るまで、モダンジャズのテナー・サックスおよびソプラノ・サックス奏者で、コルトレーンの影響を受けなかった人はいないのではないでしょうか。

インパルス時代のコルトレーンは重くて黒いです。体調が悪いときには身体が受けつけないほどヘビーです。でも、命日が近くなり暑くなってくると、コルトレーンを無性に聴きたくなります。暑熱の中で、あの緊張感を伴った黒くて重い音のうねりに身をゆだねるのは、ほとんど苦行に近いところがあります。でも聴き終わった後に、えもいわれぬカタルシスをもたらしてくれるのも事実です。

このアルバム、"Crescent"は、そんな激しいインパルスのコルトレーンのアルバムの中では異例な静謐さをたたえた一枚です。"Ballads"より甘みが少なくよりビターなテイストですが、個人的にはインパルスのコルトレーンで一番好きなアルバムです。

1曲目"Crescent"ゆっくりとしたテンポで始まるモーダルなナンバー。典型的なコルトレーンサウンドですが、不思議にうるさくありません。むしろ思索的な雰囲気さえ漂っています。
2曲目の"Wise One"は名演です。Bill Evansの "Explorations"における"Israel"と双璧をなすJAZZのリリシズムの代表作品だと思っています。
3曲目のBessie's Bluesは典型的コルトレーン・スタイルのモーダルなブルースです。ブルースという伝統的で単純なフォーマットですが、コルトレーンのサウンドは死後40年以上経った今でも新鮮に響いています。
4曲目のLonnies's Lamentも思索的な雰囲気の強い曲で、アルバム全体の雰囲気を象徴している感じです。

このアルバムを吹き込んだ後、コルトレーンは世紀の名作と呼ばれる"A Love Supreme"「至上の愛」を吹き込みます。それから亡くなるまでの3年間、音楽と宗教が渾然一体となった作品を発表していくことになります。
「至上の愛」以降の精神性の強いプレイも素晴らしいとは思いますが、宗教色がを前面に押し出す直前に吹き込まれた作品として、"Crescent"は音楽的に評価しても素晴らしいアルバムだと思います。

1964年4月27日、6月1日録音
John Coltrane (ts)
McCoy Tyner (p)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Jones (ds)
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by bluenob | 2008-07-17 13:54 | Tenor Sax