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Wayne Shorter "Juju"
b0160275_21555051.jpg新主流派を代表するテナー・マンのひとり、ウェイン・ショーターのワン・ホーン・アルバムです。

新主流派のテナー吹きの中では、なんと言っても私はジョー・ヘンダーソンが好きなんですが、ジョーヘンを引き立たせていたのは、ウェイン・ショーターの存在ではなかったでしょうか。

伝統的なスタイルを引きずった野生児ジョーヘンと、とらえどころのない黒魔術師ショーター。スタンダードもばりばり吹くジョーヘンと、オリジナルしかやらないショーター。格好なんておかまいなしに真っ赤に燃えるジョーヘンと、青白い炎の中で静かに燃えるスタイリスト・ショーター。比喩が変ですが、ゴジラvsモスラ、中日ドラゴンズvs読売ジャイアンツみたいな、宿命のライバルとしてとらえていました。^^
若い頃は、ジョーヘンを聴いて暑苦しくなると、ショーターを聴いてクール・ダウンする、みたいなことの繰り返しばかりやっていました。

ウェイン・ショーター、Vee-Jayでデビューした頃は、コルトレーンそっくりなトーンとフレージングのハード・バッパーでしたが、アート・ブレイキーのジャズ・メッセンジャーズに入った頃から徐々にミステリアスな雰囲気に変わって行き、その後、マイルス・デイヴィスのコンボに参加した頃にはワン・アンド・オンリーなテナー・マンに成長しました。

このアルバムは、ジャズ・メッセンジャーズを離れ、マイルス・コンボに入る直前のショーターを捉えています。
ブルーノートでの初リーダー作"Night Dreamer"を聴くと、フロントの相方リー・モーガンの存在ゆえに、ジャズ・メッセンジャーズ的なハード・バップのエコーが濃厚です。でも、第2作目のこの"Juju"になると、より新主流派的な音に変わってきています。

ワン・ホーンゆえに、ショーター自身がやりたかった音楽がストレートに出てきているというのもありますが、サイドメンの影響もありそうです。マッコイ・タイナー(p)、エルヴィン・ジョーンズ(ds)は当時のコルトレーン・カルテットのレギュラー・メンバー、そしてレジー・ワークマン(b)もコルトレーンゆかりのベーシストです。

にもかかわらず、このアルバムでのショーターは、コルトレーンの亜流には全くなっていないあたりが、さすがです。
1964年の9月に、コルトレーンは"A Love Supreme"を吹き込み、より宗教的な深みへと進んでいきますが、ショーターにはそういう宗教的な臭みはなく、それまでになかったフレッシュな楽想の演奏を繰り広げています。
マッコイもエルヴィンも、その個性をいかんなく発揮していますが、コルトレーン・コンボでやっている彼らとは異質の音です。ショーターのリーダーとしての影響がよくわかります。

1曲目の"Juju"、黒魔術的なタイトルがついていますが、マイルス・バンド参加以降のショーターに比べると、わかりやすいモーダルな曲です。ここでのショーター、クールに燃えたブロウを披露しており、実にかっこいいです。

2曲目の"Deluge"、コルトレーン的な影響の濃い曲想ですが、ショーターのソロはペンタトニック・スケールを基調としながらも、彼ならでは音の選び方がユニークです。マッコイのソロになると、コルトレーン・カルテットそのまま、って感じですが。^^

"House of Jade"は直訳すれば、「翡翠の館」でしょうか。タイトルの東洋的なイメージではなく、チャーリー・ミンガスを思わせる黒褐色のグラデーションといいますか、不思議な音の響きのバラードです。ショーターのソロも、瞑想的です。

4曲目の"Mahjong"は、「麻雀」ですね。ジョーヘンにも"Jinrikisha"という変なタイトルだけど魅力的なオリジナルがありますが、これも和風のタイトルにもかかわらず、演奏そのものはまじめです。このアルバムで一番コルトレーンを感じさせる演奏ですが、ショーターのソロはよりクールに燃え上がります。

5曲目の"Yes or No"はアップテンポな曲で、アトランティック時代のコルトレーンを思わせます。バリバリと吹きまくるショーター、しかしトレーンとは全く違う傾向のソロです。クールだけど熱い、燃えてるけど冷静。ショーターならではのソロです。

このアルバムの最後は、"Twelve More Bars to Go"、そのタイトルからもわかるように、ブルースの新解釈です。新主流派のブルースって、かっこいいのが多いです。ジョーヘンの"Isotope"とか、チック・コリアの"Matrix"とか。ショーターのこのブルースもモダンな感覚に溢れたブルースに仕上がっています。

このアルバムを8月に録音した後、、9月にはマイルス・デイヴィスのコンボでのデビュー作、"Live In Berlin"を録音します。マイルスがショーターを引っ張った理由は、このアルバム、"Juju"を聴くと本当によくわかります。前任テナーのジョージ・コールマンやサム・リバースと比べて、明らかにショーターの音は「鮮度がいい」のです。

1964年8月3日録音
Wayne Shorter (ts)
McCoy Tyner (p)
Reggie Workman (b)
Elvin Jones (d)
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by bluenob | 2008-10-30 23:26 | Tenor Sax
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