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Bill Evans "Portrait In Jazz"
b0160275_19353672.jpg今年もキンモクセイの咲く季節になってきました。この季節になると、エバンスのポートレート・イン・ジャズを聴きたくなります。「枯葉」-"Autumn Leaves"が入っているからなんですが、まあ実際には真夏であれ真冬であれ、季節を問わずよく聴くアルバムでもあります。^^

モダン・ジャズのピアニストの中で、一番好きなピアニストは誰か?と聞かれたら、間髪をおかず「ビル・エバンス!」と答える私ですが、このアルバムは私が一番最初に買ったビル・エバンスのアルバムです。高校生の頃ですから、もう35年も前の話になります。当時はLPですから、針をレコードに下ろした瞬間、研ぎ澄まされたピアノの音色にノックアウトされてしまいました。

エバンスの最高傑作は何か?と聞かれたら、これは間髪をおかずに答えるのはとても難しいです。なぜなら、駄作をほとんど出さなかったピアニストだからです。でも強いてあげるとするなら、リバーサイドで吹き込まれた4部作でしょうか。

1959年12月 "Portrait In Jazz"
1961年2月 "Explorations"
1961年6月 "Waltz For Debby"および"Sunday At The Village Vanguard"

これらの4枚は、ビル・エバンスのピアノ、スコット・ラファロのベース、ポール・モチアンのドラムスというJピアノ・トリオで録音されました。
1961年6月の2枚は、名門ライブスポット、ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音で、JAZZらしい一発勝負という点ではよりスリルがあるのですが、スタジオ録音の"Portrait In Jazz"と"Explorations"には、より端正な魅力を感じます。

この4部作の中で一番最初に録音されたのがこのアルバム、ポートレート・イン・ジャズですが、すでに素晴らしい完成度です。
それまでのJAZZのピアノ・トリオは、主役はなんと言ってもピアノで、ベースとドラムスは脇役に甘んじるという図式だったのですが、このポートレート・イン・ジャズで展開されている音楽は、ピアノ・ベース・ドラムスが対等な立場で演奏しています。いわゆるインタープレイ、というものです。

特に圧倒的なのが"Autumn Leaves"で、ベースのスコット・ラファロのマスター・ピースとも言うべき演奏になっています。
ラファロはテーマからしていきなり意表をつく2拍三連でビートを刻み始めます。またテーマの後のソロ・オーダー、普通はピアニストが先発することが多いと思いますが、いきなり緊張感溢れるラファロのソロになります。エバンスとの対位法的なアプローチも痛快で、お互いに火花を散らすような挑発的なフレーズでいどみかけます。この演奏でラファロはジャズ・ベースの可能性を今までになく大きく広げてしまったと思います。
また、ラファロはコンベンショナルな4ビートのバッキングをやらせてもすごいです。ベース・ランニングの音の選び方の趣味のよさは抜群ですし、そもそもベースの音自体が太くて深くてよく伸びる、実に気持ちの良い音なのです。
もちろん、エバンスのピアノも、文句のつけようがありません。モーリス・ラヴェルやクロード・ドビュッシーなどの印象派のピアノ曲を思わせる微妙なハーモニー、メリハリの効いたピアノ・タッチと抜群のペダルコントロール、コンビネーション・ディミニッシュ・スケールで駆け上がる早いパッセージ、あらゆるテクニックを駆使してピアノから魅力的な音を搾り出しています。この新鮮な響きは、バップ・イディオムでしか演奏できない数多のピアニストを一気に時代遅れにしてしまいました。
この"Autumn Leaves"、JAZZの大スタンダード・ナンバーですが、その決定打とも言うべき演奏が、このアルバムにおける演奏ではないでしょうか。

その他の曲も素晴らしい出来栄えです。印象派的な響きのテーマ演奏で始まる"Witchcraft"、粒立ちの良いシングルトーンが気持ちの良い"When I Fall In Love"、明るくてスインギーな"Peri's Scope"、ポール・モチアンのブラシとスティックの変化のつけ方が面白い"What Is This Thing Called Love"、朧なハーモニーの美しいバラード"Spring Is Here"、甘く上品なワルツ”Someday My Prince Will Come"・・・。どの曲も、JAZZらしい緊張感に満ちた演奏です。

このアルバムの最後を飾るのは、マイルス・デイヴィスのカインド・オブ・ブルーでも演奏された素晴らしいバラード、"Blue In Green"です。
この瞑想的なムードに溢れたモーダルなバラード、作曲者はマイルス・デイヴィスとなっていますが、良くてマイルスとエバンスの共同作品、本当はエバンス単独の作品ではないでしょうか。
カインド・オブ・ブルーでの演奏も逸品中の逸品ですが、このトリオによる演奏も最上の出来栄えです。演奏が終わったあとも、しばらくは目を閉じて、その余韻に浸っていたくなるほどです。

なお、YouTubeに、このアルバムの"Come Rain Or Come Shine"および"Autumun Leaves"がアップされていましたので、下記にリンクを貼っておきます。
Bill Evans Trio - Come Rain or Come Shine / Autumn Leaves


1959年12月28日録音
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)
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by bluenob | 2008-10-07 21:00 | Piano
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