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John Coltrane "Giant Steps"
b0160275_20585248.jpgJAZZのテナー・サックスと言えば、ソニー・ロリンズと共に双璧をなすのが、ジョン・コルトレーンです。コルトレーンもロリンズ同様、どのアルバムも素晴らしいのですが、季節によって聴きたくなるアルバムが違います。

暑い夏には、インパルスの黒くて重いコルトレーンが聴きたくなるのですが、秋になるとアトランティックに吹き込まれたアルバムが聴きたくなってきます。もう少し寒くなってくると、ブルーノートやプレスティッジに残されたアルバムが聴きたくなります。不思議な季節感です。^^

さて、アトランティック時代のコルトレーンの中でも、コルトレーンの凄みを110%伝えてくれるアルバム、ジャイアント・ステップスをご紹介したいと思います。

当時、コルトレーンはマイルス・デイヴィス・セクステットの一員で、すでにモード時代の幕開けを告げる"Kind Of Blue"を吹き込んだ後でした。このアルバムは、その後に吹き込まれたものですが、モード奏法でばりばりやっているわけではなく、むしろコード奏法を究極まで極めたという印象が強いアルバムです

中でも圧巻は、アルバム・タイトルにもなった"Giant Steps"です。通称「コルトレーン・チェンジズ」と呼ばれる代理和音進行の曲で、1コーラス16小節中に長3度という珍しい転調で、B、E♭、Gのキーを10回も行ったり来たりします。
コード奏法ですから調性感はしっかりあるのですが、B,E♭,Gのいずれもがトニックに聞こえるという、浮遊感漂う不思議な曲です。

これだけ転調すると、その演奏の難しさは並大抵ではありません。しかも、♩=240を超える馬鹿っ早の演奏です。譜面にしたものを演奏するのも容易ならざる曲で、これでアドリブをするとなると想像を絶します。
事実、この曲は斬新過ぎて、当時のサイドメン泣かせの曲だったようです。4月にシダー・ウォルトンとやったセッションはお蔵入りになってしまっています。

また、このアルバムのほとんどを占める5月のセッションでも、名人トミー・フラナガンがこの曲ではヘロヘロになってます。始めはシングルトーンでなんとかアドリブしているのですが、後半はとてもついて行けなくなり、ブロック・コード・ソロに終始しています。オルタネイト・テイクではピアノ・ソロすらありません。^^

しかしコルトレーンは、この難曲を見事に吹ききっています。この変態コードを忠実になぞって、ダイアトニック・スケールの八分音符をばりばりとばら撒いていくソロは、シーツ・オブ・サウンズの典型です。凄みがあるのはもちろん、爽快ですらあります。

YouTubeに、「目で追う John Coltrane/Giant Steps」があります。

興味があったら覗いて見てください。楽器をやったことのある人なら、思わずのけぞってしまう過激な世界が広がっています。^^

"Cousin Mary"は一転してモーダルなブルースです。マイルス・バンドで経験したモード奏法に基づく斬新なフレージングで、伝統的なブルースとは一味もふた味も違うモダンなブルースになっています。

"Countdown"は超アップテンポでアート・テイラーとのデュオで始まります。ジャイアント・ステップス同様、コルトレーン・チェンジズの新鮮な和声進行の曲で、それに基づくコルトレーンのソロは破壊力満点です。

また、バラードの"Naima"だけは、ピアノがウィントン・ケリー、ドラムスがジミー・コッブに代わっています。この曲は瞑想的でモーダルな雰囲気の演奏で、コルトレーンが生涯を通じて愛奏したバラードです。ケリーのピアノも、いつもの「玉を転がすようなシングル・トーン」のケリーではなく、ビル・エバンスを髣髴とさせるブロック・コード・ソロに終始しています。

"Mr. P.C."は、マイルス・コンボ時代からの盟友でもあり、このアルバムでも貢献しているベースのポール・チェンバースに捧げたマイナー・ブルースです。これもアップテンポで、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンズを堪能できます。シンプルですが魅力的なリフで、カバーしているミュージシャンもたくさんいます。実際、私も学生時代、Cのマイナーブルースというと、リフはこればかりでした。^^

ジャイアント・ステップスというアルバムタイトルが暗示するように、このアルバムはその革新性で、JAZZの地平を大きく広げた大傑作に違いありません。いつ聴いても、その新鮮さに脱帽してしまいます。

1959年4月~12月録音
John Coltrane (ts)
Tommy Flanagan (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (d)
Wynton Kelly (p)
Jimmy Cobb (d)
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by bluenob | 2008-10-06 22:18 | Tenor Sax
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