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Nob's Favourite Jazz Albums

私の好きなJAZZアルバムのご紹介です。


by bluenob

Phil Woods "Woodlore"

Phil Woods \"Woodlore\"_b0160275_2215584.jpg白人アルト・サックスの巨人、フィル・ウッズの若き日の名演です。

フィル・ウッズはマサチューセッツ州スプリングフィールドの出身で、1948年にニューヨークに出てジュリアード音楽院、そしてクール派の巨匠レニー・トリスターノの元でジャズを学びました。もちろん、当時のアルト・サックスの神様、チャーリー・”バード”・パーカーからも強い刺激を受けました。

1955年にチャーリー・パーカーが亡くなった後は、その葬式や借金の清算などで未亡人のチャン・パーカーの世話をしているうちに恋仲になってしまい、1958年に結婚してしまいました。また、チャンが継母として世話をしていたバードの遺児、キム・パーカーとベアード・パーカーもそのまま譲り受け、新たな継父となりました。後年、キム・パーカーはジャズ・シンガーとしてデビューしたそうですが、残念ながら私はまだ聴いたことがありません。継父のウッズはさぞかしそのデビューを喜んだことでしょう。

フィル・ウッズのアルト・サウンドは個性的です。明るくてつややか、メリハリの効いたフレージングで歌いまくります。アルト・サックスという楽器をフルに鳴らすテクニックは、古今東西、トップ・クラスだと思います。アルト・サックスを吹いている人なら、「フィル・ウッズみたいに吹いてみたい!」と、一度や二度は必ず思ったことがあるに違いありません。私もアルト・サックスを吹いていたときは常にあこがれていました。^^

ウッズのアルト・サウンドは、白人にしてはとても黒いフィーリングなのですが、バード直系のソニー・スティットや若い頃のジャッキー・マクリーンなどに比べると、バード・ライクな度合いは少ないように思います。実際、「私はバードをコピーしたことは無いんです。」とウッズは言ってるそうです。
また、レニー・トリスターノの元で学んだことも影響しているのかもしれません。あまりに明るくてつややかなサウンドなのでピンと来ませんが、よく聴くとトリスターノ派特有のホリゾンタル・フレーズ、リー・コニッツ的なフレージングも顔を出します。^^

このアルバムはウッズのワン・ホーン・アルバムです。ウッズの明るく伸びのあるつややかなサウンドを心行くまで楽しむことが出来ます。

"Falling in Love All Over Again"はウッズらしい甘くて暖かいバラードです。この人のバラードは陰りが少なくて、孤独感とか寂寥感は感じません。でも健康的な魅力に溢れています。

"Be My Love"はこのアルバムで私が一番好きなチューンです。アップ・テンポのスインギーな演奏ですが、上記のバラード演奏では感じないせつなさややるせなさを、この曲には感じてしまうから不思議です。4 Bars Changeの歌いっぷりはこの人ならではの輝きに満ちています。フィル・ウッズの最高の演奏をあげよ、と言われたら、私はこれを推すかな。^^

"On a Slow Boat to China"はソニー・ロリンズの名演で有名ですが、フィル・ウッズも負けていません。素晴らしい歌心で浪々と歌い上げ、「アルト・サックスはこうでなくっちゃ!」という好演です。

1955年11月25日録音
Phil Woods(as)
John Williams(p)
Teddy Kotick(b)
Nick Stabulas(ds)
by bluenob | 2008-07-25 22:54 | Alto Sax