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Nob's Favourite Jazz Albums

私の好きなJAZZアルバムのご紹介です。


by bluenob

Miles Davis "Workin'"

Miles Davis \"Workin\'\"_b0160275_22175384.jpgモダン・ジャズ・トランペットの巨匠であり、モダン・ジャズの歴史の転換点では必ず重要な影響をおよぼした巨人、マイルス・デイヴィスの作品です。いわゆる「プレスティッジ・マラソン・セッション4部作」の一枚で、四部作の中では三番目にリリースされたアルバムです。

マイルスがプレスティッジを去ってコロンビアに移籍する際、プレスティッジとの契約上、4枚のアルバムを製作する必要がありました。
マイルスは、この4枚分の25曲を、1956年の5月11日と10月26日のたった二日間で録音してしまいました。メンバーは第1次マイルス・デイヴィス・クインテットの黄金メンバー、ジョン・コルトレーン、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズです。

普通、こういう短期間で作ったアルバムというのは「粗製濫造」、「味噌もクソも一緒くた」というネガティブな言葉がついて回るのですが、さすがは天才マイルス、どのアルバムも素晴らしい演奏です。しかもほとんどの曲がワン・テイク録音されたというのが驚きです。いかに当時のマイルス・デイヴィス・クインテットの演奏が卓越していたか、よくわかります。

また、この4枚のアルバム、"Cookin'"、"Relaxin'"、"Workin'"、"Steamin'"、それぞれジャケット・デザインの傾向がまったく違うのも面白いです。
"Cookin'"が一番アーティスティック、次に"Relaxin'"が面白いかな。"Steamin'"は煙草に火をつけるマイルスの写真で、これはこれでかっこいいです。ところが、この"Workin'"は実にしょうもないジャケット・デザインです。ロードローラーが道路工事をしているところを背景に、煙草を一服しているマイルスが写っています。まあ、味があるといえばあるのかもしれませんが。^^;

ジャケット・デザインはさておき、演奏は素晴らしいです。
特にバラードの"It Never Entered My Mind"と"In Your Own Sweet Way"で繰り広げられるマイルスのミュート・プレイは、「卵の殻の上を歩く男」と形容されたマイルスの真骨頂です。特に "It Never Entered My Mind"のイントロ、レッド・ガーランドのイントロからマイルスのミュートが入ってくるあたり、何度聴いてもぞくぞくしてしまいます。
また、その後ライブでなんべんも取り上げられる"Four"も、オープンでバリバリ吹いており、ハード・バップの醍醐味を味わえます。

また5月の録音では、コルトレーンのプレイはまだキレも悪く迷いの多い感じなのですが、10月の録音(このアルバムではHalf Nelson)になると画期的によくなります。コルトレーンの成長を知るためにも、このプレスティッジのマラソン・セッション四部作はとても貴重だと思います。

この"Workin'"、四部作の中では一番地味なアルバムかもしれませんが、暖かくて心に残るアルバムに仕上がっていると思います。

1956年5月11日、10月26日録音
Miles Davis (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
by bluenob | 2008-07-21 23:11 | Trumpet